鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第14話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~用事と事実~


サファと別れ、街を一人で歩いていた。仕事のときと格好が違うものの、ギルドで見知った人には普通にバレバレのようで、ちょいちょい挨拶されていた。
ラグは、面倒だなと思いつつ、かといって、関係を壊すのも本心ではないため、軽く返答しつつ目的地を目指す。幸いにもそこまで知り合いに会うこともなく、辿り着くことが出来た。
「ふぅ…………ルピナ、いるだろ?」
「あ、ラグくん。こんにちは~♪ なんか久し振りだね。んと、今日は何をお探しですか?」
ルピナ、と呼ばれたツタージャは頭に花飾りを着け、両腕には花束が抱かれていた。優しそうに微笑みかけるルピナに対し、ふいっと目線を外す。そして、不機嫌そうに皮肉を込め、敬語で話を続けた。
「分かってて聞いてますよね、ルピナさん?」
「うふふっ♪ 分かる? じゃあ、少々お待ちくださいね。お客様♪」
「意地悪だな、ほんと」
「ラグくんほどじゃないもん。どうせ、先輩さん達をいじめてるんでしょー? 駄目だよ、そんなことしちゃ」
「なっ!……いや、最近はしてないし」
「またまた~♪ あ、そこ座ってていいよ」
ルピナに勧められ、ラグは近くにあった椅子に座った。その様子を見て、ルピナはクスリと小さく笑った。聞こえていないだろうと思ったが、ラグと目があったため、聞こえていたか、と舌を出した。
「そんなことより、お前は仕事しろっての」
「えー? してるよ。私、お花屋さんだもん」
「そういうことじゃ……あぁ、もういい」
「ふふ♪ やっぱり、私には勝てないみたいだねっ」
「お前と性格が合わないだけ。それに勝とうとか思ってない」
「強がってる♪」
「ねぇよ! ほら、土産欲しいなら、しっかりと役目果たしてもらおうか」
先程、店で買ったケーキが入った箱をちらつかせる。ルピナは過剰に反応を見せ、作っていた花束そっちのけで、ラグに近づいた。
「ラグくぅん! それ!! くれるの!?」
「欲しかったらそれなりの対価があるんじゃない?」
「大丈夫! いつも以上の花束を作るよっ♪ お姉さんのためのでしょ? それなら、私も力を入れちゃうよ」
「………分かってんじゃん」
ニヤリと笑って見せ、再びルピナから視線を外す。ケーキを見せられたためか、ルピナは鼻歌を歌いながら花束作りを再開した。そんなルピナに苦笑を漏らすものの、それくらい嬉しいものなのは、ラグ自身もわかっていた。
「……よし、完成っ! ラグくん、どうぞ♪」
ラグはルピナから手渡された花束を見た。白とピンクの二色で可愛らしく作られた花束に仕上がっている。そして、花束と同時に渡された白い封筒を見て、少し瞳に影が落ちた。
「あ、それは別件」
「………あぁ」
「今回のは……ラグくんが望むものだと思うよ」
「なるほど。それで、今回は誰か来んの?」
「うん。ヘラ様がね」
「ふうん……ついにあの人が動いたか。けど、そこまでの奴か? 俺一人でもどうにでもしてやるけど」
「きっと動くのはラグくんだけだと思う。あの方はあくまで策士よ。本気で動くことはない」
ルピナはにこりと笑う。それを見てラグはふるふると首を振り、気持ちを切り替えた。
「…………それもそうだな。んじゃあ、そろそろ行く。ほれ、例のやつ」
「わーいっ! ケーキだー♪ ラグくん、また遊びに来てね~」
「用がない限り来ねぇよ」
「むっ……意地悪。けど、それがラグくんなんだよな。仕方ないか」
「よくご存知で。……邪魔したな」
ひらりと軽く手を上げ、ルピナの店を後にした。そして、次なる目的地へと向かった。

しばらく歩いてやって来たのは、町外れにある野原。人の気配もなく、ここだけぽっかりと別世界のように感じた。ラグは立ち止まって周囲を見るが、すぐに歩みを再開させる。
「……久し振りだな。ここ」
花束を片手にルピナから受け取った封筒を弄びながら、小さく呟いた。
そして、野原を抜け、崖の上に出る。ふわりと優しい風が吹き抜けていった。そこから見える風景は近代的な街などは見えず、植物の緑と空の青が幻想的な風景を生み出していた。
ラグは、崖の先にある墓石の前にしゃがみ、花束を置いた。しばらくそのまま黙っていたが、その場に座り語りかけていく。
「……最近来れなくてごめんなさい。ちょっと立て込んでたというか、忙しくてさ。けど、俺は元気だから。もちろん、他の皆も」
そこまで言うと、ラグは立ち上がり優しく微笑んだ。
「だから、心配しなくていい。……あと、もう少し待ってて。きっと俺が終わらせてみせるから………それじゃ、また来ます」
軽く頭を下げ、来た道を戻っていった。そしてギルドに向かうため、足を進めた。

ノイズさんと一緒にまたいつもの部屋に戻ってきた。部屋に戻ると、リアルくんが椅子に座り、本を読んでいるのを見つける。仕事から帰ってきたのだろうか。
「リアルくんっ!」
「……………あ、サファさん。ども……ノイズ兄も」
「おう。仕事終わったのか?」
「はい。まあ………一応。今日のは普通の依頼だったので」
ここで言う、普通とはどちらを指すんだろう。
私が首をかしげていたからか、リアルくんが気付いて説明してくれた。
「普通のって、そのままの意味で……表の仕事のことです。サファさんは見ましたか? ここの掲示板」
「それなら、少しだけ見たよ。色々あったのを覚えているけれど、詳しくは見てないな」
「見てくれたならわかると思います。そこに載っている依頼のことです」
何があったっけ……? 人探しとか、届け物とかだっけ。あ、護衛とかもあったかな。
「はい。それであってます」
リアルくんはにこりと笑い、肯定してくれた。先輩とのギャップがあって、なぜかこちらの方が嬉しく感じる……リアルくん、優しい。
「んー……私、裏の組織だから、普通って暗い方の方だとばっかり思っていたけれど、違うんだね」
「そんなのばかりやってたら、病んじゃいます。少なくとも俺はそんなのごめんです」
「そりゃ、そうだよな。誰だっていい気はしないと思うよ。俺っちもやだし。それに日常化してしまったら、取り返しのつかないことになるからな」
取り返しのつかないこと……?
「殺すという行為が日常化してしまったら、戸惑いがなくなる。そりゃ、仕事だし、戸惑いはない方がいいけれど、本当の意味でなくしちゃいけないものなんだ」
ノイズさんの真剣な顔に大変なことを聞いた、という実感が湧いてきた。リアルくんも少しだけ真剣な目付きで、私を見る。
「もし、殺すことに快感を覚えてしまったら? そのことが日常化して、セーブをかけられなくなり、人の血を欲するようになる。……そうやって壊れてく人もいるんです」
「言いたくないけど、この道長いから、そういう奴ら死ぬほど見てきた。壊れた奴らの末路も知ってるつもりだ。サファも覚えときなよ~…………って、サファ? 大丈夫??」
ノイズさんに覗きこまれ、ハッと顔を上げた。二人が先程と違い、心配そうな顔をしていた。心配させるような顔をしていたのか。ヤバイヤバイ……
「あっ…………はい。なんか怖い話だなって」
「ごっ…ごめんなさい! 怖がらせるつもりは全然なかったんです」
「ううんっ! きっと近いうちに知らされていたよ。大丈夫」
先輩から色々聞いてはいたけれど、それはほんの一部に過ぎない。今、ノイズさんやリアルくんが言っていることも事実。けれど、これもきっと一部に過ぎなくて。他にも知らなきゃいけないことは多いはず。
少しずつでもいいから、知っていかないといけないんだな……
「ま、今のサファじゃ心配しなくてもいいか」
「え? 何でですか?」
ノイズさんの言った言葉の意味を理解したのか、リアルくんもくすりと小さく笑った。
「確かにそうかもしれません」
「えっ? えっ? 何の話?」
「だって、今のサファ……なあ?」
「ですね。今のサファさんなら………です」
何の話だろう……全くわからない。
考えていると、ガチャ、と扉の開く音が響く。そこから、欠伸をしながら先輩が入ってきた。先程、外で見た格好とは違い、いつもギルドで見ている格好になっていた。ここに来る前に家に寄ったのだろうか。
「ラグ兄、こんにちは」
「ちはっす。三人揃って何してんだか……暑苦しい」
「どこがだよ。三人集まって話してただけだろ? もしかして、自分だけ入れなかったことを悔やんでんの?」
「ちょっとノイズさんの言っていることがわからないっすね。誰が何だって?」
「………もういいです。ごめんなさい」
ノイズさん、折れるの早い……
あ、そうだ。先輩に今の話を聞いてもらおうかな。心配しなくてもどうのってやつ。
直で冷蔵庫に向かって、ロールケーキを取り出している先輩に今の話を簡潔に……というか、私なりに伝えた。先輩は準備する手を休めることなく、更に無表情で答えを放ってきた。
「そりゃお前……殺す手段持ってねぇじゃん。心配も何もないだろ」



