鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第46話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際にはご注意ください》





~ノイズによる独白~


目が見えなくなっても、ライラはライラのままだった。明るくて芯の強いライラのまま。マスターの好意もあって、ライラは現場には出ないものの、周りのお世話係としてギルドに身をおくことになった。ハンディキャップなんて感じさせないくらいで。もしかしたら、暗殺者やってたときよりも、生き生きしていたかもしれない。
「ラグ、仕事行くぞー」
「ノイズさんと、二人? やだ……」
本気で嫌な顔を見せ、さっとメイズの後ろに隠れる。そんなラグを不思議そうに見るメイズは特に何もしなかった。
「やだじゃありません。前々から言ってあっただろ? 我儘言うな」
「えー……聞いてない」
「嘘つけ!」
「あは♪ 嫌われてるなぁ、ノイズは」
「サンは黙ってろ」
「はぁい♪」
面白そうに笑うと、目の前に広げてあった書類に戻る。次の新しい仕事だろうけど、大して興味もなかった。そんなことに興味を持つ前に、嫌がるラグを連れ出すことが最優先なのだから。
「ほら。お仕事は嫌がらずにやる! 基本だろ」
「んぅー……だって、なんかやなんだもん」
「せめて明確な理由が聞きたかったなぁ!? なんかって何! なんかって!?」
「わかんない、けど」
何て言いつつも、メイズの影からそっと出てきた。このままじゃ、なんにもならないことが分かっていたからかもしれない。どこか不安げなラグに俺っちは詳しく聞こうなんてしなかった。こういうときのラグは感覚で物を言うものだから、こちらは何も分からないことが多かった。つまり、ラグにしか分からない何かがあるってことだ。
今思えば、ラグのこの勘はばっちり当たっていたわけで、このとき、もっと何か出来ていれば未来も変わっていたのかもしれないと、考えてしまう。……が、当時は深く考えず、いつも通りにこなせばよいと思っていた。
この仕事が、俺っちとライラを引き離す原因となってしまったのだ。

