鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第21話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~何やら動き始めたようで~


「………そこ! 気ぃ抜くな!」
「は、はいぃっ!!」
ラグ先輩と短剣の修行を始めてから数日。相変わらず、私には進歩という言葉が存在しないのか、全く変化が見られない。これでも精一杯やっているつもりなのだが、先輩からすると、まだまだ未熟者らしい。
流石に本物の短剣で修行するわけにはいかないため、同じ重さのレプリカを使って、先輩と修行中。先輩は何も持っていない……つまりは、素手。素手といっても、先輩は私の技を受け流す時にしか使っていないけれど。
私はここだ、と決め、目一杯短剣で突いてみせる。
「…………っはあ!」
「だから……甘いんだよ!」
私の突きを受け流し、先輩は隙が出来た私のお腹に蹴りを入れた。これで何度目だろう。……慣れない、めっちゃ痛い。
「うあぁぁぁぁ!! 先輩、もっと優しくしてくれてもいいじゃないですかぁぁ!!」
「勢いは認めるが、隙だらけ。威力も甘いし、読みも駄目。おまけに最後はヤケを起こして、突っ込んだな? そこの馬鹿」
f:id:nyanco-sensei:20141209224757j:plain
淡々と私の欠点を上げていく先輩に一言も返す言葉がない。全くもってその通り。そっと目をそらそうとするが、睨む先輩がそれを許さなかった。
「…………これ、何度目の指摘だと思う?」
「あう……だって分からないんですもん」
「いいんだよ、別に。お前がそこまで俺の蹴りを受けたいんなら、何度だってぶちこんでやるよ。その内、手加減忘れて、お前の肋骨折るけど」
「ぎゃー!! ごめんなさいごめんなさい!」
冗談とは思えない、先輩の言葉を聞き、私は慌てて起き上がった。相変わらず、先輩は私に向かって冷たい視線を送っている。
「全く……覚える気ないのかね、お前は」
「わ、私はいたって真面目にやってるつもりですけど……」
「は? 寝言は寝て言え。流石に同じことを何十回も言っていたら、幼稚園児でも出来るぞ。お前は幼稚園児以下なの?」
「なっ! そこまで言うことないじゃないですか! こういうの初めてだから、よくわかんないんですよ!?」
「戦うって本能で出来るものだと思うんだけど? お前さ、仮にもポケモンだろうが。昔は戦うっていうのは日常茶飯事だったんだぞ? 学校で習わなかった?」
「うっ……それは~…」
確かに習う。習いました。今では、日常の中で戦い…バトルをすることは少ないものだが、昔ではそういうことをしていたのは知っている。歴史で習った………気がする。
「大体、今じゃ、技を使った戦い方をどこの学校だってやるんだろ? それなら、身のこなしもなんとかなるもんじゃないの? てんで駄目じゃねぇか」
「苦手なんですぅ! 体動かすの苦手なんですよ!! 体育の成績、アウトゾーンギリッギリだったんです!」
私と先輩の言い合いは私のカミングアウトでとりあえず止まった。しかし、この沈黙が痛い。
「うわあ……お前、なんでここにいるの?」
「知りませんよ。マスターに聞いてください。……私だって好きでこんなことやってません」
「俺だって好きでこんなことしてねぇし……ほんっと、なんでこんなことに…………なんて、今更言ったってどうにもならんしな。……はあ…ちょっと休憩にしよう。こんな状態でやっても効率悪い」
「…………はぁい」
私はそっぽ向いて会話もしなかった。もしかしたら……いや、もしかしなくても、先輩は普段通りなのだが、私がふてくされてるから、変な空気が流れている。
私だって、駄目なところは理解しているつもりだし、直したいとも思っている。しかし、どうにも体がついていかない。日常生活の中で使うようなことではないからか、イメージが湧かないのだ。
「武器持って戦うなんて……想像つかないもん…」
ただでさえ、運動出来ないのに、課題が山積みで心が折れそう。つか、すでに折れてるんだけど。
ちらりと先輩の様子をうかがうと、退屈そうに欠伸をしていた。そりゃ、やり手の先輩からしてみれば、こんなド素人の相手なんて退屈なんだろうけれど、こっちだって必死なんだから、欠伸とかしなくたっていいじゃないか……しかも、退屈そうに。
「ラグさん、いますか!?」
慌てた様子で修行場に入ってきた、コウくん。そんなコウくんを先輩は気にする様子はない。
「なんだ、紅火。宿題は手伝わんぞ」
「違います! そうじゃなくって、ノイズさん見ませんでした?」
「いんや。そもそも、今日あの人見てないし。何、ノイズさんに用でもあんの?」
「最近、あいつらがまた動き始めたらしいから、ノイズさんに教えようと思って」
あいつら……? あいつらって誰のことだろう。
「……なるほどな。でも、残った奴らってただの雑魚共だろ? そこまで危惧することか?」
「そうなんですけど、警戒するに越したことはないじゃないですか」
「ま、そうだけど。……とにかく、ここには来ていないから、大方、姉さんのとこだろうよ」
「えっと……そうか。もうそろそろか…」
全く話についていけてないないのがここに一人いるんだが。二人して勝手に話を進めるって酷すぎやしませんか。この感じなんだろう……あ、ハブられてる?
「あの、先輩? コウくん?」
「じゃあ、俺はそっちの方当たってみます。お邪魔してすいませんでした。では」
「おう。悪いな、任せる。情報は俺がやるから」
「はい。お願いします」
私の呼びかけに答えることなくコウくんは出て行ってしまった。先輩は先輩で何やら物思いに更け始めてしまった。
このボッチ感ヤバい。
「え~………先輩?」
私がもう一度先輩を呼んでみると、顔を上げ、私を見る。しばらく何かを思案するように見つめられ、やがて先輩の口が開いた。そこから飛び出したのは私が思いもよらない一言だった。
「サファ、今日はここまでにするから、もう家帰れ」
「えっ!? まだ早くないですか?」
「お前がいると邪魔。俺が動けない。つか、しばらく来んな。多分、俺も紅火もお前に構ってられない」
え…えぇぇぇ!? 意味がわからない。どういうこと? 先輩はともかく、なんでコウくんまで……?
「言ったからな。勝手に首突っ込んで、なにかあっても俺は責任取れん。じゃあ、そういうことだから」
どういうことだぁぁ!!
私が不満そうな顔でもしていたのだろう。先輩の溜め息混じりで至極簡易的な答えが返ってくる。
「ノイズさんが危ないんだよ。だから、お前は邪魔。来んな。帰れ。以上」



~あとがき~
新章? 突入? なのかな?
まあ、こっから長編になるかわからないけど、シリアス話いきます。今回はノイズさんにスポット当てます。なんでって言われても困るけど、まあ……流れ的に?