~あとがき~
今回は色々詰めこんでいますね~……大変だ。
新キャラもちょいちょい出てきてますね。

次回、ケーキ食べながら、武器について色々考えます。
プロフに書いてあるけどね(笑)

ラグが受け取った封筒については、近いうちに明らかになると思いますよ~♪ あと、誰のお墓なのかも。
ルピナがお姉さんって言っていた人なので、女の子には違いない……はずだ。オネェとか特殊じゃない限り。
んーと、いわれる前に言っておこう! ルピナとラグはできてないよ! 二人のお相手は別々にいるはずさ……きっと。

別に二人はサファのことをいじめているわけではないです。脅しているわけでもない。が、そういう世界なんだよって言っているだけなんです。だから、責めないでね!

ではでは!

last soul 第13話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際にはご注意ください》





~お願い事は相手を選ぼう~


ノイズさんに開けてもらい、部屋へと入った。そしてすぐさま、ケーキを冷蔵庫に仕舞うため、ドアを開ける。冷蔵庫の中は思ったよりも片付いており、飲み物やお菓子類が入っていた。飲み物はともかく、お菓子は先輩のだろうか?
「そこに入ってるの、市販のは誰でも食べて大丈夫よ。……ん? それだと語弊があるか。チョコとか菓子類は大丈夫ってことな」
冷蔵庫を覗いていた私の後ろからノイズさんが教えてくれた。菓子類は、と言われても今はそれしか見当たらない気もするのだが、他にも入っているときがあるのだろう。
「ケーキとかプリンとか……なんかそういう系はラグに了解取らないとヤバいから。今日は入ってないみたいだけど、たまに入ってるときあるから、食べちゃ駄目だから」
お菓子屋さんというか、ケーキ屋さんに売ってる感じのが駄目ってことかな。でも、それを食べたらどうなるんですか? 了解取らずに黙って食べたら……どうなるんだろう。
「知らなくていいこともあるんだよ、サファ」
意味深な笑顔を向けられ、これ以上踏み込んではいけないことだと悟った。流石の私でも悟る。今回の様子を見ていれば、先輩の逆鱗に触れる内容だとわかるものだ。
「……それじゃあ、仕舞っておこう。それと、ノイズさん。関係ないんですけど…」
「登録でしょ? それもラグから聞いてる。うし、やろっか」
「はい! お願いします♪」
ノイズさんに連れられ、別の部屋にやって来た。その部屋は沢山のコンピュータが並べられ、一気に別次元に来た気がする。……もちろん、そんなことはないのだが、コンピュータ関係に疎い私にとって、居心地の悪さと言ったらない。
ノイズさんは迷うことなく、近くの席に座り、カタカタと素早くキーボードを叩いていく。何をしているのか全く見当がつかないが、登録してくれている……のだろうか。
「………っと。これで大丈夫だと思う。入るためのパスワードはこれな」
メモを渡され、見てみると、特に意味のない数字の羅列に見える。語呂合わせでもないようだ。これは覚えるまで時間がかかりそうだ。
「そのパスワード、忘れないでね? 一人一人違うもので本人ですよって証明にもなるから。んで、入るときに必要なものがあと一つあるんだけど……わかる?」
「えっと………もしかして、証明証?」
「ご明察。それとパスワードが鍵って感じ。証明証とパスワードが一致しないと入れない仕組みなんだ」
かなりハイスペックなセキュリティシステム……
首にかけてある証明証と手元にあるパスワードが書かれたメモを見る。この二つがない限り一人では入られない……ということか。それくらいしないと駄目ってことにもなるか。
「んま、一緒に入って侵入することも可能だけど、ある意味、死にに来るようなもんだな。それに、メンバーの裏切り行為は死刑に値するからな~……サファも覚えといて」
ノイズさんが一瞬見せた笑顔にゾクッと寒気がした。
裏切り行為は死を招く。興味本意で訪れてはならない場所……それがここなのか。裏組織ブラックか。
何度も言ってる気もしますが、とんでもないところに来ちゃったな。
「色々言ったけど、そんなに気を張らなくても大丈夫。そこまで厳しくないし、怖いこともないから。ラグとコンビ組んでるなら尚更だ」
「? どういうことですか?」
「だって、何でも一人でやっちゃうからな。殺しの仕事も……つか、あれは基本一人だけど。それに限らず、普通の依頼だって、気づいたら勝手に終わらせてんだぜ? 組んでるこちらはやることないってもんよ」
うわ~……ありそうで怖い。あ、あるからノイズさんは言ってるのか。
ノイズさんは目の前のコンピュータをチェックしているのか、ディスプレイを見ていた。私は再度この部屋を見回す。
ほぼコンピュータしかない部屋ではあるが、書類をまとめてあると思われるファイルが多く並べてある本棚。こういうのもデータでまとめてしまえばいいのに、と思うが、データが消えてしまったら元も子もないのだろう。アナログとデジタルの活用ということか。
他に目につくものはないが、結構殺風景に思えた。
「あ………ねえ、サファ? ラグがどこ行ったか知ってる?」
「いえ……何も言ってませんでしたけど。ノイズさんは聞いていないんですか?」
「…………聞いてないけど、今、わかった」
少し辛そうに顔を歪めた。理由がわからず、私は首をかしげることしか出来ない。とりあえず、声をかけてみる。
「ノイズさん……?」
「不覚。先越された……まあ、いいけどさ。さて、戻ろうか。こんなところ、楽しくないっしょ」
先程の表情は跡形もなく、いつもの笑顔に戻っていた。さっきのは何だったのだろう? しかし、そんなことより、ノイズさんの的確な指摘に戸惑う。確かに、この場所は私にとって楽しくはない。ここはお世辞にもそんなことないです! と、言った方がいいのか? いや……無理だ。私にそんな嘘をくつスキルはない。となれば、とる行動は一つ。
「え……あ…あはは……はい、そうですね」
「ふっ……正直だね、サファは。じゃあ、そんなサファにお願い事でもしようかね~」
「えっ!? お願い? 別に私に願っても何もないですよ!」
「簡単なものだよ。ラグのこと」
先輩のこと? それこそ、私では叶えられるものではない気もするが……
「あいつ、何かと溜め込むっつーか……抱え込むわけ。相談とかしてくれればいいんだけど、してこないしな。それにラグって結構繊細な奴で、ストレスとかに弱いんだよね。だから、見てやってほしいんだよ」
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「…………私が先輩を?」
「そ。別に特別なことはしなくていい。側にいてあげるだけでいいんだ。俺っち達だと気を使わせるしな」
ノイズさん達は先輩の先輩……だからか。先輩の先輩ってややこしいな。
「ロスがいてくれたらいいんだけど、今いないし。いつ帰ってくるかわかんないし、そもそも帰ってこれるかわかんないし」
「わかりました。つまり、先輩とこれからずっとコンビ組んで、仕事してお話しして……普通に過ごせばいいんですね♪」
「そういうこと。後輩のサファなら気兼ねなく出来ると思うからさ。……んじゃ、よろしくね? あ、でも、これ言ったことはラグには内緒な」
「はいっ! もちろんです♪」
言われなくてもそうするつもりだったし、言われたのなら、許可もらったってことだよね。本人の許可ではないけれど。
「んじゃ、改めて戻ろうか」
「はーい♪」



