鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第23話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~理由~


夕日が輝き、夕食の買い出しや学校帰りの子どもで賑わう表通りを通行人とぶつからないようにしながら、しかし全力で走る紅火の姿があった。
本来であれば、先輩のラグやマスターの紅珠を頼るべき案件なのだろうと悟っていた。今回の件は紅火自身、詳しく知っているわけではないのである。
「発端って何年前だっけ……? 話聞いたのは五年? 前だっけか?」
紅火は走るスピードを緩めることなく記憶の中にあるある話を思い出していく。

「ラグさん、話って何ー?」
「黙ってついてこい。お前は次期ギルドマスターだし、頭首になるし、話しておきたいことがあんだとよ」
ギルドに正式に加入することが決まってすぐ、先輩でもあり、幼い頃からの話し相手兼遊び相手でもあったラグに呼び止められた。そして言われるがままマスターの部屋に連れてこられ、中に入ると母親の紅珠とピカチュウの姿があった。
「えーっと俺、なんかしたっけ?………はっ!? 入ってすぐに…り、りすとら? されるの!?」
「したくても出来んだろうよ。さっきも言ったけど、次期マスターだろ、お前」
隣に立つラグに言われ、そうか、と思い出す。しかし、それならば話とは何なのだろうと首をかしげた。
「ありがとう、ラグ。連れてきてくれて。紅火に言っておきたいことがあるのよ。そこにいるピカチュウ、覚えてる?」
「う、うん? えーっと………確か父さんの親戚の……………本名しか出てこないんだけど、言っても大丈夫?」
「顔覚えているならいいの。この人のことなんだけど…」
話を進めようとする紅珠をピカチュウは制止し、全員をぐるっと見回す。
「ちょっと待て。名乗らせてくれないの? このままだとこの人で終わるよね!?」
「うるさいですよ、そこの人」
「ラグくぅぅん!?」
ふいっとそっぽを向きながら毒を吐くラグを見て、緊張が解れていく。
「あー俺っちはノイズ! 一応、ブラックのメンバーで情報管理が主な仕事」
二人を納得させることが出来ないと悟ったらしいピカチュウ……ノイズは無理矢理自己紹介を挟んできた。そんなノイズの行動に対して特に何も言わないところを見ると、単純にいじっていただけだったらしい。
「んで、そのノイズの話なんだけど」
「うん。………あれ、でもノイズ…さん? ノイズさんって最初から情報管理が仕事だった? 父さんか
は同期に誰もいなくて俺がやってたんたぞーって言ってた気がするけど」
前にその様な話を聞いたことがあると思い、小さく呟く。それを聞いたラグが少し驚いたように紅火を見て、溜め息をついた。
「いつの話だよ、それ。……紅火って本当は馬鹿じゃねぇよな。勉強は出来ないけど」
「えぇー? でもでも、俺、作戦とかちょっとわかんないよ」
「そういうことじゃ…………もういい」
何か言おうとするラグだったが、伝わらないと判断したのか頭をかきながら口を閉じた。そしてそれを見計らってか紅珠が話を始めた。
「昔ね、ノイズは暗殺者として活躍していた時期があったの。でもある仕事で大怪我して暗殺者として動けなくなったのよ」
「うおぉう!? マジですか!」
「まあ、見ての通りだよね……?」
「そんなわけだから、仕事でノイズ頼っても無駄だからって話なの。本当は詳しく教えてもいいんだけど、それはまた今度ね」
「紅珠の発言、いちいち刺を感じるんだけど。どうしてそんなキツいわけ」
「嘘じゃないからいいじゃない。それに分かりやすくて楽なんだもの」
笑顔を崩さず紅珠に反論することを諦めたのかノイズは何も言わなかった。
そしてそのままお開きとなりラグと共に部屋を出る。そして帰ろうかと考えていた紅火にラグが話しかけてきた。
「お前、このあと暇?」
「ん? うん。元々今日は顔見せだけだったし、何もないよ。なんで?」
「マスターは今度って言ってたけど、多分、何も話す気はないだろうから俺から言っとく。話しにくい事でもあるし」
「うーん……なんとなく予想はつくけど、怪我したのノイズさん以外にもいたの?」
「紅火は勘が冴えてて助かるよ」
それだけ言うとラグは着いてこいと一言言うなり、紅火の前を歩いて行ってしまった。断る理由もないためラグに黙ってついていくことにした。どこまで行くのだろう、どんなことを話すのだろうなどと疑問はあったがその場で聞ける雰囲気ではなかったため、口を開くことなくラグの背を追いかける。
しばらく沈黙が続き、最初に浮かんだ疑問も忘れかけた頃、不意にラグが紅火の方を振り返った。
「お前はマスター…紅珠さんとメイズさんの子だ。この仕事がどんなことだか分かるだろ」
「…………うん。理解してるつもり」
「今日話していた奴が明日もいるとは限らない。仲間が死んでいくことなんて当たり前な世界。だからそのことでいつまでも引きずるわけにもいかねぇ」
「うん。…………ラグさんは見てきた?」
「そうだな。数えるの嫌になるくらいは」
そう言うとぴたりと止まる。紅火も止まり、前を見ると、目の前には小さなお墓が建っていた。周りには何もなくただそれだけがあった。それが寂しくも儚げに紅火の目に映る。
「………? ラグさん? ここは……」
「紅火の言うノイズさん以外にも怪我した人のお墓。ノイズさん達の同期だった人」
「じゃあ、母さんと父さんも?」
「そうだな。ノルンさんって言うピカチュウでノイズさんの恋人だった。ノルンさん、俺が仕事やり始めた頃に病気で失明したんだ。それで引退したんだけど、それでも皆の役に立つって裏方仕事やってた」
「ラグさんが仕事やり始めた頃って言うと……十年前くらい?」
「そんくらいかな。そっから事件があったのは二年後だから、今で言うと八年前。俺とノイズさんである仕事してたんだ。俺がサポートでデータ回収をノイズさんに言われて、命じられるままそれをやってたんだけど……」
ラグが墓に近付きその場にしゃがむ。とてもじゃないが口を挟める話でもなく、ラグと同じように紅火もしゃがんだ。
「その悪者さ、なんか個人的にノイズさんに恨みあったらしくて……つーか、一族? 血縁? 詳しくは知らないんだけど、とにかく怨恨ってやつ」
「れんこん……?」
聞き慣れない言葉に首を傾げ、思わず口にする。紅火の呟きにラグは真面目な話なのにと少し呆れ、無視しようかと思ったが訂正しておかねばと溜め息をつきながら話を続けた。
「……………怨恨ね。“えんこん”。深い恨みってこと。ノイズさん個人に恨みはないと思うけど、こんな仕事してっから憂さ晴らしにはいいと考えたんだろうな。どこで知ったのかノルンさんを拉致したの」
「…………え…なんで」
「さあね。嫌がらせじゃねぇの? んで、ノルンさん人質に捕られてまともにやれるわけないだろ? 悪者さん達はやるだけやって挙げ句の果てに爆弾使ってそこら中吹き飛ばした。幸いと言うべきなのか、そこまで威力はなくてノイズさん達と離れていた俺は無傷だったし、ノイズさんも爆弾でバラバラってことにはならんかった。けど、ノルンさんは…」
「…………バラバラ?」
「いんや。悪者さん達に色々やられてたみたいでそれが原因かな。まあ、ノイズさんを庇ったのも一つの原因か。その事件でノルンさんは死にノイズさんは引退まで追い込まれたってわけ。これがノイズさんが仕事出来なくなった詳しい内容」
今までの話を聞き、紅火はむすっと頬を膨らませた。
「なにそれ、逆恨みじゃん。理不尽じゃん、こんなの」
「紅火の言う通りだよ。血縁のノイズさんはともかくノルンさんは関係ないのに………ま、恨みとかはどっかで買ってても不思議じゃないから何とも言えないけど。…………本題はここからなんだけど」
「うぇぇ!? まだ何かあるの?」
思わず声をあげ、心底嫌そうな表情をしている紅火に苦笑しつつ、まあ、聞け、と宥めた。
「捕まってないんだよ、ノルンさん殺った奴ら」
「………えっ!? ラグさんいたのに!?」
「頼りなくてすいませんでしたね。そんときはまだペーペーだったんですよ。……それでなくても当時の俺は技術的にも未熟だったし、全員捕まえるなんて出来なかった。これでも何人かは捕まえたんだ。評価していただきたいね」
少し不満そうに抗議するラグが珍しく、紅火は笑いが込み上げてくるが何とか堪え、何とか弁解する。
「ご、ごめんなさい。今の技量で考えちゃって……それで今でも見つからないの?」
「あぁ。俺も捜してはいるんだけど、どうにもね。そればっかにも構ってられないところもあって」
「………捜すの、俺も手伝えってことだね」
「今日はマジで冴えてる。明日は雪でも降るのか?」
「ここまで聞いて察せない俺じゃないよ! 許せないし、そいつら!」
怒りを露にする紅火。そんな紅火の頭をぽんと叩き、ラグはありがとうと笑って答える。
「まあ、お前馬鹿だし、深入りだけはすんなよ。出来たらでいいし、今は話を聞いて知ってくれるだけでいいからな」
「うんっ! もしその悪いやつと戦うときは俺も頑張る」
「おう。んじゃまあ、帰るか」
「はーい」