次回、帰れと言われたサファが取った行動は……? そして、肝心のノイズは何処へ!?

サファはいつになったら、強くなれるんでしょ。
運動神経ほぼ皆無といってもいいサファは生き残れるのやらですね。私の性格を知っている人はわかるかもですが、私、結構キャラをいじめるんで、酷い目にもかなり遭わせます。好きなキャラ程その傾向は強い。ヤンデレ的なノリで←
キャラ的にはいつどこで誰が死んでもおかしくないです。しかもこんな世界での話なので、なおさらです。主人公補正とかない。主人公は死なない原理とか知らねぇ((

また出てきました。お姉さん。ラグは姉さんって言ってましたね。以前はルピナがお姉さんって言ってたです。ちょっとずつ繋がってくるかな~?
まあ、勘がいい人、深読み出来る人には繋がりが見えてきたかもしれないね。はい。

ではでは。

last soul 特別編

サファ「新年、明けましておめでと…」
ラグ「もう遅くね? そもそもする意味あんの?」
サファ「うっ……でっ…でも! こういうのは気持ちですよ! 気持ち」
ラグ「これ思いついたのが遅かっただけだろ。作者」
サファ「そ、そうともいいますね……」
ラグ「俺、帰っていい? こたつでアイス食べたい」
サファ「先輩、滅茶苦茶エンジョイしてるじゃないですか、それ」
ラグ「こたつでアイスってのは最高だからな。特に雪〇大福は特にヤバイ」
サファ「明確な商品名言わないでくださいよ、先輩。いや、美味しいと思いますけど……」
ラグ「マジヤバイ。あとはハーゲン〇ッツ」
サファ「いやだから、明確な商品名は…」
ラグ「無難にみかんもいい」
サファ(正月休み本当にエンジョイしてる……)
「先輩、お正月は何を?」
ラグ「ん? 流石に年末は休みだから、籠ってたよ。俺、寒いの嫌いだし」
サファ「あ……草タイプだからですか。……あれ、先輩の家にこたつなんてありましたっけ?」
ラグ「兄貴の家にあるぜ。寮の方だけど」
サファ「兄弟でお正月過ごしたんですか?」
ラグ「兄貴は実家に帰ってた。頭首だから色々あるんだと。俺は帰りたくないから、ここに残ったんだよ。関係ないし……ま、そんな兄貴も二日に帰ってきちゃったけど」
サファ「先輩が足りなかったんですよ……きっと」
ラグ「そう言ってたな。ラグが足りないよーって言って、抱きついてきたし」
サファ「先輩とロストさんの仲って誤解されそうですね。こう……ね! イケナイ方向の…」
ラグ「俺にそんな趣味はねぇ」
サファ「知ってますよ」
ラグ「兄貴もないからな。ちょっとあれだろ……ブラコンこじらせてるだけだろ」
サファ「どうこじらせたら、あんな感じになるんですか。会う度、抱き合ってるじゃないですか……ロストさんが強引に」
ラグ「それは抱き合ってるとは言わん。抱きつかれてると言う。………つか、何の話だよ。こんなことを言うためにここに来たんじゃないだろ」
サファ「はっ!! そうですよね! 大切なこと言えてませんもん! 先輩、言いましょうっ!」
ラグ「………へいへい」
サファ、ラグ
「今年もlast soulをよろしくお願いします!」





~あとがき~
はい、今年もよろしくお願いします!
こちらはゆっくり更新ではありますが、しっかり続けていきたいと思います。

二人の話題に少し上がっていましたが、ロスに変な趣味はありません。ラグに対する愛が大きいだけです。義弟君が好きなだけです! だから、誤解しないでくだs…
ラグ「その言い方には誤解しか生まれないだろ
なんだよ。義弟君が好きなだけですって。気持ち悪いわ。言い方考えろよな」
義弟って書いておとうとって呼んでね☆
ラグ「そこはどうでもいいだろうが」
サファ「ま……まあ、ロストさんが先輩のことが好きなのは本当ですし……嘘ではないですよ?」
ラグ「そうだとしても、特別な感情はないことだけは、はっきりさせとかないとヤバいだろ。……ま、こんな底辺にある魔の巣窟みたいなブログに閲覧者がいるかも怪しいところだが」
サファ「饒舌ですね~」
ラグ「ここははっきりさせたいからな」
まあまあ……少なくとも、ラグにその気がないことは分かりきってるし、大丈夫さ!
問題はまだ本編にちゃんと出てないロスだけど。
ラグ「ねぇよ! 兄貴にもその気はねぇよ!! あったら、あの人のこと兄貴なんて呼ばねぇ! つか、兄弟やめてるわ!!」
ラグの鋭いツッコミも聞けたことですし、そろそろ終わります!
サファ「その理由は一体……?」
ここまでありがとうございました♪
今年もどうか、鈴鳴カフェも、satomiのきまぐれ日記もよろしくお願いします!
ではでは~(* ̄▽ ̄)ノ~~ ♪
ラグ「………………今年はどこまで進むんだろうな」
サファ「少なくとも完結はしませんね」
ラグ「そだな」