~あとがき~
ラグ視点を書くと、長すぎると思ったので、切っちゃいました。次回に回しますね~

ってことで、次回はラグの用事について。
ケーキ……食べたいね。

ノイズさんのキャラが定まりませんが、一応いじられキャラ分類だと思います。いじってくるのは、ラグとかメイズとかそこら辺かな。
ラグはSキャラですね! 相手は選びますが、ナチュラルにSです(笑)
え、メイズ? あぁ、彼が一番最強ですよ。ラグもいじられますもん。メイズの中では女の子は対象外です。ラグは人による。が、ギルドメンバーの後輩女子は対象です。
まあ、別にいじられキャラとかそういうのは、どうでもいいんですけどねー

ケーキとか勝手に食べると、ラグさんがお怒りになるので、要注意ですよ。飴とかグミとかチョコとかはいいらしいです。数あるし←
基準がいまいちですが、大丈夫。私もわかってない。
あと、彼、結構弱いです。病弱とはまた違いますが。ストレスに弱い。過度に感じるとぶっ倒れます←
………いや、そこまではいかないけど、まあ体調は崩すよね。けど、そんなラグを書くことは多分、ない。

ではでは!

簡易プロフ

簡単なプロフです。今、わかっているところや公開できるところを埋めていきまーす。途中でわかったところなど、随時更新しますね~


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↑集合絵
相も変わらず、白黒です。もう、色つきの絵は出てこないと思ってくれていいよ! 無理だ!

それはさておき、主要キャラのプロフでーす!

サファ/シュラン・ブラッティ
種族:エーフィ(青色)
性別:♀
年齢:16歳
武器:短剣
ランク:見習い
所属:ブラック、ラグのパートナー
備考:本作の主人公ポジションの女の子。また、本作の語り手。
   明るく前向きな性格で、感情が表に出やすいタイプ。ラグ曰く、何考えているかすぐにわかる、らしい。ドジ踏むことも多く、空回りなどしょっちゅうだが、なんとか頑張ってます。
   幼い頃、両親をなくし、そのショックからか、その頃の記憶が欠落している。また、その時期は今の性格とは程遠い様子だったとのこと。今のような性格にしたのは、紅火が関係しているとか。
   現在、紅珠とメイズ宅にお世話になっており、二人のことを両親のように慕っている。また、年下の紅火のことは、実の弟ように考えている。
  パートナーであるラグと対立することも多いものの、口で全く勝てない。仕方ないと言えば、仕方ない。


ラグ/ガロン・ウェザー
種族:リーフィア
性別:♂
年齢:20歳
武器:基本、銃
ランク:始末屋
所属:ブラック、サファのパートナー
   他、多数の連合チーム所属
備考:本作のもう一人の主人公ポジションの男の子。
   普段、面倒臭がりな性格で、口が悪いことも多い。ついでに女嫌い。しかし、仲間意識が高く、全ての面で頼れる存在である。仲間としては、とてもいい奴です。
   物心つく前、衰弱していたところをロストに拾われ、事なきを得た。それが原因なのか、ストレスのせいでしばらくは話すことが出来なかったらしい。そのとき、色々あったようだが、それは本編もしくは、詳しいプロフ記事にて。
   ロストの義弟であり、弟子でもある。滅茶苦茶好かれているが、ラグ自身は嫌がってもいない。(多分、はね除けたら、大変なことになるって知っているため)
   甘いものが好きでよく甘味を食しているが、健康に害さないよう、調整はしている。ようは甘党。自分で作ることもあり、家事等もこなせるようだ。
   パートナーであるサファとは、口喧嘩が耐えないものの、彼女を護ると約束を交わしている。


紅珠/紅珠・フレイヤ
種族:バクフーン
性別:♀
年齢:35歳
武器:銃(拳銃が主)
ランク:始末屋であるが、今現在、活動停止中。
所属:ブラック
備考:総合ギルド、ラストソウルのマスターで、紅の一族の現頭首。
   真面目にマスター業に取り組んでいるものの、何を考えているのかわからないことがしばしば。また、ラグや幼馴染みたちに仕事を投げることも珍しくない。どちらかと言えば、武闘派。
   ノイズ、メイズ、ロスト、ノルンと幼馴染みでかなり長い付き合いらしい。幼い頃からこの仕事をしている四人は、意志疎通もそれなりにアイコンタクトでなんとかなる。
   メイズとは夫婦であり、仲は良好です。紅火、サファの母親ではあるが、家事はそこまで得意ではない。特に料理に関しては、夫であるメイズに負けている。


紅火/紅火・フレイヤ
種族:マグマラシ
性別:♂
年齢:13歳
武器:片手剣、拳銃
ランク:暗殺者
所属:ブラック
備考:ラストソウルのメンバーであり、ブラックのメンバーでもある。また、次期ギルドマスター、一族の次期頭首でもある。しかし、勉強とかそういう面で馬鹿というかアホなので、滅茶苦茶心配されている。
   サファ同様、明るく前向きな性格をしている。感情が豊かで、彼の周りは笑顔が絶えないのがいいところだと思います。仕事になると、性格ががらりと変わるらしいが、一人で行くことが多いため、見られることがない。
   幼い頃、サファが家に来たとき、口を聞いてくれなかったサファを何とかして元気づけようと翻弄していた時期がある。こういう面では、頭がいいのかもしれない。
   こんな仕事に就いているものの、現役学生らしい。毎日、宿題に追われている様子。


リアル/メラル・プライズ
種族:プラスル
性別:♂
年齢:15歳
武器:刀
ランク:暗殺者
所属:ブラック、シリアのパートナー
備考:ブラックのメンバーで、シリアのパートナー兼兄貴。
   無口な性格で、一日喋らないこともあるようです。シリア以外の人達には全員敬語を使用。また、先輩たちに「~兄」「~姉」とつけて呼んでいる。が、「~姉」は今、いないので、使っていない。
   見ての通り、シリアとは完全に血が繋がっているわけではなく、父親が同じなだけである。そのため、半分だけ血が繋がっているというややこしい感じである。理由としては、父親が遊び好きだったという感じのあれ。
   シリアの行動に振り回されることが多いが、そこら辺は諦めているような、楽しんでいるような感じである。