「あー! ノイズにラグくんだっ」
「おー……ノルン。どっか行くの? 一人で?」
ギルドを出る直前、ライラと会った。小さな鞄を手にしていたから、どこかへ買い物にでも出るのだろうと質問をした。
「うん。物資の調達だよ~♪ すぐそこの道具屋さんに頼んであるらしいから、取りに行ってくるの。……ノイズとラグくんはお仕事だよね? 気を付けていってらっしゃいっ!」
「うん。姉さんも、気を付けてね」
「わーいっ! ラグくんは優しいなぁ♪」
「物欲しそうに見るんじゃない! あーもう! ノルン、いってらっしゃいっ!」
「えへへっ♪ ありがとう。いってきます」
どうやらノルンは逆方向のようで、こちらに手を振ると背を向けて歩いて行ってしまった。それを見届けた後、俺っち達も仕事へと向かったのだ。
現場についたのは日が傾き始めた頃だったろうか。暗躍するには丁度いい時間帯ではある。
「今日はおれ、何するの?」
「サンがいないからなぁ……お前には敵の情報回収して欲しいんだよね」
「分かった」
「まだ、やな予感してる?」
「ずっとしてる」
ラグの言うずっとってのは、いつからなのかは聞かなかった。聞いても仕方ないかなってのが当時の考えだったからだ。
「ま、なんもないよ。敵も情報見た感じ、大したことないし。二人でちゃんとこなせるさ」
「……そうだね」
敵のアジトへと難なく潜入すると、ラグとはそこで別れて行動をした。ぶっちゃけて言うと、敵の強さはなんてことはなく、聞いていた情報通りの小規模の組織だった。今回の任務は単純で、この組織にある情報回収とボス暗殺である。他の手下達の相手はついでだ。
「はー……張り合いないな。ま、単騎攻めなんてこんなもんか」
『ノイズさん』
「お、ラグ。どした」
粗方、周りを片付け終わった頃にラグからの通信が入った。幼さを感じさせない淡々とした声が響く。
『重要かわからないんだけど……一応、報告。ボスの部屋? かな。そこだけ意図的に監視カメラが切られてる……他はちゃんと作動してて、ボス部屋にもカメラあるのに、こっちの画面真っ暗で』
「ふーん? まあ、ボスさんがプライベートなこと写したくなかったんじゃない? よくあるぞ」
『なら、いいけど。……回収は八割くらい完了。あと、十分くらい時間くれれば終わる、と思う』
「仕事早いなぁ。誰に似たんだか……ラグは仕事終わったら待機してて」
『はい』
短い返事の後、ぷつりと通信が切れる。一呼吸置いて、また歩き始める。ラグにはああ言ったけれど、一台だけカメラを切るなんてことがありえるのだろうかと考える。もちろん、ボスが見せたくないと形だけ置いておくことはあるにはあるけれど、それなら初めから置く必要はない。ボスがいないときにだけ電源を入れている可能性も大いにあるのだが。
そうだと仮定すると、今、部屋にここのボスがいるということにもなる。
ここまで考えたものの、そこら辺の事情を考えても仕方がないとすぐに頭をきりかえた。
「ラグも仕事終わりそうだし、こっちもさっさと終わらせないと」
部屋の潜入方法について、少しだけ思考を巡らせる。が、目の前に扉はあるし、正面突破でも構わないだろう。そもそも、下の方でどたばたしていたんだし、今更こそこそするのもおかしな話だよな。ボスに話がいっていないなんてことは、普通ではあり得ないだろう。
「……よし。突撃だっ」
武器をしっかり構えつつ、扉を普通に開ける。これが紅珠なら銃で吹っ飛ばしているだろうし、ロスならダッシュで扉をぶち壊すところか。生憎、そんなことはするような性格ではないから、何でもないように開ける。
「ちはーっす。ブラック所属、暗殺者のノイズでーす。俺が来た意味、分かるよな」
「ふん。……殺人集団が何の用だ?」
「そんなこと言うんだ。なら、そっくりそのまま返すぞ。殺人、違法薬物所持……あとは人体実験にも関わっているらしいな。ってことで、取り締まらせてもらうぜ」
ボスと思われるリングマの周りに二人ほど控えていた。側近なのか、たまたまそこにいただけなのかは分からないが、見た目で大したことはないと感じ取れる。ボスも部下よりはやるだろうが、あくまでそれまでだ。これなら、ロスやメイズの方が絶対に強い。要は、そんなレベルでどこにでもいる小悪党って感じ。しかし、相手はどこか余裕で負けるなんて、ましてや殺されるなんて考えていないらしい。
「アンタ、エレクト家だろ?」
「は……? いきなり何?」
「違ってもいいんだがな。そんときゃ、アンタらを餌にして引っ張り出すまでだからよぉ」
今になっても、どうしてここまで突っかかれたのか分からない。多分、親世代に何かされたのだろうとは見当はつくんだけれど。
……当時はもっと混乱してて、何を言っているのかさっぱりだったし、それ以前に本名がバレていることにも焦りを感じた。相手は本人だって気づいていないし家を知られたくらいなんだけど、普段の自分は見失っていた。……これが一人じゃなきゃまた違っていたんだろうなぁ。



~あとがき~
あ、このあと書くの辛い。

次回、ノイズを目の前にして敵の取った行動とは?

そういえば、ラグの言葉遣いについてちゃんと触れてないですね。前回のあとがきでなんとなく触れたけど。
今のラグはノイズ達に敬語を使っていますが、今はまだタメ口で話しています。話にはちゃんと出てきてませんが、ノイズだけでなくメイズや紅珠、ノルンにもタメ口でした。が、さん付けはしてますね。これが敬語になるのは結構すぐなんだけれども、まだ先です。

例のごとく、モブ敵さんは種族とか考えるの面倒なので何も書いていません。適当に思い浮かべてくれればいいと思います……

ではでは。