last soul 第20話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~明と暗~


地下にある部屋に戻ると、リアルくんは当然ながらそこにいた。椅子に座って黙って読書中らしい。そんなリアルくんを気にすることなく、コウくんとシリアちゃんは二人でふざけあっているようだ。こうして見ると、二人が子供っぽいのが歪めない。
「おい、紅火、シリア。何してるんだ?」
「あ! ノイズさん、姉ちゃん♪ 今ね、学校で流行ってる遊びしてたんだ」
「どこでも流行ってるんだぜ♪」
どうやら、コウくんの学校とシリアちゃんの学校とで流行ってることらしい。となると、今、小中学生の間で流行っている、ということなのだろうか。私にはあまりわからないので、説明は控えさせてもらうけれども。
「サファさん、初めての修行の方はどうでした?」
本から顔を上げたリアルくんが聞いてきた。まあ、これと言って成果はないのだが、これから頑張る、としか言いようがない。
黙っている私を見て、リアルくんは察してくれたのか、これからですよ、と励ましてくれた。年下に…と言っても、一歳差だけれども、慰められるなんて、私もまだまだです。
「そういえば、ラグ兄は?」
「なんか用事? が出来たっぽいみたいで、どっか行っちゃった」
「またあの人ですかね。ラグ兄、気に入られてますね」
「んー……ま、ラグの成せる技って奴? 単純に技術を買われてんだろ」
リアルくんとノイズさんの言っていることが理解出来ない。コウくん逹は全く話を聞いていないから、聞いても答えられないだろう。コウくんなら何か知っていそうだけれど、ちょっとお馬鹿さんだから何とも言えない。
さっきは知らない方がいいって言われちゃったしなぁ……
「つか、ラグのことをこう…マスターが知っているのかも怪しいな。マスターとあの人、仲悪いことで有名だから」
「ですね。ラグ兄もその間を行き来するなんて、チャレンジャーです」
「ほーんと、たまにラグの考えがわからないときあるな。長いこと一緒だけど、謎だわ~」
「そういうのはお互い様って奴だと思います」
「そお?」
こくこく、と無言でうなずくリアルくんに対し、ノイズさんは首をかしげている。リアルくんとノイズさんって仲いいんだな。
対して、話に出てきたマスターとある人…恐らくラグ先輩を呼び出した人のことだろう…は仲悪いようだ。本家繋がり……だったりするのだろうか。なんて、そんなことあるわけないか。
「うがー! 裏の世界もわからないことだらけだー!」
「どーしたの、サファ」
「修行厳しすぎて、壊れたんでしょうか」
「いや、そういう訳じゃないんだけど……もう今日は帰ろうかな。コウくん、どうする?」
シリアちゃんと遊んでいたコウくんにそう聞いてみると、こちらを振り向いた。
「ん? 姉ちゃん帰るなら、俺も帰るよ♪ じゃあね、シリア~」
「おう♪ また明日」
ノイズさん、リアルくん、シリアちゃんと別れ、私とコウくんはギルドを出た。家に帰る途中、ノイズさんとリアルくんが話していたことをコウくんに伝え、先輩が誰と会っているのかを聞いてみた。
「んー……絶対とは言えないけど、ヘラさんかな。多分」
「ヘラ……さん?」
「うん。本家のリーダーみたいな人だって聞いてる。表向きには色んな仕事をしているみたい。母さんとはちょっと気が合わないらしいよ」
「そんな人が先輩に何の用なんだろう?」
私がそう言うとコウくんは肩をすくめて、わからない、と言った。私はコウくんがすぐにいつものおふざけモードになるのかと思ったら、真剣な顔付きのまま呟く。
「んでも……もしかしたら…まだ……」
「コウ…くん?」
「…………ううん。何でもない♪」
にこっと笑顔を見せ、私の前を走った。そしてくるりとこちらを振り向き、手を振る。
「ほらほら♪ 早くかーえろっ!」
「う、うん……」
振り返ったコウくんが見せた笑顔が何となく作り物に見えてしまったのは気のせいだろうか……?

いつもの場所、指定された時間に行ってみると、やはりと言うべきか人の気配は一つもなかった。それでもなお、ラグは被っているフードを脱ぐことはせず、黙って約束した人物を待った。
「…………どんな要求されるのやら」
ロリポップを舐めつつ、暇を持て余していると、マントを揺らしながらサーナイトが近付いてきた。
「やあ♪ ラグ、今日は来てくれてありがとう」
「どうも。ルピナを通して話は伺っていましたよ。しかし、今回は随分と時間がかかりましたね」
「うん? それは嫌味かい?」
「いえ、別に。………それで今回はどうすれば」
ラグの問いかけにサーナイト…ヘラはにこっと笑顔を浮かべた。その笑顔を見て、ラグは以前の事柄等がフラッシュバックしたのか、表情が固まる。今度こそは無茶な要求はなしで、と願うものの、それが一生叶わぬことだということも残念ながら悟っていた。
「もっちろん、僕の要求を飲んでもらうよ。色々考えているから、決まったら連絡するよ」
「ま…まだ決まってないんですか。じゃあ、なんで俺は呼ばれたんです?」
「会いたかった半分、お知らせ半分だよ」
「最初のは聞かなかったことにします。お知らせとはなんでしょう?」
ラグが簡単に流すとヘラは不機嫌そうな雰囲気を漂わせるが、気にしていてはこちらが持たない。そう割り切り、彼女の言葉を待った。
「ラグくん、意地悪。……お知らせはあれだよ。奴らの処遇についてだよ」
「? いつも通り、半殺しじゃないんですか?」
「うん。もう全滅させちゃってよ。こちらで色々と調べて裏付けもしたんだよね。今回に限っては証拠不十分って訳でもないし。……ラグくんなら、簡単でしょ?」
「そりゃ、半殺しよりは、幾分か簡単ですよ。……もしかして、俺のために時間かけたんですか?」
「………まさか。気紛れだよ」
冗談、とでも言うように肩をすくめて見せた。それでもラグには、彼自身の手で全滅させるために時間をかけたのだろうと思った。
「ありがとうございます、ヘラさん」
「お礼を言われる様なことをしていないけれど? さて、まだ動かないでよね。あちらに動きがない以上、下手に出たくないもので」
「わかっています。そちらの合図を待ちますよ」
「理解が早くて助かる。………それじゃあ、いつも以上の働きを期待しているよ、『疾風の銃士』さん」
f:id:nyanco-sensei:20141125233208j:plain
不敵な笑みを浮かべるヘラに対し、ラグは無表情のまま黙ってうなずいた。そして、くるりとヘラに背を向け、その場を立ち去ろうとした。が、ヘラに止められ、ラグが若干、煩わしそうに振り返る。
「わかっているだろうけれど、あの子のことを生かすも殺すも君次第だからね。ま、頑張ってね。何かあったら……この先は言わなくても大丈夫?」
「…………えぇ、もちろん」
ラグはそれだけ言うと、今度こそ、その場を立ち去った。ヘラも呼び止めることはせず、ラグの背中を見つめ続けた。



~あとがき~
ふう……これでシリアスな重苦しい話に入れます。
ノイズさんメインの話になりますが、動くのは主人公であるサファ&ラグですけどね! 主に実行はラグですけどね!