シリア/ティナ・プライズ
種族:マイナン
性別:♀
年齢:13歳
武器:鞭
ランク:殺し屋
所属:ブラック、リアルのパートナー
備考:ブラックのメンバーで、リアルのパートナー兼妹ちゃんである。
   元気っ子で同い年の紅火とよくふざけていることが多い。一人称が俺で俺っ娘というやつ。
   実はリアルの方がブラックの所属が早く、後を追うように加入してきた。理由としては、リアルばかりに大変なことをさせたくない、という思いから。
   複雑な家庭環境ではあるものの、気にすることなく過ごしてきた。リアルのことを実の兄のように慕っている。


ノイズ/カイン・エレクト
種族:ピカチュウ
性別:♂
年齢:36歳
武器:銃剣
ランク:元暗殺者
所属:ブラック
備考:ブラックのメンバーで、裏方でメカニック専門で働いている。また、分家の出身だが、頭首ではない。
   お気楽な性格で落ち着いた雰囲気を持っているが、たまにボーッとしていることも。また、後輩であるラグにいじられることも多い。
   昔、仕事中に相手の罠にはまってしまい、大怪我を負った。そのとき、生死の境を彷徨ったものの、なんとか一命を取り留めた。しかし、今まで通りの仕事が出来なくなってしまったので、得意だった情報処理やメンテナンスを請け負うことになった。これはこれで楽しいらしい。
   紅珠、メイズ、ロスト、ノルンとは幼馴染みであり、特にメイズとは親戚関係にある。ロストの暴走を止めたり、メイズのS発言に突っ込んだりと忙しく、苦労人。


メイズ/メイズ・フレイヤ
種族:サンダース
性別:♂
年齢:36歳
武器:なし
ランク:元暗殺者
所属:元ブラック所属
備考:今は普通の社会人。元々は暗殺者としてブラックに所属していた。
   飄々とした性格でつかみ所のない人。いつもにこにこしており、紅火やサファのちょっかいにも笑って応えてくれる。が、幼馴染み組、ラグに対しては慣れがあるのか、S発言が飛び出してくる。
   昔はそれなりに活躍していた暗殺者だったが、紅珠の妊娠をきっかけに子育てを請け負うため、完全に足を洗った。次の仕事でプログラマーとして数々の顧客を受け持っている。それなりに有能らしいです。
   紅珠とは幼い頃から仲が良く、メイズから告白したとか。今でも普通にラブラブしている。


ロスト/シエナ・ウェザー
種族:グラエナ
性別:♂
年齢:36歳
武器:長刀
ランク:始末屋
所属:ブラック
   連合チーム所属
備考:ブラックのメンバーで、分家にあたる、ウェザー家頭首。また、現在、連合チームに長期出張中でギルド不在中。
   自由人でフラフラしていることも多いが、天性の才能の持ち主。暇さえあれば、ゲームしていたり、寝ていたりと協調性がない。
   昔、仕事の帰りにフラッといつもと違う道で帰っていたら、衰弱していたラグを見つけ、ほっとけずに思わず拾って帰ってきた。そして、弟にする、と宣言し、親を説得させて、ラグを養子として受け入れさせた張本人。そう考えると、かなりの行動力の高さと言えよう。
   今の今までフラフラしていたために、今でも独身であるが、本人は大して気にしていない。周りからは、さっさと相手を見つけろ、と言われているらしい。
   ラグの義兄であり、師匠である。そんなラグに滅茶苦茶甘く、ブラコンの域を越えているような、いないような感じ。だが、修行の時はそれなりに厳しくなるようだ。


ノルン/ライラ・マアルテナ
備考:紅珠、ノイズ、メイズ、ロストとは幼馴染み。
   詳細不明なため、今後に期待。



こんな感じでしょうか?
本当はもう少し詳しくてもいいかなって思ったのですが、長くなるので、やめました。
もう少し話が進んできたら、詳しいプロフを書こうかと思っています♪
まだ紹介してないやつらもいるし、後から入ってくるやつらもいるしな!

何かご質問等あればどうぞ!
答えられる範囲で答えますっ!

ではでは~♪

last soul 第12話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧の際はご注意ください》





~お買い物終了しました~


私が先に買って外に出てきた。お店を出ても、やはり沢山の人が並んでいた。今日、平日だったはずなのだが、この人の多さは異常な気もする。もしかすると、新しいケーキでも売っていたのだろうか? まあ、来たことがないから、知らないし確かめようがないけれど。
「平日だから、コウくんは学校かな。……そいや、リアルくんたちって学校行ってるのかな」
リアルくんは私とそこまで歳が変わらないように見えたが、シリアちゃんは私より年下だろう。それなら、学校へ行っているはず。しかし、ギルドにいるということは、私と同い年?
この国では、中学まで学校へ行けば、基本的に成人したと見なされ、仕事をすることが出来る。学歴が関係する仕事もあるが、普通は差額も大して変わらない。
もちろん、進学という手もあるが、それなりに勉強出来るお方でないと進むことは出来ない。私も一時期、進学という道に憧れを抱いていた頃はあった。が、学力的に無理だったため、今こうして働いている。
………あれ? これ、働いていると言えるのか?
しかしまあ、こんな制度が出来たのもつい最近だとか。私より年上……先輩より上の人達は学校すら通ってなかったと聞く。まあ、義務づけていなかっただけで、学校はあったから、勉強していた人はしていただろうし、出来る人は出来る。これが世の中なんだろう。……うん。
「なんで私の頃になったら、制度が変わったんだろ」
学力低下だろ。普通に考えて」
「!? せ…先輩……驚かさないでくださいよ。ビックリしました」
先輩の買い物が終わったのだろう。お店から出てきた先輩が私の横を通りすぎ、そのままギルドに向かおうとした。私は慌ててそのあとを追う。
「待ってくださいよ! というか、私の言葉は無視なんですか?」
「じゃあ、答えるけど、一人言言ってる方がビックリするし、怖いからな」
「う……だって、平日だなって思って、コウくんは学校だろうなって思ってたら……つい。……やっぱり、先輩、学校には通って…」
「通ってたわけねぇだろ、馬鹿」
ですよね。十年以上この仕事をやってるって言ってたもん。行ってるわけがない。
「あれ? それだと、先輩ってどこで勉強したんですか? してない……わけないですよね」
「周りに年上しかいなかったし、それにメイズさんいたしな。あの人から教えてもらってた。メイズさん、学校通ってたって聞くし」
おじさん、流石……
私の脳内で笑顔を浮かべるおじさんの顔が浮かんだ。侮れないな……おじさん。
「だから、生活する分には困らない程度の知識はある。……お前より頭はいいと自負してる」
「否定出来ない自分がいる……なんかそんな感じするもん。先輩ってIQいくつですかね」
「知らね」
そりゃそうだ。
しかし、おじさんの次に頭いいとしても、それでもかなり高い数値を指すのではないだろうか。まあ、この仕事でも色々あるんだろうし、それなりの柔軟な発想とやらが必要なのか。
私に柔軟な発想なんてないんですけど……
そんなことを考えていると、先輩が何かに気づいたような声を出し、その場に立ち止まった。それにあわせて、私も立ち止まり、先輩を見る。
「………あ、寄るとこあったの忘れてた。先、ギルド行ってろ」
「はい、わかりまし………って、私、どうやってギルドに入ればいいんですか?」
確か、地下のあそこに行くためには、パスワードと登録が必要だったはず。今まではコウくんやおばさんに開けてもらってたけれど……
「あ? まだ登録してなかったの? あ~……今の時間だと資料室にノイズさんいると思うから、開けてもらうついでに登録してもらえ。俺から連絡いれとく」
「あっ…はい! それじゃあ、ギルドで♪」
先輩は軽く片手を上げ、くるりと後ろを向き、歩いて行ってしまった。先輩の用事がなんなのか気になるところだが、深く追求するとまた睨まれるだろう。
よし、帰ろう!