ある場所でぴたりと止まると、小さく息を吐いた。今まで、ずっと探していた相手がここにいるかもしれない。あの頃に聞いたときからずっと頭の片隅にあったことだ。
「………約束したもんね。ラグさんと」
持ってきていたホルダーに手をかけながら、更に奥に進んでいった。



~あとがき~
久しぶりの更新ですね。お久しぶりです!
……今回、回想でほぼ終わった。

次回、紅火の暗殺者としての腕が分かるかもしれない! あとはサファ視点にちょっとしたいな!

回想の中で紅火はラグに対して敬語を使ってません。まだ仕事の先輩後輩という関係ではないからですね。遊び相手感覚が抜けてないんです。
そーいや、紅火とラグの関係についてはここが初ですかね? 二人はある意味、幼馴染みみたいたもんです。ラグの仕事がないときは紅火の相手を任されることが多かった様子。
紅火は紅火で小さい頃からギルドに出入りしていたので、大体は顔見知りです。その中でもラグは特に関わりが深いって思ってくれていいですよ。

ノルンの話もここが初?
いつだったか、ラグがお墓参りしてたんですけど、それがノルンさんです。ノイズの恋人ってか婚約者と言っても過言ではない仲でした。
ノルンが喋るような描写が今後あるかは分かりませんが、普通の女の子ですよ~

ちょっとラグと紅火が当時幾つなのか分かりにくいと思うので、まとめます!
まず、話を聞いたのは五年前らしいんで、紅火は八歳、ラグは十五歳です。そこからノイズとノルンの事件があったのが当時から八年前なので、紅火は産まれたばかりかまだ産まれてないかです。ラグは七歳かな。こんな感じです! 要するに今現在から十三年前です。かなり前ですね……( ̄▽ ̄;)
こんな感じで分かりやすくなったかな?

では。

last soul 第22話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~先輩の言うことにはきちんと聞きましょう~


先輩の言葉を理解するのに数秒。その間に先輩は、修行場を出て行ってしまった。取り残された私はただ立ち尽くすしかない。
詳しい説明はしてくれなかった。だから、結局のところ、理解出来ていない。しかし、一つ確かなのは、今、危険なことが起ころうとしているということ。
「わ…訳がわからない……けど、ここは先輩の言う通りにした方がいい………のかな」
それで本当にいいの……? でも、残ったって出来ることなんて一つもない。それなら、いっそ……
「んんんんん!! むりぃぃぃ! 先輩の言うことなんて聞けない。まずはギルドに戻ってみよう」
こんな私でも出来ることがあるかもしれないんだ。先輩になんて言われようと無視だ。無視! 邪魔かもしれないけど、そんなの関係ない。
というか、一人で帰ってくることがないようにっておじさんに釘を刺されてるから、結局は帰れない。どこか過保護なんだよな……おじさん。過保護だな~とか思っていたら、ほっとかれるし……おじさんの思考はよくわからない。
「っと……いつの間にか関係ないこと考えてた。早く戻ろ」
ぐっと背伸びをして、よし、と気持ちを切り替えた。そして、遅れて私も修行場を出た。