次回、ラグとサファの修行の続き。あとは事を起こしたいです←

新キャラと呼べるほどのキャラか知りませんが、ヘラさん登場です。実は、ラグとルピナの会話にヘラ、と出てきているのです。なので、初登場とは言えません。まあ、本人が喋ったのは今回が初めてだから、初登場でいいのかな?
紅珠さんと仲悪し、です。そこに色んな人が挟まれて、巻き添えを食らうのがお約束。よくやられるのは、二人の間を行き来するラグですかね。あとはとばっちりで、ノイズとかロスもたまに挟まれてたじたじしてます(笑)
メイズは適当に受け流すので、挟まれても大変だとか思っていません。涼しい顔でやり過ごします←
一番器用なキャラなんですよね、メイズさん。

ではでは。

last soul 第19話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~初めては大変なことにばっかりです~


「基本の構えつっても、人それぞれなんだけど……楽なのは重心を低くして、いつでも走り出せるようにすること。相手の動きを読んで、いつでも前に出られるようにする」
相手の動きを……読めるのか…私は………いやいや、弱気なことを言っている場合じゃないね。言われた通りにやってみよう。
私は腰を落とし、重心を低くしてみる。この体勢がなかなかキツい。普段やらない体勢だからか、いまいちピンときていないというか……難しい。
「形は様になっているな……じゃあ、そっから全力で走って」
「走るんですか!? え…これで?」
「しっかり前に走れよ」
走ること前提でアドバイスされても……走らなきゃなのか。
私は一息つくと、思いきり地面を蹴った。端まで走ったところで、私は先輩の方を振り向く。壁にぶつかりそうになったのは、内緒の方向でお願いします。
「………まあ、いいか。次」
歯切れ悪いと感じたのは私だけでしょうか。
考え込むようにしていた先輩は、手招きをして私を呼ぶ。それに従い、元の場所まで戻ってくる。
「短剣もナイフも同じなんだが、基本的には斬りつけるか突くかの二択。短剣は刃が両方についている分、どちらを向けても大丈夫だ。しかし、同時に自分を傷付ける可能性もあることを忘れるなよ」
もし、斬りつけるときに横にすれば、どちらの方にも刃は向いていることになるのか……
「それと、剣と違って短剣はこちらの小回りが利く。素早く動いて相手を翻弄しつつ、攻撃する……これが基本パターンかな」
「それじゃあ……私はこれから何をすれば…」
「短剣の使い方を覚えること。それと瞬発力を鍛えること。あとは……そうだな…洞察力と体力をつけることかな。翻弄すると言っても、相手の動きがわかっていないと出来ないし、体力ないと動けなくなるし」
そ…そうですね……
結局、何をすればいいのかがわからないけれど……まあ、いいや。なんとかなるでしょ!
「体に叩き込むしかない。瞬発力、洞察力は運動で鍛える。短剣は反復練習かな」
「は、はい……」
「さて……まだ時間あるし…お前がバテるまでやるか」
バテるまで!? いや、もうすでにバテ気味なんですけど……
「知るか。休憩挟んでやるから、続けるぞ」
あうー……でも、出遅れてるみたいなもんだし……よし! 頑張らなくちゃ!
「ご指導よろしくお願いします!」
「………あぁ」

今、何時だろう。
バテるどころの話ではないよ……死ぬって。殺す手段を覚える前に私が死ぬ。
修行場で大の字になって倒れている。倒れているというか、寝ているというか微妙なところではある。
「これでも緩い方なんだが……ま、いいや。今日はこれで終わりにするか」
教えている先輩も私と一緒になってやってくれているのだが、息一つ乱さず、涼しい顔をしている。しかもまだ緩いって……緩いって!
「こ…ここのメンバーの人達ってどんくらい強いんですか……」
「そのまんまだろ。先輩から後輩って感じ。一番強いのは師匠。弱いのはお前だな」
馬鹿にした感じがひしひしと伝わってくる。言い返したいが、あいにく、正論しか言われていない。無念。
上半身を起こし、気を取り直して、ラグ先輩の方を見た。先輩は近くの壁に寄っ掛かって、片手でくるくるとナイフを回している。今日はずっとあれ、持ってるような気がする。
「師匠ってロストさん……でしたっけ。一番先輩さんなんですか?」
「らしいな。っつても、ほとんどマスター達とは差がないらしいけど……今で強さの順位をつけるなら、師匠、マスター、俺、紅火、リアル、シリア、お前。ノイズさんは戦力外」
あ……怪我してて戦えないから……か。
「でも、まだ戦えていたら……マスターと同等の力はある。それは断言出来るな。それにメイズさんがいたら、ギルド最強は師匠と争うことになる……と思う」
マスター達の時代、恐ろしい……
「黄金時代って言われてたな。あそこがピークだったって感じ。今は普通だけどさ……師匠がいるだけ、まだ強いところなんじゃ…」
「お前、自分のことを下に見すぎなんじゃない?」
声がした方を見ると、ノイズさんが顔を覗かせていた。これには先輩も驚いたのか、ノイズさんの方を見たまま反応がない。
「ノイズさん……どうしてここに?」
「あっち行ったらリアルしかいなくってさ♪ ラグに用があったから探してたの」
「………? 俺にっすか」
「そ。俺っちが用ある訳じゃなくて……伝言頼まれた」
ノイズさんはそう言うと、先輩の耳元で伝える。私の方までは全く聞こえず、何を話しているのかさっぱりだ。
ノイズさんが先輩から離れると、先輩は少し困ったように顔をしかめた。
「…………えっ? もう?」
「その反応を見る限り、また手を貸してるな~? どこに加担しようとラグの勝手だけど、あまり無茶するなよ」
「別に無茶してません。いつものことですし……俺はこれで失礼します。サファ、明日も同じことするからな」
それだけを言い残し、修行場を出ていった。残された私は驚きのあまり、開いた口が塞がらなかった。
「あ…あれをまた明日もやるのぉぉぉ!?」
「あははっ♪ サファも大変みたいだな♪」
ノイズさんは笑っているが、私にとっては死活問題なのではなかろうか。明日は絶対、筋肉痛でひいひい言いながら特訓することになるだろう。……そんなの願い下げなんだけど。
「そういえば、ノイズさんは今、帰ってきたんですか?」
「ん? いやいや、もっと前から帰ってきてたよ? ギルドに来たのは今だけど、寮に戻ったのは大分前」
「そうでしたか……あう~…むりぃ~」
「最初はそんなもんだよ。慣れれば楽になるさ」
その慣れが来る前に私は過労死しそうです。
「ははっ♪ サファを見ていると新人だった頃を思い出すな。皆そんな感じで先輩達に指導されたもんだよ」
「それじゃあ、ノイズさんもですか?」
「まあね。当時は厳しすぎて死ぬかと思ったくらい」
それを乗り越えて今がある……ということかな。はあ……先は遠いよ…
べたっとへたりこんでいると、ノイズさんが手を貸してくれた。そして何とか立ち上がると、やっとギルドの方へと戻るために歩を進める。昼前に特訓を始めた気がするが、もう少しで夕方になりそうだった。意外と長いことやらされていたもんだな。
そういえば、先輩はもう、ギルドには帰ってこないのだろうか。そのことが気になったため、ノイズさんに質問してみることにした。
「ノイズさん、先輩、どこに行ったんですか? また加担してるって……どういう…」
「ん? サファにはまだ早いかな? いつか知ることが出来るよ」
あ、はぐらかされた……
「強いて言うなら、ラグは色んなところに糸を張っている。だから、必要とされれば、ギルド外の仕事も受けるのさ。いわゆる、何でも屋、みたいな」
「つまり、ギルドの仕事以外に他の仕事もやっている、ということですか?」
「今はそんな認識でいいと思うよ」
うーむ……先輩についてはまだまだわからないことだらけだなぁ……これから、少しずつ知っていけるのかな。
私とノイズさんは談笑しながら、ギルドに戻っていった。