ギルドに着き、先輩に言われた通りに資料室へと向かった。相変わらず人は少なく、多くの書物が綺麗に本棚に仕舞われている。こんな所だからか、自然と音をたてないように行動してしまう。といっても、入り口からほぼ動いていない。しかし、ここから見る限りノイズさんの姿は見えなかった。
本当は控えるべきなんだろうけれど、少しくらい声出してもいいよね……?
「えっと……ノイズさーん? い、いますか~?」
「ん………あ、ここだよ。サファ」
奥の本棚からひょこっと顔を覗かせたノイズさんが手を振ってきた。思ったより声量が大きくて驚いたのは、内緒の方向でいこう。
「お使いご苦労様。それでお目当てのは買えたの?」
「あ、はい! 途中で先輩見つけて、一緒に買いに行ってきましたよ♪」
「へぇ……ラグが女の子と買い物ね。というか、よく引っ張ってこれたな。嫌がってなかった?」
ノイズさんの質問に先輩と出会した場面を思い出してみた。あのときは、たまたま出会えたからだったが、確かに一緒に行こうと提案したときは、これ以上ないくらいに睨まれた。が、めげずに頼み込んだら先輩の方が折れ、今に至る。
結論、滅茶苦茶嫌がってました。はい。
「そうですね、嫌がられました。けど、頑張って頼んだら、渋々って感じでついてきてくれましたよ」
「ふーん。ラグって強引な人には押し負けるのか。……よくよく考えると、紅珠の押しにも弱いか。あ、けど、紅珠の押しに負けないやつとかいないから、比べようがないや」
おばさんの押し……まあ、マスターって立場も左右しているような気もしますが。
「んー……それもあるだろうな。けど、昔から気が強かったからね、紅珠。だから押しが強いのも昔から」
そう言えば、先輩がおばさんやノイズさん達が昔からの仲だったって聞いたっけ。
「さて。無駄話はここらへんで止めにして、ラグの言われた通りにしますかね~」
ノイズさんは手に持っていた本を本棚に戻すと、行こうか、と促した。私はそれに従い、資料室を出る。そして、ノイズさんを先頭に大分慣れてきた地下へと続く廊下を歩く。
「そいや、なんでサファって名前にしたの? 自分で考えたの?」
ギルドメンバーにはサファという名前を伝えただけで、他のことは全く教えていなかった。ここに来て聞かれるとは思っていなかったな。
「先輩が考えてくれたんです。目の色がサファイアみたいだからって」
「うわ~……ラグにしてはロマンチックなことを言うね。まあ、確かにそうだと思うけどさ」
「そ、そうですか?」
「まあね。けど、そうか……ラグがな」
どこかしみじみとしているノイズさん。そんなノイズさんの様子に私は首をかしげる
「………あ、着いた。ちょっと待っててな」
「あ、はい!」
部屋へと繋がる扉の前に着いたようだ。さて、買ったケーキを冷蔵庫に入れて、登録してもらって……で、何するんだろう。食べるの?
ま、いっか。



~あとがき~
食べられませんでした。
食べたかったです。……いや、食べさせたかったって言うのか? まあ、どっちでもいいんですが、やっぱり予定を飛ばしましたね。あれ、あてになりませんね! 私が言うのもあれなんだけどね! ごめんなさい。あれ、信用度低いんですよ。はい。

次回、食べ……………られないと思う。
登録して、ちょっと話してラグに視点置いたら終わる。多分。変わるかもしれないけど。

学校ってポケモンに必要あるんでしょうかね。
いや、わかんないんですけどね。
まあー……ラグとサファで制度が違うんですよってことで。え、頭のよさ? もちろん、ラグの方が上だよ!
サファは中の下ってところだろうか。
現在、ブラックのメンバーの平均年齢は結構低いです。
上は三十代。下で十代です。一番低いのは、紅火とシリア。次にリアル、サファ……までが十代ですね。二十代はラグだけで、三十代は残りのメンバーってことになる。
え、絵で見ると皆同じに見える?
…………うん、ごめんなさい。でもそういうことなのね。はい。
詳しい年齢はプロフを近々出すので、それを見てくれればありがたいです! はい。

最近、挿し絵を描くのが面倒になってきた……というか、なんも思いつかないんで、ないだけなんですけどね(笑)
また思いついたら描き始めまーす……ぶっちゃけ、ない方が進むんだけどね。当たり前か。

ではでは!