サファと別れたあと、ラグはギルド地下にある情報室へと来ていた。普段なら、そこでノイズがキャスター付きの椅子に座り、カタカタとキーボードを叩いている。しかし、そこには誰もおらず、機械だけが並ぶ寂しい雰囲気が漂っていた。
ラグは中央にあるデスクトップの電源を入れ、近くに置いてあったヘッドセットを着ける。そして、電源の入った画面にはふわふわと毛玉のようなものが浮いていた。
「おい起きろ。仕事だ」
『……ご主人じゃないですね』
不機嫌そうにゆらゆらと揺れる毛玉に呆れつつも、どこから取り出したメモリースティックを差し込んだ。
「ご主人じゃなくて悪かったな。しぃ、今から情報入れるから、整理してくんない?」
『少々お待ちください。情報をスキャンします』
しぃと呼ばれた毛玉……正確にはナビゲーションプログラムで、現在プログラミングの仕事をしているメイズによって造られたのだ。しぃが言う、ご主人とは、作り手のメイズのことではなく、いつもここにいるノイズのことである。
『ラグ様、今の管理者権限では扱えない情報を検出しました。いかがなさいますか?』
「あー……そっか。忘れてた……じゃあ、俺のライセンス使え」
『了解。ラグ様のライセンスを一時的に取得します』
「どんくらいで終わる?」
『三分程で完了します』
「なかなか速いな。助かるよ。にしても………まさか、こうなるとは思っていなかった。……が、指示は来ないし、動けないな」
椅子に座り、天を仰いだ。
本当なら、命令など無視して殴り込んでもいいのだが、それでは交渉決裂。こちらが大損してしまう。あの人…ヘラに何されるか分かったものではない。思うように動けないこの状況下が歯痒く、悔しく思うのだが、約束は約束。きちんと守らなければ、次に繋がらない。
そう割り切り、次に浮かんできたのは、先程まで一緒にいたサファのことだ。
「…………あいつ、帰ったかな。あんな言い方しちゃったけど、邪魔なのは事実だし。……ん、でも、俺の言うことなんて聞くのか? あの馬鹿が?…………失敗した。絶対に帰ってねぇよ、畜生」
はあ、と溜め息をつきながら、頭を抱える。そして、ちらりと情報整理しているしぃを見た。
「しぃ、それ終わったら、俺のパソコンに送れる?」
『問題ありません』
「ちょっと出てくる。すぐ戻るけど……誰か入ってきたら、その情報隠せよ。極秘なんだから」
『その辺は抜かりありません。任せてください』
椅子から立ち上がり、ヘッドセットを外して机の上に置いた。そして、早足で情報室を出ていった。

「………え、二人ともコウくんがどこ行ったかわからないの?」
ギルドにいた、リアルくんとシリアちゃんにコウくんの居場所を聞いてみたところ、二人とも知らない、という答えが返ってきた。
「紅火のやつ、何も言わずにここで待機してろーって言って出てったんだ。だから、その通りにしてるわけ」
「きっと紅火さんなりの考えがあってのことなので、俺達はここで待機しているんです」
「じゃあじゃあ、なーんにも知らない?」
私がそう聞くと、シリアちゃんはふるふると首を振った。
「知らないわけじゃないぞ? けど、言っちゃ駄目って言われてる」
なんか私だけ除け者にされている気がする……
「除け者というより、知られなくないのでは? 巻き込みたくないとか」
「うーん……でも、私だって新人でもここのメンバーだよ? そりゃ、戦力にはならないけども」
「そうだな、戦力にならなんな」
…………………えっ?
私が後ろを振り向くと、腕を組んで笑顔を浮かべているラグ先輩の姿があった。笑顔は笑顔でも、いい笑顔ではなく、イラついてるような笑顔だ。
「せ…先輩……あの、怒って…」
「俺、お前に何て言ったっけ? ここに残って探り入れろって言ったか?」
「いえ……でも、私だってここのメンバーですし」
「……んなこと聞いてねぇよ。俺は何て言った?」
「………………う…でも」
「何て言ったか聞いてんの。それだけ答えろ」
先輩の顔から表情が消えた。元々、無表情が多いとは思っているけれど、それとはまた違う類いに見える。特に睨んでいるわけでも、威圧をかけているわけでもないのに、なぜか圧迫されているように感じた。圧迫というよりも、恐怖に似ている?
「サファ、答えろ」
「………………帰れって…言いました」
「そうだ。それで、お前は今、何してる?」
「それは……」
「ラグ兄、そんなにサファさんを責めないでください。ラグ兄の言っていることは正論だと思いますが、サファさんが仲間なのも事実ですよ」
「そーだよ。そんなに怒るなよ」
「……………チッ」
リアルくんとシリアちゃんの制止で先輩はふいっとそっぽ向いた。それと同時に私は息を吐く。
こ…怖かった………!
これ以上ここにいたら、先輩の逆鱗に触れかねない。というよりも、もう触れている気もするけど、これ以上悪化させないためには退散するべきだろうか。
「ラグ兄、隠す必要ないと思いますよ。いざってときもありますし」
「そうは言ってもな……こいつの場合、自分の身すら守れないド素人だし。知らないことで守れるもんもあるし……つか、話すの面倒」
本音はそっちか。
「はあ…………全部終わったら話すよ。それでいいだろ? 今は俺の言うこと聞いて、引きこもってろ」
「終わったあとって聞く意味あります……?」
「じゃあ、言わないけど?」
「………………ごめんなさい。気になります」
私の回答を聞くと、先輩はリアルくんたちの方を見た。そして私のことを指差しながら、溜め息混じりの声を発した。
「リアル、シリア、ちょっとこいつ送ってくる。特に何もねぇと思うけど、一応警戒しとけ。何かあったら、連絡な」
「了解です。ラグ兄も気を付けて」
「送るだけだ。気を付けるものなんてない。サファ」
「あっ……はい」
私はちょっぴり気まずい雰囲気のまま、先輩と家路につくことになった。
………一体全体、何が起こっているんだろう?



~あとがき~
うわあぁぁぁぁぁ!!!! 無理矢理過ぎる展開だよぉぉぉ!!! すいません。わざと違うんです。
何かこうなりました。

次回、ノイズを探す紅火のお話。
紅火中心に書きますよ~♪

ラグってサファに対して少し厳しいところがあります。素人ってのが一番の理由なんでしょうけども。
悪く言えば、過保護なのかなぁ……? うん、わっかんねぇや!

ラグと会話していた『しぃ』というのは、いわゆるAIってやつです。で普通に会話も出来ちゃいます。ナビゲーションプログラムって作中では言ったかな?
ふわふわした毛玉……あれです。ケサランパサランみたいなやつですよ。白い毛玉です。目とかついてるよ。ちょんちょんって。多分。
なぜそのような容姿なのか……ぶっちゃけると、メイズさんに絵心がなかったから、簡単に描けるふわふわ毛玉になりました。誰かに頼めよって話ですが(笑)
ちなみに、しぃの言う、ご主人はノイズ。マスターはメイズです。他は様付けかな?