~あとがき~
無理矢理終わらせた感ヤバいっすね。すみません。

次回、ラグを呼び出した人物とはぁ!?

ラグさんはギルド以外でも色々頼まれることがあります。いや、簡単なお手伝い~とかそういう感じのではなく。
ま、そういうところもこれから紹介できればと思っています。はい。

特に言うことなし!

ではでは。

last soul 第18話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~戦い方は人それぞれです~


「………技、ですか。でも…」
「使える使えないの問題じゃねぇんだよ。使えるようにしないと、お前が死ぬだけなんだからな」
私が続きを言う前に先輩はストレートに正論をぶつけてきた。そりゃそうだ。戦いの手段を知らなければやられるのみ。……なのは、わかっているんだけれど。
「仮に使えるとして……どう頼るんですか?」
「技で相手の動きを制限したり、予測したり……だな。そういうのは、殺しの技術でやってもらいたいんだが、無理だってのが昨日のではっきりしたから」
あう。
先輩はどこからか取り出したナイフを弄びながら、私達に向き合った。そして、くるりとナイフを回し、私に向けた。
「これから俺が教えてやる。短剣の使い方もな」
「サファさんは短剣使いってことですか」
「一番ましだったからな」
先輩は、半ば諦めているかのような声でリアルくんに説明をした。それは仕方のないことだとはいえ、軽くヘコむのはおかしいだろうか……
「えっと、技を使うことはおかしいことじゃないですからね。特にサファさんのようなエスパータイプなら」
リアルくんのフォローに私は驚きを隠せなかった。私の反応に気が付いたのか、リアルくんは私に説明してくれた。
「俺もシリアも電撃を使うことがあるので。なので、珍しい話ではないんです。……ですよね、ラグ兄」
「まあな。相手の動きを鈍らせるのは一般的な考えだし……ま、俺には有効な技がないが」
「ラグ兄には“どくどく”があるじゃないですか」
リアルくんに言われると、そうだけど、と小さく呟いた。先輩はあまり、技を補助として使うことがないのだろうか。
「でも技に頼る時間がもったいないじゃん。それなら、有効な技を覚えるより、殺しの技を覚える」
「ラグ兄はそれで調律されていますけど……全員が全員、そういうわけではありませんしね」
「…………そりゃそうか。現に目の前にいるし」
先輩はそう言うと私の方をじっと見てきた。妙に納得している感じなのが腹が立つが……事実なのだから仕方がない…か。
「とりあえず修行場に行くぞ。今日は簡単な扱い方だけでもマスターさせてやる」
「あ、はい……」
私と先輩はリアルくんをその場に残し、部屋を出た。リアルくんは頑張って、と言うように笑って送り出してくれた。
昨日が散々な結果だったから、全く気乗りしない。しかし、先輩は私を気遣う気がないのか、くるくるとナイフをペン回しするかのように扱っていた。滅茶苦茶危ないと思うのだが、落とす気配は全くない。
先輩みたいに、とはいかなくても、どうにか戦えるくらいにはなりたいと思う。……思うけど…私はまだ、この仕事のことをきちんと理解したわけではないのだ。恐らくそれを理解するのは、自分の目で実感したあと……そんな気がする。