last soul 第11話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧の際はご注意ください》





~好きなものを目の前にすると、テンション上がるよね~


心のなかで私が気合いを入れ直していると、先輩がじっと私のことを見つめてきて、困ったような表情をした。
「急に意気込むお前、怖いんだけど」
先輩、ひどいです。まあ、一人で決意していただけだし、別にいいけどね……いいけどねっ!!
「そんで? 他は?」
「ギルドの寮のこと聞きたいです」
「特別なことはなんもねぇよ? 男女別になってて、共同スペースがあるだけだ。……当たり前だが、金は払ってるからな」
「そこにいる人達って遠いところから来てるってことですかね?」
「それが一番の理由なんじゃねぇかな。あとは近いからって理由とか? 家賃を払える奴なら、いい場所だと思うぜ。個室はともかく、寮の掃除は勝手にやってくれるしな」
私はおばさんのところから通えるから、縁のない話だけれども、出稼ぎに来ている人にはありがたい話なのかもしれない。家賃がいくらなのかは気になるところだけれど。
そう思い、先輩に聞いてみると、ふむ、と少し悩む仕草をする。そういう仕草をしている先輩が少しカッコいいな、と思ってしまう。
……何考えてんだか。私は。
「家賃か……部屋の場所や広さや設備によるけど、安くて六、七万じゃねぇかな? 俺んとこは軽く十五万は越えてるんじゃねぇの」
「!? たっか! どんな部屋ですか!!」
「あ? 普通だよ? リビングあってキッチンあってって感じの。一応、風呂とかもあるけど、大浴場行っちゃうな」
普通のマンション並みじゃないですか……! 一人暮らしなのにそんないいとこ住んでるんですね。先輩、滅茶苦茶稼いでる人みたい……
「…………馬鹿にしてんの?」
「いえいえ……全く。そういえば、裏のお仕事ってそれなりに稼げるんですよね」
「命かけてるから」
………ですよね。それなりの報酬っていうのがありますよね。どれくらいっていうのは、聞かないでおこうかな。じゃあ、他に聞きたいこと……
「先輩っていつからギルドにいるんですか?」
「知らなくていい」
ピシャリと即答され、私から目線を外した。完全に踏んではいけない地雷のスイッチを入れた気分だ。気まずい雰囲気が流れる。
……聞いちゃ駄目なとこだったのか。やっちゃった。
「ご…ごめんなさい……」
私は俯きつつ、謝るが、先輩から言葉が発せられることはなく、沈黙が続く。先輩を見ることが出来ず、地面を見た。
そりゃ、むやみに過去を詮索するようなことされたら嫌になりますよね。……私のバカァァァァ……
「…………あーもう。拾われたんだよ」
「ふへ……?」
我ながら、間抜けな返事を返したと思う。先輩は私と目を合わすことはせず、淡々と続けていく。
「衰弱してたとこを師匠に拾われた。んで、色々あって、かれこれ十年以上、この仕事をやってんの。はい、終わり」
「じゅ…じゅーねん……」
「そっちから聞いといて呆然とするなよ。他の人が見てるぞ、恥ずかしい」
先輩に突っ込まれ、顔が赤くなるのを感じた。なんとか平常心を保とうとするが、どうしたら元に戻るのか全くわからない。どうしよう。
「………変なやつ」
「へ…変じゃないですよ!」
「挙動不審」
「これは先輩が変なこと言うからで…」
「本当のこと言ってるだけだ。お前と行動してると、命取りだな」
駄目だ……勝てる気がしない。確かに原因を作ったのは私だし、挙動不審になっているのも事実。
いつかどうにか負かせる日が来るのだろうか……?
「次でお待ちのお客様、店内へどうぞ」
どうやら、話をしている間に順番がきていたようだ。今の先輩とのやり取り、聞かれてはいないだろうか。心配にはなるが、まあ、聞かれたところで困ることもない。少し恥ずかしさが残るだけだ。
「先輩、行きましょ」
「おう」
さっきまでの言い合いはなんだったんだろう、と思うくらい普通に返事をされた。もしかして、遊ばれていた?
「…………サファ?」
「いえ、なんでもないです!」
あぁ……絶対遊ばれていたな。泣きたい。
しかし、こんなところで泣くわけにもいかないため、黙って店内へ入る。店内の内装は、可愛らしい感じだが、特別珍しいものが目に入るわけでもなかった。目の前にあるショーケースには、色とりどりのケーキが綺麗に並べてある。
先輩みたいに大好きってわけじゃないけど、凄く美味しそうなケーキがたくさんある……! まあ、今回の目的はロールケーキだけなんだけどね。
「先輩、どれですか……あれ、先輩?」
「流石……朝から並んで入ると種類豊富…」
つまりは、お昼とか夕方とかは売り切れていて買えないときもあるってことか。というか、ここにきて、言葉足らずになってきてるよ、先輩。
先程まで冷めた目をしていた先輩だったが、多くのケーキを目の前にして、目を輝かせている。まるで、新しいおもちゃを与えられた子供のようだ。そこまで嬉しいものなのだろうか。私には理解しがたいことだが、先輩にとっては、心踊らせるには十分なのだろう。
とりあえず、ショーケースを眺めている先輩は、ほっといてロールケーキを見てみるか。
フルーツと木の実とチョコと抹茶……と普通のか。ロールケーキだけでこんなに種類あるんだな。これ全部買えって言われることはないだろうけど、どれがいいんだろう? 無難に普通のやつ?
「ロールケーキ、どれにするんですか? 私に任せると、普通の選びますけ………あれ? どこ行った?」
私の隣でショーケース見ていたはずの先輩がいなくなっている。あれ? 置いてかれたの、私の方? いやいやいや! おかしくない!? 勝手に引っ張って来たのは私だけれど、黙って行くのは男の人としてどうなの!
「サファ、うるさい。何?」
「うわあ!? ビックリしたぁ……いつの間に後ろに」
「ロールケーキ見始めた辺りから」
かなり始めの方じゃないですか……
気配もなく後ろに回り込むなんて、仕事の影響か何かとしか思えない。いや、実際にそうなのだろうけれども。
「どれがいいんですかね」
「迷うこと言うな……けど、ここ、木の実のロールケーキが一番美味しいんだよ」
「へぇ……フルーツと何がちが………いや! すいません!! 愚問でしたね!」
キッと睨んできた先輩を慌ててなだめる。豹変しすぎだと思うのだが、それほど好きってことなんだろう。今度から気を付けよう。
まあ、木の実だから、モモンとかオレンとかそういうのだよね! うん! けど、フルーツも広く見て木の実の部類だと思うんだ……私。
「じゃ…じゃあ、私、それを買ってきますね? 先に出てますか?」
「いや、俺も何か買うから、先行け」
ロールケーキを私に買わせて、更に別の買うんかい。ロールケーキは約束だとしても、必要か? ピースのやつを買うんだろうけれど、それは今、必要なのか……?
「………これも愚問か」
ここは素直に先に買って、待っていよう。よし、そうしよう。これ以上、変なことを言って、場の雰囲気を壊すのは防がなければ。



~あとがき~
ケーキ買うだけでここまでくるか、普通。
まあ、いいんですけどね~

次回、ケーキ食べたい。

ラグ、いいとこ住んでますよね。
二十歳の一人暮らしだからね? 十五万越えですからね。どんだけ稼いでるねんってね。
いやまあ……百万単位なんだろうが……多分。
でも、十五万って、なかなかの広さだと思う。いや、狙ってるけど。
一人で住むには広すぎると思うんだけど、ラグのことだから、寝室とリビングと仕事部屋みたいに分けてるんじゃないかな。

ラグの過去を少し公開しました。
本人的に言いたくないことではありますが、言っても問題はないようですね。
つまるところ、ロスは兄でもあり、師匠でもあり、恩人でもあるってことになります。なんかいいところを全てかっさらったみたいになってますが……
そういった意味では、ラグはロスに逆らえないような気もする。

あとは、ケーキとか甘いものが沢山あったら、ラグの性格変わります。変わりますって言うか、目が輝きます。
性格は大して変わってないけど、態度が変わる。
イメージ崩壊って感じですね(笑)
クールなんだけど、そういうはっちゃけポイントも必要だと思うんです。はい。
そう思った結果が今回のあれだからね。
うん、微妙!

ではでは!