ではでは!

last soul 第21話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~何やら動き始めたようで~


「………そこ! 気ぃ抜くな!」
「は、はいぃっ!!」
ラグ先輩と短剣の修行を始めてから数日。相変わらず、私には進歩という言葉が存在しないのか、全く変化が見られない。これでも精一杯やっているつもりなのだが、先輩からすると、まだまだ未熟者らしい。
流石に本物の短剣で修行するわけにはいかないため、同じ重さのレプリカを使って、先輩と修行中。先輩は何も持っていない……つまりは、素手。素手といっても、先輩は私の技を受け流す時にしか使っていないけれど。
私はここだ、と決め、目一杯短剣で突いてみせる。
「…………っはあ!」
「だから……甘いんだよ!」
私の突きを受け流し、先輩は隙が出来た私のお腹に蹴りを入れた。これで何度目だろう。……慣れない、めっちゃ痛い。
「うあぁぁぁぁ!! 先輩、もっと優しくしてくれてもいいじゃないですかぁぁ!!」
「勢いは認めるが、隙だらけ。威力も甘いし、読みも駄目。おまけに最後はヤケを起こして、突っ込んだな? そこの馬鹿」
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淡々と私の欠点を上げていく先輩に一言も返す言葉がない。全くもってその通り。そっと目をそらそうとするが、睨む先輩がそれを許さなかった。
「…………これ、何度目の指摘だと思う?」
「あう……だって分からないんですもん」
「いいんだよ、別に。お前がそこまで俺の蹴りを受けたいんなら、何度だってぶちこんでやるよ。その内、手加減忘れて、お前の肋骨折るけど」
「ぎゃー!! ごめんなさいごめんなさい!」
冗談とは思えない、先輩の言葉を聞き、私は慌てて起き上がった。相変わらず、先輩は私に向かって冷たい視線を送っている。
「全く……覚える気ないのかね、お前は」
「わ、私はいたって真面目にやってるつもりですけど……」
「は? 寝言は寝て言え。流石に同じことを何十回も言っていたら、幼稚園児でも出来るぞ。お前は幼稚園児以下なの?」
「なっ! そこまで言うことないじゃないですか! こういうの初めてだから、よくわかんないんですよ!?」
「戦うって本能で出来るものだと思うんだけど? お前さ、仮にもポケモンだろうが。昔は戦うっていうのは日常茶飯事だったんだぞ? 学校で習わなかった?」
「うっ……それは~…」
確かに習う。習いました。今では、日常の中で戦い…バトルをすることは少ないものだが、昔ではそういうことをしていたのは知っている。歴史で習った………気がする。
「大体、今じゃ、技を使った戦い方をどこの学校だってやるんだろ? それなら、身のこなしもなんとかなるもんじゃないの? てんで駄目じゃねぇか」
「苦手なんですぅ! 体動かすの苦手なんですよ!! 体育の成績、アウトゾーンギリッギリだったんです!」
私と先輩の言い合いは私のカミングアウトでとりあえず止まった。しかし、この沈黙が痛い。
「うわあ……お前、なんでここにいるの?」
「知りませんよ。マスターに聞いてください。……私だって好きでこんなことやってません」
「俺だって好きでこんなことしてねぇし……ほんっと、なんでこんなことに…………なんて、今更言ったってどうにもならんしな。……はあ…ちょっと休憩にしよう。こんな状態でやっても効率悪い」
「…………はぁい」
私はそっぽ向いて会話もしなかった。もしかしたら……いや、もしかしなくても、先輩は普段通りなのだが、私がふてくされてるから、変な空気が流れている。
私だって、駄目なところは理解しているつもりだし、直したいとも思っている。しかし、どうにも体がついていかない。日常生活の中で使うようなことではないからか、イメージが湧かないのだ。
「武器持って戦うなんて……想像つかないもん…」
ただでさえ、運動出来ないのに、課題が山積みで心が折れそう。つか、すでに折れてるんだけど。
ちらりと先輩の様子をうかがうと、退屈そうに欠伸をしていた。そりゃ、やり手の先輩からしてみれば、こんなド素人の相手なんて退屈なんだろうけれど、こっちだって必死なんだから、欠伸とかしなくたっていいじゃないか……しかも、退屈そうに。
「ラグさん、いますか!?」
慌てた様子で修行場に入ってきた、コウくん。そんなコウくんを先輩は気にする様子はない。
「なんだ、紅火。宿題は手伝わんぞ」
「違います! そうじゃなくって、ノイズさん見ませんでした?」
「いんや。そもそも、今日あの人見てないし。何、ノイズさんに用でもあんの?」
「最近、あいつらがまた動き始めたらしいから、ノイズさんに教えようと思って」
あいつら……? あいつらって誰のことだろう。
「……なるほどな。でも、残った奴らってただの雑魚共だろ? そこまで危惧することか?」
「そうなんですけど、警戒するに越したことはないじゃないですか」
「ま、そうだけど。……とにかく、ここには来ていないから、大方、姉さんのとこだろうよ」
「えっと……そうか。もうそろそろか…」
全く話についていけてないないのがここに一人いるんだが。二人して勝手に話を進めるって酷すぎやしませんか。この感じなんだろう……あ、ハブられてる?
「あの、先輩? コウくん?」
「じゃあ、俺はそっちの方当たってみます。お邪魔してすいませんでした。では」
「おう。悪いな、任せる。情報は俺がやるから」
「はい。お願いします」
私の呼びかけに答えることなくコウくんは出て行ってしまった。先輩は先輩で何やら物思いに更け始めてしまった。
このボッチ感ヤバい。
「え~………先輩?」
私がもう一度先輩を呼んでみると、顔を上げ、私を見る。しばらく何かを思案するように見つめられ、やがて先輩の口が開いた。そこから飛び出したのは私が思いもよらない一言だった。
「サファ、今日はここまでにするから、もう家帰れ」
「えっ!? まだ早くないですか?」
「お前がいると邪魔。俺が動けない。つか、しばらく来んな。多分、俺も紅火もお前に構ってられない」
え…えぇぇぇ!? 意味がわからない。どういうこと? 先輩はともかく、なんでコウくんまで……?
「言ったからな。勝手に首突っ込んで、なにかあっても俺は責任取れん。じゃあ、そういうことだから」
どういうことだぁぁ!!
私が不満そうな顔でもしていたのだろう。先輩の溜め息混じりで至極簡易的な答えが返ってくる。
「ノイズさんが危ないんだよ。だから、お前は邪魔。来んな。帰れ。以上」



~あとがき~
新章? 突入? なのかな?
まあ、こっから長編になるかわからないけど、シリアス話いきます。今回はノイズさんにスポット当てます。なんでって言われても困るけど、まあ……流れ的に?

次回、帰れと言われたサファが取った行動は……? そして、肝心のノイズは何処へ!?