修行場につき、早速、短剣の使い方を習うことになった。短剣、と言ってもやはり色々な種類があるようで、先輩がずっと弄んでいたナイフはもちろん、それよりも小さいやつもあれば、大きいものもある。私は先輩が持っていたやつより少し大きいものを手に取った。
「………そもそも、短剣とナイフは別物なんだよな」
「え? 同じなんじゃないんですか?」
「お前が持っているのは短剣だよ。……俺の持っているのはナイフ。それの区別はわかるか?」
「いや、全く。短剣=ナイフって思ってました」
「……短剣は“dagger”だ」
だがー?
「発音悪いな……まあ、いいけど。短剣は対人用武器のことを指し、ナイフは日常的刃物を指す。短剣には諸刃が両面にあるけど、ナイフは片方だけなんだ。ほれ」
先輩が差し出したナイフの刃の部分を見てみると、確かに片方にしかついていたない。よく見る包丁とかそんな感じのやつだ。包丁よりは小さいナイフだけれど、よく見れば違うのがわかった。私がうなずくのを確認し、またナイフをくるくると回しながら説明を再開した。
「実を言うと、短剣って殺傷能力が低いんだよな。主にサブとして使われることが多い。接近武器だし、それなりの技術もいる。接近戦になるだろうから体術も覚えた方がいい」
「そんな大変な武器を私に……?」
「暗殺において、一般的には銃が適していると言われている。けど、お前が使えないんじゃ仕方ないだろ。文句言うなら自分の能力の低さを恨め」
あう。まあ、銃が適しているのはなんとなくわかりますけど……
「ま、人それぞれの向き不向きはある。それに俺は使い手によって、暗殺に適している武器、というのは変わると思っている。俺にはどれがいいかなんてわからないからさ」
先輩には選択肢が沢山あるみたいですしね。……そりゃ、そうなりますよね。
思いきり嫌味たっぷり&皮肉たっぷりを込め、言ってやるが、ラグ先輩は全く動じず、知らんぷりされた。反応がないと、恥ずかしくなってくるから不思議である。
というか、今の私、滅茶苦茶子供っぽい……
「基本動作、構えは教えてやる。そこからどうするかは……わかっているな?」
はぁい……頑張りまーす…
私のやる気のない返事に、先輩は無言で私の後頭部を叩いた。更にじろりと睨まれ、私の立場はないことを確認させられた。
しかし、さっきの説明からすると、私みたいな運動神経ゼロのやつに扱える代物なのだろうか。無理なように聞こえたのは私だけなのだろうか。
いやいや、弱気になるな自分! 先輩が選んだのだから、まだましな方なんだろう。そこから私がどこまで伸びるかが問題なのだ。頑張れ、私。負けるな、私!



~あとがき~
修行シーンとか書くのめんどいので、簡単にやっちゃいたいと思います。描写少なかったら、想像力を働かせてくださいn((殴

次回、ラグとサファで修行とか。メンバーの実力の話とか。次の章への布石とか。

運動神経ゼロのサファにラグはどうするんでしょうね。なんだかんだ、ラグの悩みの種になりそうです。サファが。

ラグは自分の技を出すより、武器で戦った方がいいと思っています。さらに、技だけって言われると、ラグの戦闘力半減すると思ってください。……打撃戦ならいつも通りなんですけどね。
半減つっても、元がすこぶる高いので、半減していても、常人以上だと思いますがね。
サファはこれからに期待です。……え、心配? うん、私もだよ!

ではでは。

last soul 第17話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~みちしるべ~


朝ごはんを食べ、コウくんと途中まで一緒に歩いていた。今日は平日だから、コウくんは学校へ行かねばならない。そんな学生であり、ギルドの先輩でもあるコウくんに昨日のことを相談してみることにした。
「なるほど。武器か~……んー…こればっかりは練習あるのみだと思うな。……んでも、そんなにコントロール出来ないものなの?」
「そんなの、私が知りたいよぅ……そりゃ、体育の成績、二ばっかだったけど」
「姉ちゃん、体育そんなに出来なかったっけか?」
「胸張ることじゃないけど、運動オンチだよ!」
「誇らしげに言うね、姉ちゃん」
そうでもしないと、心折れそうなんだもん。
「んー……俺はね~……って、参考になんないけど、俺の家系は銃を使うのが上手なんだって! だから俺も銃使いなんだ♪」
けど、コウくんって、剣も使うって聞いたよ?
「そだよ~♪ それは新しいこともしたいなーって思って教えてもらった。んで、思いの外、上手く出来たから、一緒に使ってんの」
そうなんだ。やっぱり、親の遺伝ってのあるのかな。私、ないのかもしれない……
「そこはどうなのかわかんないけどね。父さんが何使ってたか知らないもん」
いや、それにしたって、おばさんがそうなんだよね。その遺伝があるのでは……?
コウくんは少し考える仕草を見せたが、結局、わかんない♪ と言われてしまった。当たり前と言えば、当たり前の反応なのだが。
「あ、じゃあ俺、こっちだから♪ 今日はギルド寄って帰るから一緒に帰ろー!」
「わかった。じゃあ、ギルドでね♪ 学校、頑張ってね」
「うん! いってきまーすっ!」
コウくんに向かって手を振りながら、これからのことを考える。
さて、頑張らなきゃ……どうすればいいのか知らないけど。

「おはようございまーす……ってあれ、リアルくんだけ?」
「あ、おはようございます。サファさん。ラグ兄はまだ来てませんよ。ノイズ兄は午後からですね」
ギルドに来てみると、他のメンバーはおらず、リアルくん一人だけだった。ここが広いだけに一人だけ、というのはなんか寂しく感じる。元々、メンバーが少ないのもあるのだろうけれど。
「昨日はどうでした?」
「駄目でした……こんなに運動オンチだったとは思えないくらいの駄目っぷりだったよ」
「れ…練習すれば……なんとかなるかと」
「ここにいる人達、全員、親から受け継いでるとかそんなんでしょ? あ、先輩は違うんだっけ? いやでも、言ってないだけかもだしなぁ…」
リアルくんの近くに座るなり、机に突っ伏した。先輩が来るまでこうしてよ。
「あの………俺とシリア、一般人でしたけど」
「へぇ~……………えっ?」
「いや……その、親とかそういうのじゃなくて、望んでこの世界に来たっていうか…」
リアルくんの告白は驚くなんてもんじゃなかった。私みたいに関係ないところから、この世界に飛び込んだ……なんて。
その話を聞く……なんて不謹慎…かな。
「いいですよ。別に」
「えっ! でも…」
「俺は平気ですよ。でも、話すなら、俺の過去話もついでに聞いてください。繋がるんで」
にこりと笑い、リアルくんが自分のことを話始めた。私が聞いたとはいえ、本当にいいのだろうか。
「……俺達、一応、兄妹なんです。けど、見ればわかると思いますが、俺とシリアは本当の兄妹じゃないです。父親が同じなだけで、腹違いの兄妹、ということですね」
何か事情があるのかな。離婚したとか……?
「んと、俺の父親がだらしない人で……女遊びが激しいというか……十八禁並の話になるんですよ。例えば、家に連れ込んで女の人と………ね?」
私、十八歳じゃないから、わかんないかな~? けどまあ、壮絶人生なのには変わりないか。
「まあ、でき婚ってことで、収まればよかったんですけど、父親の女遊びが収まるはずもなく、俺の母親は出ていきました。俺は母親の顔は知りません。知りたいとも思わないけれど」
お…お父さん……こう言っちゃなんだけど、駄目な人なのか!
私の反応に少し笑みを見せると、話を続けた。
「ま、そのあとすぐ、シリアの母親と結婚して、シリア産んで……でも、同じことの繰り返しでした。そこで父親は俺達のことを捨てたんです。多分、邪魔だと思ったんでしょうね。……父親は多額の借金もしてて、それを俺達に投げました」
……リアルくん。
「それでもよかったんです。あの人に思い入れなんてなかったし。けどまあ……借金取りに追われたり、悪い人達に追われたり、大変でしたね」
淡々と昔話を話していくリアルくんが大人だな、と思うのと同時に寂しいと思った。確かに話を聞く限りいい人に聞こえない。酷い人だと思う。しかし、そこではなく、リアルくんの心情が掴めないことに少し、恐ろしく思う。
「しかし、児童施設に入ってからは結構平和だったんですよ。……でも、いつだったか、悪い人達に捕まったんです。そのときは、シリアはいなくて、俺だけでした。本当、たまたまだと思います。それで廃墟に連れてこられて、拳銃突きつけられたときは、このまま殺されるんだろうなって」
なっ!?
「でも、ラグ兄が助けてくれたんです。……あっちは俺がいることに気づいていなかったみたいで、驚いた顔してましたけどね」