last soul 第10話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧の際はご注意ください》





~一人より二人だと思いました~


「ふあぁぁぁ……こんなに人多いもんなんですかぁ……聞いてませんよ。でもそれだけ人気店ってことか」
「ちょっと待て。なんで俺まで引っ張ってきやがった。今日、行くとこあったんだけど?」
「でもでも、暇だよぉぉぉ」
「…………話を聞け! この馬鹿女!!」
「きゃあぁぁぁぁぁ?!」
横にいたラグ先輩の見事なチョップを食らい、私は思わず悲鳴を上げる。その声に周りの人が一斉に振り返った。しかし、そんなことを気にしている場合じゃない。
「うぐぐ……痛いじゃないですか! 私、女の子ですよ? レディーなんです!」
「知るか。俺の話を聞かないお前が悪い」
「…………う」
私と先輩は今、昨日言っていた洋菓子店に並んでいる。一応、開店前から並んでいるのだが、私達が来る前からずらりと並んでいた。
平日だし、少ないと思っていたのだが、ここまでとは思ってもみなかった。更に私達の後ろにも列が出来ているのだから、驚きだ。
「当たり前だ。滅茶苦茶人気だからな。休日はもっとヤバイけど」
そりゃ……そうですよね。
「で、ロールケーキでしたっけ? でも、ロールケーキとかどこの食べても同じなのでは……?」
「…………わかってねぇな。ロールケーキ作んの大変なんだぞ? 力の入れ具合とか、クリームとのバランスとか…」
そんなん知らないですよ。美味しければどこだっておんなじですもん……
私がそう言うと、先輩はため息をつき、憐れむような目でこちらを見てきた。意味がわからず、私は首をかしげる
「悲しい奴だな。………そのまま大人になって死んでくんだろ。悲しいことだよ」
「あっれぇ!? こだわらないだけでここまで言われるの!?」
私の突っ込みに先輩は反応を見せず、私のことを見ることもしなかった。なんか悲しい……
先輩は首にスカーフを巻いておらず、代わりに耳に巻いていた。そしてゴーグルを首にかけ、ブーツは履いているものの、手袋はなし。完全に休日スタイルというか……ギルドに行く気ないのかって感じである。
というか、会ってよくよく聞いてみると、全く行く気がなかったらしく、午前中はギルドの寮に籠るつもりだったらしい。しかし、用事があって外に出てきたところを私に捕まえられた……ということ。
で、今に至る。
その話を聞いて、まず寮なんてあったんだな、と思ってしまった。あとで聞いてみよう。
「大体、先輩がどんなの食べたいか知らないんですもん。私、ここに来るの初めてだし」
「うわ。人生損してる」
「すいませーん……そこまで重要でしょうか?」
「語ってやってもいいが」
「話長そうなんで、また今度聞きます。そんなことより、私、聞きたいこといっぱいあるんですよ! ここで聞いてもいいですか?」
「…………ここで話せることなら」
先輩、嫌々って感じだが、私の要望は聞いてくれるようだ。そこは大人の対応ってことなのだろう。
それでは、お言葉に甘えて色々質問させてもらおう。この前、教えてもらったけれど、他にも知りたいことは多い。
「ギルド入ったときに証明証を貰ったじゃないですか。結局、これって、何なんですかね?」
「読んで字の如くですが」
………いや、そうなんですけどね? そういうことではなくて。
「基本的にはギルドに加盟しているっていう証明。……他には裏のをやってるっていうのもあるし、身分証にもなる。それがあれば、大抵のことは許されるぞ? 入れないようなところに侵入したりとか、極秘資料を見られたりとか」
これ、そんなに凄いんですね……
私は首にかけてあるペンダントのような証明証を掴んだ。同時にお守り代わりのペンダントが揺れる。二つもつけているのは邪魔かな、とも思うのだが、外すことはしたくはない。
これは両親と唯一繋がっていられるものだから。
「…………サファ?」
「ふぁいっ!? なんですか?」
「何か暗いというか辛そうというか……そんな顔してるから。……大丈夫か?」
「大丈夫ですよ! ちょっと思い出に浸ってただけなんで……というか、先輩、心配してくれたんですか?」
「お前に何かあったら、紅珠さんとメイズさん……ついでに紅火に殺されるのは俺だ」
あぁ……そうかもしれない。
そういえば、おじさん、先輩と面識あるってことを言っていたような……いなかったような。でも、先輩からおじさんの名前が出てくるってことは、会ったことあるってことだろうか。
「メイズさんとは面識あるよ。……というか、俺の先輩だし……メイズさん」
「……………えっ?」
「今は引退してるけど、メイズさんもバリバリのやり手だったからな。いや~……強かった強かった。ランク試験は面倒だからって最後のやつは受けなかったけど」
最後のやつ、ということは、始末屋ランクに上がるかどうかの試験……ってことか。というか、試験なんかあるんだ。
試験受けなかった理由があれだけど。
「他に先輩って……?」
「俺が加入したときは、紅珠さんとメイズさん。あとはノイズさんにノルンさん。あと……師匠。その五人が入ってた」
ノルンさんと師匠って初耳です。
ノイズさんは先輩が敬語を使っている時点で何となく予想はしていた。それとおばさんもそうだろうな、と漠然と考えていた。そして、おじさんのことは今ここで聞いた。
残りの二人は初登場なんですけど……
「ノルンさんは今はいない。師匠…ロストさんは長期任務中で留守にしている」
そのノルンさんって人も引退したのかな。
つまり、今現役なのは……
「師匠と紅珠さんの二人。ノイズさんは実質上引退みたいなもんだしな。……あ、でも、紅珠さんも今は活動停止中みたいなもんだから、師匠だけかも」
うわあぁぁぁ……世代交代ってやつですか。
「いや、知らないけど。結局のところ、今ギルドにいて、何年もやってるのは俺だけになるのかな」
ふっと先輩の表情に影が落ちた気がした。私はそれを見て、今まで私と先輩とで生きてきた世界が違うことに、改めて気がついた。
先輩は色んな人の終わりを見てきたのだろうか。同じ仕事をしている人達はもちろん、殺した相手の終わりも数え切れないくらい見てきているんだろう。
そう思うと、切ないというか悲しくなってくる。
きっと、これからもこの先も。
「…………先輩、私、頑張りますね!!」
私が強くなって、先輩のそばにいてあげられたら。きっと、少しでも悲しい気持ちを分けられる。一人で悲しくなるより、二人の方がきっといい。
「? 急にどうしたんだよ。つか、何を頑張るわけ」
「色々ですよ♪」
何があっても大丈夫。
私は先輩のパートナーなんだからっ!



~あとがき~
次回も続きます~♪
まだケーキ買ってないですもんね!

次回、ラグさんの話が続きますよ。

新しい名前が出てきましたね。ノルンさんというらしい。種族とか性別とか、他の部分は不明ですがね。今はギルドにいないようです。
ま、これからの登場に期待だよ☆
ちなみに、ラグが入った頃のブラックの構成も公開されましたが、あれは幼馴染み組ですね。
紅珠、メイズ、ノイズ、ロスト、ノルンの五人組!
そこにラグが入ってくるんですね~

証明証の説明も簡単に入れさせていただきました。
他の使い方は大してないと思いますが、証明証がなければ、ギルド地下の部屋に入れません。あとパスワード。
まだサファは知りませんがね(笑)

ではでは!