サファはいつになったら、強くなれるんでしょ。
運動神経ほぼ皆無といってもいいサファは生き残れるのやらですね。私の性格を知っている人はわかるかもですが、私、結構キャラをいじめるんで、酷い目にもかなり遭わせます。好きなキャラ程その傾向は強い。ヤンデレ的なノリで←
キャラ的にはいつどこで誰が死んでもおかしくないです。しかもこんな世界での話なので、なおさらです。主人公補正とかない。主人公は死なない原理とか知らねぇ((

また出てきました。お姉さん。ラグは姉さんって言ってましたね。以前はルピナがお姉さんって言ってたです。ちょっとずつ繋がってくるかな~?
まあ、勘がいい人、深読み出来る人には繋がりが見えてきたかもしれないね。はい。

ではでは。

last soul 特別編

サファ「新年、明けましておめでと…」
ラグ「もう遅くね? そもそもする意味あんの?」
サファ「うっ……でっ…でも! こういうのは気持ちですよ! 気持ち」
ラグ「これ思いついたのが遅かっただけだろ。作者」
サファ「そ、そうともいいますね……」
ラグ「俺、帰っていい? こたつでアイス食べたい」
サファ「先輩、滅茶苦茶エンジョイしてるじゃないですか、それ」
ラグ「こたつでアイスってのは最高だからな。特に雪〇大福は特にヤバイ」
サファ「明確な商品名言わないでくださいよ、先輩。いや、美味しいと思いますけど……」
ラグ「マジヤバイ。あとはハーゲン〇ッツ」
サファ「いやだから、明確な商品名は…」
ラグ「無難にみかんもいい」
サファ(正月休み本当にエンジョイしてる……)
「先輩、お正月は何を?」
ラグ「ん? 流石に年末は休みだから、籠ってたよ。俺、寒いの嫌いだし」
サファ「あ……草タイプだからですか。……あれ、先輩の家にこたつなんてありましたっけ?」
ラグ「兄貴の家にあるぜ。寮の方だけど」
サファ「兄弟でお正月過ごしたんですか?」
ラグ「兄貴は実家に帰ってた。頭首だから色々あるんだと。俺は帰りたくないから、ここに残ったんだよ。関係ないし……ま、そんな兄貴も二日に帰ってきちゃったけど」
サファ「先輩が足りなかったんですよ……きっと」
ラグ「そう言ってたな。ラグが足りないよーって言って、抱きついてきたし」
サファ「先輩とロストさんの仲って誤解されそうですね。こう……ね! イケナイ方向の…」
ラグ「俺にそんな趣味はねぇ」
サファ「知ってますよ」
ラグ「兄貴もないからな。ちょっとあれだろ……ブラコンこじらせてるだけだろ」
サファ「どうこじらせたら、あんな感じになるんですか。会う度、抱き合ってるじゃないですか……ロストさんが強引に」
ラグ「それは抱き合ってるとは言わん。抱きつかれてると言う。………つか、何の話だよ。こんなことを言うためにここに来たんじゃないだろ」
サファ「はっ!! そうですよね! 大切なこと言えてませんもん! 先輩、言いましょうっ!」
ラグ「………へいへい」
サファ、ラグ
「今年もlast soulをよろしくお願いします!」





~あとがき~
はい、今年もよろしくお願いします!
こちらはゆっくり更新ではありますが、しっかり続けていきたいと思います。

二人の話題に少し上がっていましたが、ロスに変な趣味はありません。ラグに対する愛が大きいだけです。義弟君が好きなだけです! だから、誤解しないでくだs…
ラグ「その言い方には誤解しか生まれないだろ
なんだよ。義弟君が好きなだけですって。気持ち悪いわ。言い方考えろよな」
義弟って書いておとうとって呼んでね☆
ラグ「そこはどうでもいいだろうが」
サファ「ま……まあ、ロストさんが先輩のことが好きなのは本当ですし……嘘ではないですよ?」
ラグ「そうだとしても、特別な感情はないことだけは、はっきりさせとかないとヤバいだろ。……ま、こんな底辺にある魔の巣窟みたいなブログに閲覧者がいるかも怪しいところだが」
サファ「饒舌ですね~」
ラグ「ここははっきりさせたいからな」
まあまあ……少なくとも、ラグにその気がないことは分かりきってるし、大丈夫さ!
問題はまだ本編にちゃんと出てないロスだけど。
ラグ「ねぇよ! 兄貴にもその気はねぇよ!! あったら、あの人のこと兄貴なんて呼ばねぇ! つか、兄弟やめてるわ!!」
ラグの鋭いツッコミも聞けたことですし、そろそろ終わります!
サファ「その理由は一体……?」
ここまでありがとうございました♪
今年もどうか、鈴鳴カフェも、satomiのきまぐれ日記もよろしくお願いします!
ではでは~(* ̄▽ ̄)ノ~~ ♪
ラグ「………………今年はどこまで進むんだろうな」
サファ「少なくとも完結はしませんね」
ラグ「そだな」