『………子ども? こんなとこで何して…』
『あ…あの……』
『えっ……と…その………あ、見られてた。うへ。どーしよー……怒られる~…』
『! ごめんなさい! 俺のこと……殺しちゃうんですか……?』
『あっ………んと……いや、お前、被害者だろ。巻き込まれただけっぽいし……加担してないなら別に殺す理由はない。が、このまま帰すわけにも…』
『!? ご…ごめ……』
『いやいや!? 泣くなよ! 大丈夫だから。つか、こっちこそごめん……敵に紛れてて、気付かなかった……って言い訳してんな……俺。悪い、怖かったろ?』
f:id:nyanco-sensei:20141005214146j:plain

「そう言って、ラグ兄は俺に向かって手を差し伸べてくれました。『大丈夫だ』って何度も言いながら、笑顔を向けてくれました。多分、ラグ兄なりの励ましだったと」
何だろ……先輩、優しくね?
「そのあとは、ラグ兄の簡単な事後処理が終わるのを待ってました。正直、ラグ兄があのとき、何をしていたのか全く覚えてません。ラグ兄は殺さないって言ったけれど、当時の俺はこの人に殺されるってずっと思ってましたから」
恥ずかしそうに笑う、リアルくん。
そりゃまあ、目の前で人が何人も殺されて、自分も殺されるんじゃないかってずっと思っちゃうよな。
「えぇ……でも、ラグ兄の言った通り、殺しませんでした。ギルドに連れていかれて、マスターと会いました。そこで勧誘されたんです」
「唐突だね!? おばっ…じゃなくて、マスターはどんな意図でそんなことを?」
「俺が口外しないかしばらく監視するためかと。ラグ兄は無理に来ることはないって言ってくれたんです。でも、次、同じことがあれば、手段を持たない俺は死ぬんだろうなって」
あぁ……そうか。リアルくんは…
「それに今回は俺だけだったけれど、次はシリアもいるかもしれない。シリアには同じ目を合わせたくなくて。……だから、俺は強くなりたいって思いました」
リアルくんには護るものがあるんだ。だからこんなにも過去と向き合って強くなろうと努力出来るんだ。シリアちゃん、という大切な人を護るためにここにいるんだ。
「俺がここにいるのは、自分を守るため……シリアを護るために……だったんですけど、シリアもなぜだか一緒に入るはめに…」
そういえば……そうだな。シリアちゃんはどうやって接点を持ったんだろう?
「借金取りやらから守る、とマスターが提案して……それでシリアには内緒で俺だけブラックに所属するって約束だったんですが、シリアが嗅ぎ付けて………押しに負けて…」
シリアちゃん、強い。
私の呟きにこくん、と小さくうなずいた。
「まあ、ざっとこんな感じですね。……そこから俺はノイズ兄から剣技を学びました。剣技、と言っても、刀なんですけどね」
ほへ~……んでも、意外と先輩って優しいんだな。私にもたまに優しい感じの見せてくれるけど。
「ラグ兄、根は優しい人ですから。いつもはぶっきらぼうというか、人を寄せ付けませんけど、こちらから近寄れば避けませんしね」
そうなんだ。よし、自分から押していこう。
私が決意していると、リアルくんは、頑張って、と言うように笑ってくれた。
私とリアルくんはしばらく、雑談のようにずっと話をしていた。恐らく、一、二時間くらいだろうか。部屋の扉が開き、先輩が欠伸をしながら入ってきた。
「先輩っ! おはようございます!」
「朝からうっさい」
あうっ……
「ラグ兄、遅かったですね。何かあったんですか?」
「ん~……色々考えて寝落ちした。けどまあ、技術に頼れないなら、技に頼ることにした」
技術も技も同じなのでは。
「お前、エーフィだろ? エスパータイプの技に頼るしかねぇだろ」
あぁ……そっちか。
でも、私、何か技とか使えたっけ?



~あとがき~
久しぶりの挿し絵……なのかな。
なんかもう適当になってきてるし、なくてもいいかなって思い始めている私です(笑)

次回、ラグがサファに戦い方伝授するよ!