last soul 第9話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧の際はご注意ください》





~名前決めってこんなに大変なんですか~


私がギルドに入って早一週間がたちました。
わからないことだらけですが、何とか毎日頑張っていまーす……
「頑張るのはいいから、名前決めろ、ボケ」
「思いつかないんですもん。先輩、呑気にプリン食べてないで助けてくださいよー」
先輩は私の助けに耳を貸す気もなく、プリンを口に運ぶ。私はそれを見て、机に突っ伏した。
先輩と初めて会った次の日、先輩は仕事でおらず、数日間ギルドにいなかった。そんな先輩は、昨日の夜帰ってきたらしく、私と顔を合わせたのは一週間振りとなる。
私は先輩と別行動していたことになるのだが、その期間、何をしていたか。
その答えは、先輩不在中(一日目)の時にさかのぼる必要がある。
私はおばさん…マスターに呼び出され、部屋へと入った。何を言われるのかと内心おどおどしていたのだが、マスターの口から放たれた言葉は、私の緊張を吹っ飛ばすものだった。
「シュラちゃん、仕事で使う名前を決めてくれる?」
「…………はえ?」
あのときは正直、間抜けな返事が飛び出した。今考えると、滅茶苦茶恥ずかしい。が、同時に気が抜けた。
ってことで、私は自分の名前を考えている………のだが、私はこういうものが苦手なのか、はたまた想像力がないのか、全くもって思いつかないのだった。
「そんなこんなで今日で六日目……」
「こんなんに約一週間かけるやつは初めて見たぞ。色んな意味で尊敬するよ」
それ、絶対嫌な方向で尊敬されてる……嫌だ。そんなの嫌だ。どうにかして払拭したい……
「だったら、さっさと決めろよ。こんなの適当でいいだろ。悩む要素はどこだ?」
「だって、ここで決めたやつは今後、それで呼ばれるんでしょう? その場のノリで変なのつけて、それで一生呼ばれるなんて……考えたくありません!」
「…………あ、そう」
私の熱のこもった思いをさらりと、無表情で一刀両断された。興味がないのか、疲れているのか一つ一つの発言にも感情がこもっていないような気もする。
「なあ、俺、帰っていい? 眠いんだけど」
「駄目ですー! 私と一緒に考えてください! 先輩は私のパートナーなんでしょう? こういうときこそ、助け合いですっ!」
「パートナーをいいように利用すんな、馬鹿。つか、これに助けるも何もないだろ」
うぐっ……それもそうなんですけど……はい。
「せっかくの休みをお前のためになんて使いたくねぇんだよ……勝手に呼び出しておいて、名前決めって……見返りもないしよ」
「み…見返りは考えますって!」
「期待出来なさそう」
「私のことを何だと思っているんですか? 私だっていいの考えられますよ。それとも、何かご希望でも?」
なぜだか、私の名前決めではなく、先輩への見返り品の話になっているが、気にしないでおこう。
「んー………じゃあ、ケーキ買ってこいよ」
「そこら辺のでいいんですか」
「馬鹿か。そんなんで満足するかっての」
「えー……他にありましたっけ? まさか、街のあそことか言いませんよね」
「わかってんじゃん」
街のあそこ、とは。この話で察してくれただろうが、街で人気の洋菓子店のことだ。開店近くなると行列が出来ることもあり、特にそこはロールケーキが美味しいとかなんとか……
「って! 並べってことですか!?」
「頑張ってね~♪ あそこ、美味しいじゃん」
「並んだことあるんですか?」
「あるよ。普通に」
「先輩一人で?」
「一人で」
……勇気あるな。この人。 
ケーキ屋さんに並ぶ先輩の姿を思い浮かべると、なくなないかな、とは思うが、異様な光景ではある。それとも、他人の目にはもっと違う感じで写っているのだろうか。
例えば、彼女のために買いにいく的な……
「彼女いそうだもんな……この人」
「あ? 何言ってんの」
「いえ、何でもないです……じゃあ、それで飲むんで、助けてくださいよ」
「どう助けろと」
そう言われると、思いつかない。どうしたものか。
「なんか思いつくもんないわけ? 別に生まれた子供に名前をつけろって言ってんじゃないんだからよ。意味とかどーでもいいんだよ」
「そりゃそうかもですけど……」
自分の仕事用を考えるのにここまでかかると、将来、子供を持ったときが恐ろしい。……なんやかんやで、タマゴが孵るまで悩み続けそう。
今、関係ないけれども。
「………他の人達には聞かなかったのか?」
「聞きましたよ。コウくんは今まで通り『姉ちゃん』呼びを変える気ないって言われたし」
「そら、そうなるな」
「シリアちゃんは思いつかないって言われて、リアルくんには会えてないし……」
「………ほう」
「ノイズさんは嬢ちゃんでいいとか、冗談言うし。おじさんはシュシュって呼んでるから、新しいの無理って言うし!」
「ノイズさんとメイズさん、考えるの面倒なんだろうな、多分」
「うわあぁぁぁぁん!! 私、どうしたらいいんですかぁぁ!! 先輩! もう私には先輩しかいません……助けてくださいよぉ」
私は身を乗りだし、涙目で訴えた。しかし、先輩は顔色一つ変えず、プリンを食べ続ける。
「私よりプリンなんですか……プリンの方が大切なんですか!?」
「少なくとも、お前の名前決めより大切」
先輩、酷いです。彼女とか出来ないタイプですよ。そんなにそっけないと、女の子に嫌われちゃいますよ。
「…………? 別に構わんが」
「うぅ……先輩のいけず」
目一杯皮肉を込めたつもりなのだが、先輩は気にすることなく、呑気なものだ。
私は実を再び机に突っ伏す。これじゃあ、振り出しに戻っただけ。
単純な名前でもいい、というのはわかっている。しかし、それが難しい。私が最初に思いついたのは、あお、だったが、それは嫌だった。理由として、この色で、体で、いい思いをしたことがないから。
いつだったか、昔、同い年くらいの子供にいじめられたことがある。結果的にコウくん(四、五歳だったと思う)がマジで切れて、その子達をフルボッコにして解決した。……根本的な解決ではなかったが、コウくんが怖かったからかいじられることはなくなったんだったかな。
「なんか…………泣きたくなってきた」
もう、誰か、こんな馬鹿で間抜けで出来損ないの私をお助けください………
顔を伏せて、ブルーな気分になっていると、頭上から小さなため息が聞こえた。先輩だって、こんな私には呆れているんだろうか。そりゃそうですよね、無理矢理付き合ってるんですもんね。私より、プリンですもんね。
「サファ」
「……………え?」
私は思わず顔を上げ、腰を上げた。先輩は頬杖をつきながら、私を見上げる。相変わらず、冷めた目をしているが、今、先輩は名前を考えて、言ってくれた……ように聞こえた。私の記憶と耳がおかしくなければ。
「俺は考えたからな。文句言うなよ」
そう言うと、私から目をそらし、加えていたスプーンでプリンをすくう。
サファ、と先輩は言った。確かにそう言っていた。
f:id:nyanco-sensei:20140620212727j:plain
「………サファ」
「嫌なら自分で考えろ。俺はこれ以上考えない」
「嫌じゃないです! けど、サファってどういうこと……?」
「お前の目」
私の……目?
私の目でサファって一体どういうことだろう? そもそも、サファってどこからとったんだろう。
「サファはサファイアから。………綺麗じゃん。お前の目の色」
そんな風に言われたことがなかったため、顔が一気に赤くなるのを感じる。家族以外で素直にほめられたのは初めてかもしれない。そもそも、容姿で綺麗、なんて初めてだ。いつも、気持ち悪いだの、気味悪いだのと言われてきたのに。
ふるふると体が震え、涙が溢れてきた。
「せ…先輩………」
「…………な…!?」
「ありがとうございます! 先輩が考えてくれた名前、凄く気に入りました」
「………そんくらいで泣くな。馬鹿」
「嬉し泣きですっ!」
「ふうん」
ごしごしと涙を拭き、先輩に向かって笑って見せる。それにつられてか、先輩も薄く笑ってくれた。
これから、サファ、でやっていくのか。うん、いいかもしれない。先輩が考えてくれた名前だもん、大切にしなくちゃね♪



~あとがき~
やっと名前がシュラン、からサファになりました~
おめでとう、サファ!

次回、ケーキ買いに行ってきます。そこで色々お話してもらおう。

サファ、何かと苦労してきたようです。いじめとか。ま、紅火が何とかしてきたようですが。
ていうか、四、五歳で年上をフルボッコだからね。紅火、侮っちゃ駄目ですよ。
アホだけど、侮っちゃ駄目ですよ。

ラグ、一人でケーキ屋に並べるみたいですね。何か対策でもしているのやら。バイキングは一人で行ったことないけれど、それは多分、忙しいからだと思います。
行こうと思えば、この子は行くと思う。
ちなみに、甘いものなら基本、常備しているようですわ。特に飴ね。ただ、甘いものを一切とらないときもあるようなので、その時は持ってないらしい。
あと仕事中に食べることはあんまりない。楽なやつは余裕こいて、飴舐めてますがね((

ではでは!