last soul 第20話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~明と暗~


地下にある部屋に戻ると、リアルくんは当然ながらそこにいた。椅子に座って黙って読書中らしい。そんなリアルくんを気にすることなく、コウくんとシリアちゃんは二人でふざけあっているようだ。こうして見ると、二人が子供っぽいのが歪めない。
「おい、紅火、シリア。何してるんだ?」
「あ! ノイズさん、姉ちゃん♪ 今ね、学校で流行ってる遊びしてたんだ」
「どこでも流行ってるんだぜ♪」
どうやら、コウくんの学校とシリアちゃんの学校とで流行ってることらしい。となると、今、小中学生の間で流行っている、ということなのだろうか。私にはあまりわからないので、説明は控えさせてもらうけれども。
「サファさん、初めての修行の方はどうでした?」
本から顔を上げたリアルくんが聞いてきた。まあ、これと言って成果はないのだが、これから頑張る、としか言いようがない。
黙っている私を見て、リアルくんは察してくれたのか、これからですよ、と励ましてくれた。年下に…と言っても、一歳差だけれども、慰められるなんて、私もまだまだです。
「そういえば、ラグ兄は?」
「なんか用事? が出来たっぽいみたいで、どっか行っちゃった」
「またあの人ですかね。ラグ兄、気に入られてますね」
「んー……ま、ラグの成せる技って奴? 単純に技術を買われてんだろ」
リアルくんとノイズさんの言っていることが理解出来ない。コウくん逹は全く話を聞いていないから、聞いても答えられないだろう。コウくんなら何か知っていそうだけれど、ちょっとお馬鹿さんだから何とも言えない。
さっきは知らない方がいいって言われちゃったしなぁ……
「つか、ラグのことをこう…マスターが知っているのかも怪しいな。マスターとあの人、仲悪いことで有名だから」
「ですね。ラグ兄もその間を行き来するなんて、チャレンジャーです」
「ほーんと、たまにラグの考えがわからないときあるな。長いこと一緒だけど、謎だわ~」
「そういうのはお互い様って奴だと思います」
「そお?」
こくこく、と無言でうなずくリアルくんに対し、ノイズさんは首をかしげている。リアルくんとノイズさんって仲いいんだな。
対して、話に出てきたマスターとある人…恐らくラグ先輩を呼び出した人のことだろう…は仲悪いようだ。本家繋がり……だったりするのだろうか。なんて、そんなことあるわけないか。
「うがー! 裏の世界もわからないことだらけだー!」
「どーしたの、サファ」
「修行厳しすぎて、壊れたんでしょうか」
「いや、そういう訳じゃないんだけど……もう今日は帰ろうかな。コウくん、どうする?」
シリアちゃんと遊んでいたコウくんにそう聞いてみると、こちらを振り向いた。
「ん? 姉ちゃん帰るなら、俺も帰るよ♪ じゃあね、シリア~」
「おう♪ また明日」
ノイズさん、リアルくん、シリアちゃんと別れ、私とコウくんはギルドを出た。家に帰る途中、ノイズさんとリアルくんが話していたことをコウくんに伝え、先輩が誰と会っているのかを聞いてみた。
「んー……絶対とは言えないけど、ヘラさんかな。多分」
「ヘラ……さん?」
「うん。本家のリーダーみたいな人だって聞いてる。表向きには色んな仕事をしているみたい。母さんとはちょっと気が合わないらしいよ」
「そんな人が先輩に何の用なんだろう?」
私がそう言うとコウくんは肩をすくめて、わからない、と言った。私はコウくんがすぐにいつものおふざけモードになるのかと思ったら、真剣な顔付きのまま呟く。
「んでも……もしかしたら…まだ……」
「コウ…くん?」
「…………ううん。何でもない♪」
にこっと笑顔を見せ、私の前を走った。そしてくるりとこちらを振り向き、手を振る。
「ほらほら♪ 早くかーえろっ!」
「う、うん……」
振り返ったコウくんが見せた笑顔が何となく作り物に見えてしまったのは気のせいだろうか……?

いつもの場所、指定された時間に行ってみると、やはりと言うべきか人の気配は一つもなかった。それでもなお、ラグは被っているフードを脱ぐことはせず、黙って約束した人物を待った。
「…………どんな要求されるのやら」
ロリポップを舐めつつ、暇を持て余していると、マントを揺らしながらサーナイトが近付いてきた。
「やあ♪ ラグ、今日は来てくれてありがとう」
「どうも。ルピナを通して話は伺っていましたよ。しかし、今回は随分と時間がかかりましたね」
「うん? それは嫌味かい?」
「いえ、別に。………それで今回はどうすれば」
ラグの問いかけにサーナイト…ヘラはにこっと笑顔を浮かべた。その笑顔を見て、ラグは以前の事柄等がフラッシュバックしたのか、表情が固まる。今度こそは無茶な要求はなしで、と願うものの、それが一生叶わぬことだということも残念ながら悟っていた。
「もっちろん、僕の要求を飲んでもらうよ。色々考えているから、決まったら連絡するよ」
「ま…まだ決まってないんですか。じゃあ、なんで俺は呼ばれたんです?」
「会いたかった半分、お知らせ半分だよ」
「最初のは聞かなかったことにします。お知らせとはなんでしょう?」
ラグが簡単に流すとヘラは不機嫌そうな雰囲気を漂わせるが、気にしていてはこちらが持たない。そう割り切り、彼女の言葉を待った。
「ラグくん、意地悪。……お知らせはあれだよ。奴らの処遇についてだよ」
「? いつも通り、半殺しじゃないんですか?」
「うん。もう全滅させちゃってよ。こちらで色々と調べて裏付けもしたんだよね。今回に限っては証拠不十分って訳でもないし。……ラグくんなら、簡単でしょ?」
「そりゃ、半殺しよりは、幾分か簡単ですよ。……もしかして、俺のために時間かけたんですか?」
「………まさか。気紛れだよ」
冗談、とでも言うように肩をすくめて見せた。それでもラグには、彼自身の手で全滅させるために時間をかけたのだろうと思った。
「ありがとうございます、ヘラさん」
「お礼を言われる様なことをしていないけれど? さて、まだ動かないでよね。あちらに動きがない以上、下手に出たくないもので」
「わかっています。そちらの合図を待ちますよ」
「理解が早くて助かる。………それじゃあ、いつも以上の働きを期待しているよ、『疾風の銃士』さん」
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不敵な笑みを浮かべるヘラに対し、ラグは無表情のまま黙ってうなずいた。そして、くるりとヘラに背を向け、その場を立ち去ろうとした。が、ヘラに止められ、ラグが若干、煩わしそうに振り返る。
「わかっているだろうけれど、あの子のことを生かすも殺すも君次第だからね。ま、頑張ってね。何かあったら……この先は言わなくても大丈夫?」
「…………えぇ、もちろん」
ラグはそれだけ言うと、今度こそ、その場を立ち去った。ヘラも呼び止めることはせず、ラグの背中を見つめ続けた。



~あとがき~
ふう……これでシリアスな重苦しい話に入れます。
ノイズさんメインの話になりますが、動くのは主人公であるサファ&ラグですけどね! 主に実行はラグですけどね!

次回、ラグとサファの修行の続き。あとは事を起こしたいです←

新キャラと呼べるほどのキャラか知りませんが、ヘラさん登場です。実は、ラグとルピナの会話にヘラ、と出てきているのです。なので、初登場とは言えません。まあ、本人が喋ったのは今回が初めてだから、初登場でいいのかな?
紅珠さんと仲悪し、です。そこに色んな人が挟まれて、巻き添えを食らうのがお約束。よくやられるのは、二人の間を行き来するラグですかね。あとはとばっちりで、ノイズとかロスもたまに挟まれてたじたじしてます(笑)
メイズは適当に受け流すので、挟まれても大変だとか思っていません。涼しい顔でやり過ごします←
一番器用なキャラなんですよね、メイズさん。

ではでは。

last soul 第19話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~初めては大変なことにばっかりです~