リアルとシリアはまあ、別種族なので完全に血が繋がっているわけではない。……のは、見ての通りなんですよ。で、なんでそうなったかってのをつらつらと書いてみました。……もう少し考えろって感じですね。ごめんなさい。
ま、結構複雑環境にいる二人なんですね~
それは他の皆もそうなんだけど。

ではでは!

last soul 第16話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~実力と夢~


外はもう夜だろうか。ここにいると、時間経過がわからない。が、今はそんなことを考えている余裕はなかった。そんな私の周りには無造作に武器が散らばっていた。危ないと思うだろうが、全て安全な状態のため気にしなくて大丈夫。
私は手と膝をつき、ようは四つん這いになった状態のまま動けなかった。先輩はどうしているのかわからないが、多分、先輩も放心状態だろう。
武器と格闘し、わかったことがある。
私、運動神経ない!
これだけあれば、少しは出来るものがあると思っていたが、その予想を反し、全てにおいて散々な結果を産み出していた。
例えば、銃………は、先程のあれを先輩に言ってみたら、即却下された。次に剣はよろめいていて危ないと止められ、刀も同様の理由で却下。飛び道具は全くのノーコンで話にならなかった。槍は回せず、回ったと思ったら、手元が狂って、先輩の目の前に飛ばしてしまった。(まあ、先輩は飛んできた槍をかわしていたけど。)鞭にいたっては、自分に絡まる始末。もっと酷いことになっていたが、言いたくないので、省略させていただくけれど。
「私って………私って…」
「あそこまで駄目なものか………練習すればなんとかなるか? いやなんか……そんな次元じゃないよな………これからどうしよう。唯一ましと言えるのは、短剣だったが……接近戦ってのがな」
接近戦……あの有り様で接近戦は……
私と先輩のため息が同時に漏れた。そして先輩は若干の疲れを見せつつ、私に近付いてきた。
「サファ、今日はもう帰れ。色々やって疲れたろ? 武器の件はこっちでちょっと考えてみるから」
「…………すいません。お疲れ様でした…」
「おう。気を付けろよ」
ふらりと立ち上がり、出口へ歩く。先輩はまだ残るのか、周りにある武器を手に取りながら、ぶつぶつと何かを言っているのが聞こえた。
「……はあ………どうしよう…ガチで」
………笑えないけど、笑うしかない。
私、ここでやっていけないかもしれない。

家に帰ってきて、誰かに相談する気力もなくベッドに倒れこんだ。
「いや、確かにあれだよ?……体育の成績、ギリギリだったけど………あそこまで駄目なものなんだろうか。もう少し出来てもいいんじゃ~………って、このままだったらどうしよ」
この前、ノイズさんの約束したばっかりなのに。このまま私が武器を扱えないってなったら、ギルド辞めさせられるのかな。そうなれば、ノイズさんとの約束が……いやまあ、あれだよ? ある意味、こういう仕事はやらない方が身のためなんだろうけれど。いやいや、もう頑張るって決めたのにそれはないよ。うん……どうしよ。
ベッドの上でごろごろしながら考えるものの、いい案が思い付くはずもなく。べたっと広がり、うつ伏せになりながら顔をあげた。
「…………もう寝よう」
考えることも嫌になり、ベッドに潜った。先輩が言っていた通り、疲れていたのかすぐに寝てしまった。

こわい。おかあさん、おとうさん、どこ?
いたい。あつい。わかんないよ。
どこを見ても真っ赤で出口もどこだかわからない。出たくても出られない。
目の前に誰か来た。何かを向けている。それが何か知っている。当たれば死んじゃうんだ。だからといって、逃げようとしなかった。怖くて、逃げられなかった。死ぬと思った。ここできっと、終わりなんだと。
けれど、終わらなかった。
また人が来た。その人がやっつけた。私の前まで来て、手を差しのべた。私とよく遊んでくれる、大好きなお兄さんだった。
「ほら、もう大丈夫。一緒に出よ」
おかあさんは? おとうさんは? どこ?
「きっと大丈夫だから……行こう」
やだ。やだ。おかあさんとおとうさんのとこ、いく。つれてって。
「駄目。俺と一緒に出るんだ」
やだ。おねがい。いかなきゃだめなの。
「駄目なものは駄目なんだ。頼むから、言うこと聞いてくれ」
やだ。おかあさんにあうの。おとうさんにあうの。たすけるの。
「…………ごめん」
無理矢理引っ張られ、抱き抱えられ、私の行きたい方向とは逆へと走り出す。
やだ。やめて。こっちじゃない。あっちにいる。つれてってよ! ひとりはやだよ!
「………ごめん。ごめんな」
お兄さんはずっと謝って私を外へと連れ出した。中とは違って、息苦しくなかった。
「俺、あっち戻る。この子頼んだ」
「おい、やめとけ! お前も怪我してんだろ。死ぬぞ!?」
「大丈夫。死なないよ………それじゃ、よろしく」
お兄さんは私を知らない人に預け、戻っていく。私が手を伸ばしても届かない。
おにいさん、まって。わたしもいく……おかあさんとおとうさんにあいたいよ。
中に戻る直前、お兄さんはこちらを振り向き、いつもの優しい笑顔を見せてくれた。
私が見た、最後の笑顔だった。

「………ねーちゃーん? ねーちゃーん? あーさーだーよー?」
「………………ん。うわあぁぁぁ!! ちかっ! コウくん、ちかっ!!」
「だって、いつも起きてくる時間なのにさ、起きてこないんだもん。何かしてやろーかなーって考えながら起こしたんだぜっ!」
ドヤ顔をしながら、ピースを向けてきた。私は呆れつつも、起こしてくれたことには変わりない。コウくんにお礼を言い、一緒に部屋を出た。
「姉ちゃん、今日はのんびりだったね。いい夢でも見てたのー?」
「へ? んー……夢は見てたと思うけど、どんなのか忘れちゃった」
「そっか。ま、いっか♪ 朝ごはん食べよー」
「うんっ」
うーん……どんな夢だったっけなぁ……思い出せない。つまり、そこまで重要なことじゃないんだな。うんうん。というか、夢に重要性なんてあるものなのかな。
さて、今日こそは私の武器、見つけなきゃ!



~あとがき~
さあって、ほぼ扱えていなかったサファちゃん! これからのギルド生活どうするんでしょうね!

次回、ラグが打開策考えている間に、サファとリアルがもう少し仲良くなります。
リアルの過去を話したいね。

途中にあった、回想(?)はサファの夢なのか、はたまた、誰かの思い出話なのか………それは今後に関わるはずさ。
………お兄さんって誰なんだろうね。
すでに出ているかもしれないし、新キャラさんかもしれない。それはご想像にお任せします~

ではでは!