「基本の構えつっても、人それぞれなんだけど……楽なのは重心を低くして、いつでも走り出せるようにすること。相手の動きを読んで、いつでも前に出られるようにする」
相手の動きを……読めるのか…私は………いやいや、弱気なことを言っている場合じゃないね。言われた通りにやってみよう。
私は腰を落とし、重心を低くしてみる。この体勢がなかなかキツい。普段やらない体勢だからか、いまいちピンときていないというか……難しい。
「形は様になっているな……じゃあ、そっから全力で走って」
「走るんですか!? え…これで?」
「しっかり前に走れよ」
走ること前提でアドバイスされても……走らなきゃなのか。
私は一息つくと、思いきり地面を蹴った。端まで走ったところで、私は先輩の方を振り向く。壁にぶつかりそうになったのは、内緒の方向でお願いします。
「………まあ、いいか。次」
歯切れ悪いと感じたのは私だけでしょうか。
考え込むようにしていた先輩は、手招きをして私を呼ぶ。それに従い、元の場所まで戻ってくる。
「短剣もナイフも同じなんだが、基本的には斬りつけるか突くかの二択。短剣は刃が両方についている分、どちらを向けても大丈夫だ。しかし、同時に自分を傷付ける可能性もあることを忘れるなよ」
もし、斬りつけるときに横にすれば、どちらの方にも刃は向いていることになるのか……
「それと、剣と違って短剣はこちらの小回りが利く。素早く動いて相手を翻弄しつつ、攻撃する……これが基本パターンかな」
「それじゃあ……私はこれから何をすれば…」
「短剣の使い方を覚えること。それと瞬発力を鍛えること。あとは……そうだな…洞察力と体力をつけることかな。翻弄すると言っても、相手の動きがわかっていないと出来ないし、体力ないと動けなくなるし」
そ…そうですね……
結局、何をすればいいのかがわからないけれど……まあ、いいや。なんとかなるでしょ!
「体に叩き込むしかない。瞬発力、洞察力は運動で鍛える。短剣は反復練習かな」
「は、はい……」
「さて……まだ時間あるし…お前がバテるまでやるか」
バテるまで!? いや、もうすでにバテ気味なんですけど……
「知るか。休憩挟んでやるから、続けるぞ」
あうー……でも、出遅れてるみたいなもんだし……よし! 頑張らなくちゃ!
「ご指導よろしくお願いします!」
「………あぁ」

今、何時だろう。
バテるどころの話ではないよ……死ぬって。殺す手段を覚える前に私が死ぬ。
修行場で大の字になって倒れている。倒れているというか、寝ているというか微妙なところではある。
「これでも緩い方なんだが……ま、いいや。今日はこれで終わりにするか」
教えている先輩も私と一緒になってやってくれているのだが、息一つ乱さず、涼しい顔をしている。しかもまだ緩いって……緩いって!
「こ…ここのメンバーの人達ってどんくらい強いんですか……」
「そのまんまだろ。先輩から後輩って感じ。一番強いのは師匠。弱いのはお前だな」
馬鹿にした感じがひしひしと伝わってくる。言い返したいが、あいにく、正論しか言われていない。無念。
上半身を起こし、気を取り直して、ラグ先輩の方を見た。先輩は近くの壁に寄っ掛かって、片手でくるくるとナイフを回している。今日はずっとあれ、持ってるような気がする。
「師匠ってロストさん……でしたっけ。一番先輩さんなんですか?」
「らしいな。っつても、ほとんどマスター達とは差がないらしいけど……今で強さの順位をつけるなら、師匠、マスター、俺、紅火、リアル、シリア、お前。ノイズさんは戦力外」
あ……怪我してて戦えないから……か。
「でも、まだ戦えていたら……マスターと同等の力はある。それは断言出来るな。それにメイズさんがいたら、ギルド最強は師匠と争うことになる……と思う」
マスター達の時代、恐ろしい……
「黄金時代って言われてたな。あそこがピークだったって感じ。今は普通だけどさ……師匠がいるだけ、まだ強いところなんじゃ…」
「お前、自分のことを下に見すぎなんじゃない?」
声がした方を見ると、ノイズさんが顔を覗かせていた。これには先輩も驚いたのか、ノイズさんの方を見たまま反応がない。
「ノイズさん……どうしてここに?」
「あっち行ったらリアルしかいなくってさ♪ ラグに用があったから探してたの」
「………? 俺にっすか」
「そ。俺っちが用ある訳じゃなくて……伝言頼まれた」
ノイズさんはそう言うと、先輩の耳元で伝える。私の方までは全く聞こえず、何を話しているのかさっぱりだ。
ノイズさんが先輩から離れると、先輩は少し困ったように顔をしかめた。
「…………えっ? もう?」
「その反応を見る限り、また手を貸してるな~? どこに加担しようとラグの勝手だけど、あまり無茶するなよ」
「別に無茶してません。いつものことですし……俺はこれで失礼します。サファ、明日も同じことするからな」
それだけを言い残し、修行場を出ていった。残された私は驚きのあまり、開いた口が塞がらなかった。
「あ…あれをまた明日もやるのぉぉぉ!?」
「あははっ♪ サファも大変みたいだな♪」
ノイズさんは笑っているが、私にとっては死活問題なのではなかろうか。明日は絶対、筋肉痛でひいひい言いながら特訓することになるだろう。……そんなの願い下げなんだけど。
「そういえば、ノイズさんは今、帰ってきたんですか?」
「ん? いやいや、もっと前から帰ってきてたよ? ギルドに来たのは今だけど、寮に戻ったのは大分前」
「そうでしたか……あう~…むりぃ~」
「最初はそんなもんだよ。慣れれば楽になるさ」
その慣れが来る前に私は過労死しそうです。
「ははっ♪ サファを見ていると新人だった頃を思い出すな。皆そんな感じで先輩達に指導されたもんだよ」
「それじゃあ、ノイズさんもですか?」
「まあね。当時は厳しすぎて死ぬかと思ったくらい」
それを乗り越えて今がある……ということかな。はあ……先は遠いよ…
べたっとへたりこんでいると、ノイズさんが手を貸してくれた。そして何とか立ち上がると、やっとギルドの方へと戻るために歩を進める。昼前に特訓を始めた気がするが、もう少しで夕方になりそうだった。意外と長いことやらされていたもんだな。
そういえば、先輩はもう、ギルドには帰ってこないのだろうか。そのことが気になったため、ノイズさんに質問してみることにした。
「ノイズさん、先輩、どこに行ったんですか? また加担してるって……どういう…」
「ん? サファにはまだ早いかな? いつか知ることが出来るよ」
あ、はぐらかされた……
「強いて言うなら、ラグは色んなところに糸を張っている。だから、必要とされれば、ギルド外の仕事も受けるのさ。いわゆる、何でも屋、みたいな」
「つまり、ギルドの仕事以外に他の仕事もやっている、ということですか?」
「今はそんな認識でいいと思うよ」
うーむ……先輩についてはまだまだわからないことだらけだなぁ……これから、少しずつ知っていけるのかな。
私とノイズさんは談笑しながら、ギルドに戻っていった。



~あとがき~
無理矢理終わらせた感ヤバいっすね。すみません。

次回、ラグを呼び出した人物とはぁ!?

ラグさんはギルド以外でも色々頼まれることがあります。いや、簡単なお手伝い~とかそういう感じのではなく。
ま、そういうところもこれから紹介できればと思っています。はい。

特に言うことなし!

ではでは。

last soul 第18話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~戦い方は人それぞれです~


「………技、ですか。でも…」
「使える使えないの問題じゃねぇんだよ。使えるようにしないと、お前が死ぬだけなんだからな」
私が続きを言う前に先輩はストレートに正論をぶつけてきた。そりゃそうだ。戦いの手段を知らなければやられるのみ。……なのは、わかっているんだけれど。
「仮に使えるとして……どう頼るんですか?」
「技で相手の動きを制限したり、予測したり……だな。そういうのは、殺しの技術でやってもらいたいんだが、無理だってのが昨日のではっきりしたから」
あう。
先輩はどこからか取り出したナイフを弄びながら、私達に向き合った。そして、くるりとナイフを回し、私に向けた。
「これから俺が教えてやる。短剣の使い方もな」
「サファさんは短剣使いってことですか」
「一番ましだったからな」
先輩は、半ば諦めているかのような声でリアルくんに説明をした。それは仕方のないことだとはいえ、軽くヘコむのはおかしいだろうか……
「えっと、技を使うことはおかしいことじゃないですからね。特にサファさんのようなエスパータイプなら」
リアルくんのフォローに私は驚きを隠せなかった。私の反応に気が付いたのか、リアルくんは私に説明してくれた。
「俺もシリアも電撃を使うことがあるので。なので、珍しい話ではないんです。……ですよね、ラグ兄」
「まあな。相手の動きを鈍らせるのは一般的な考えだし……ま、俺には有効な技がないが」
「ラグ兄には“どくどく”があるじゃないですか」
リアルくんに言われると、そうだけど、と小さく呟いた。先輩はあまり、技を補助として使うことがないのだろうか。
「でも技に頼る時間がもったいないじゃん。それなら、有効な技を覚えるより、殺しの技を覚える」
「ラグ兄はそれで調律されていますけど……全員が全員、そういうわけではありませんしね」
「…………そりゃそうか。現に目の前にいるし」
先輩はそう言うと私の方をじっと見てきた。妙に納得している感じなのが腹が立つが……事実なのだから仕方がない…か。
「とりあえず修行場に行くぞ。今日は簡単な扱い方だけでもマスターさせてやる」
「あ、はい……」
私と先輩はリアルくんをその場に残し、部屋を出た。リアルくんは頑張って、と言うように笑って送り出してくれた。
昨日が散々な結果だったから、全く気乗りしない。しかし、先輩は私を気遣う気がないのか、くるくるとナイフをペン回しするかのように扱っていた。滅茶苦茶危ないと思うのだが、落とす気配は全くない。
先輩みたいに、とはいかなくても、どうにか戦えるくらいにはなりたいと思う。……思うけど…私はまだ、この仕事のことをきちんと理解したわけではないのだ。恐らくそれを理解するのは、自分の目で実感したあと……そんな気がする。

修行場につき、早速、短剣の使い方を習うことになった。短剣、と言ってもやはり色々な種類があるようで、先輩がずっと弄んでいたナイフはもちろん、それよりも小さいやつもあれば、大きいものもある。私は先輩が持っていたやつより少し大きいものを手に取った。
「………そもそも、短剣とナイフは別物なんだよな」
「え? 同じなんじゃないんですか?」
「お前が持っているのは短剣だよ。……俺の持っているのはナイフ。それの区別はわかるか?」
「いや、全く。短剣=ナイフって思ってました」
「……短剣は“dagger”だ」
だがー?
「発音悪いな……まあ、いいけど。短剣は対人用武器のことを指し、ナイフは日常的刃物を指す。短剣には諸刃が両面にあるけど、ナイフは片方だけなんだ。ほれ」
先輩が差し出したナイフの刃の部分を見てみると、確かに片方にしかついていたない。よく見る包丁とかそんな感じのやつだ。包丁よりは小さいナイフだけれど、よく見れば違うのがわかった。私がうなずくのを確認し、またナイフをくるくると回しながら説明を再開した。
「実を言うと、短剣って殺傷能力が低いんだよな。主にサブとして使われることが多い。接近武器だし、それなりの技術もいる。接近戦になるだろうから体術も覚えた方がいい」
「そんな大変な武器を私に……?」
「暗殺において、一般的には銃が適していると言われている。けど、お前が使えないんじゃ仕方ないだろ。文句言うなら自分の能力の低さを恨め」
あう。まあ、銃が適しているのはなんとなくわかりますけど……
「ま、人それぞれの向き不向きはある。それに俺は使い手によって、暗殺に適している武器、というのは変わると思っている。俺にはどれがいいかなんてわからないからさ」
先輩には選択肢が沢山あるみたいですしね。……そりゃ、そうなりますよね。
思いきり嫌味たっぷり&皮肉たっぷりを込め、言ってやるが、ラグ先輩は全く動じず、知らんぷりされた。反応がないと、恥ずかしくなってくるから不思議である。
というか、今の私、滅茶苦茶子供っぽい……
「基本動作、構えは教えてやる。そこからどうするかは……わかっているな?」
はぁい……頑張りまーす…
私のやる気のない返事に、先輩は無言で私の後頭部を叩いた。更にじろりと睨まれ、私の立場はないことを確認させられた。
しかし、さっきの説明からすると、私みたいな運動神経ゼロのやつに扱える代物なのだろうか。無理なように聞こえたのは私だけなのだろうか。
いやいや、弱気になるな自分! 先輩が選んだのだから、まだましな方なんだろう。そこから私がどこまで伸びるかが問題なのだ。頑張れ、私。負けるな、私!



~あとがき~
修行シーンとか書くのめんどいので、簡単にやっちゃいたいと思います。描写少なかったら、想像力を働かせてくださいn((殴

次回、ラグとサファで修行とか。メンバーの実力の話とか。次の章への布石とか。

運動神経ゼロのサファにラグはどうするんでしょうね。なんだかんだ、ラグの悩みの種になりそうです。サファが。

ラグは自分の技を出すより、武器で戦った方がいいと思っています。さらに、技だけって言われると、ラグの戦闘力半減すると思ってください。……打撃戦ならいつも通りなんですけどね。
半減つっても、元がすこぶる高いので、半減していても、常人以上だと思いますがね。
サファはこれからに期待です。……え、心配? うん、私もだよ!

ではでは。