鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第4話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧の際はご注意ください》





~個性って濃すぎると、逆にキツいものがあるような気がするよね~


ラグ先輩に連れられ、やって来ました。ギルドの地下。普通の人はここまでやってこないらしく、人通りは全くない。見た目は普通の通路。それこそ、一階、二階とほとんど変わったところはないのではないだろうか。
そう思っていると、目の前に扉が見えてきた。ラグ先輩はそこで止まり、私の方を振り返る。
「ここだ。で、ここに入るためには、登録が必要なんだが……お前はまだいい。つか、出来ないから、後でやる」
「出来ないって……じゃあ、私、どうやって入るんですか?」
「俺と入ればいいじゃん」
……いいのだろうか。それは。
「出来ない理由は中で話す。ちょっと待ってろ」
扉の右横に近づき、なにやら動作をすると、何もなかったかのように扉を開けた。あそこにロックを解除する機械でもあるのだろう。しかし、何もしていない私がこうして入っていいものなのだろうか……
まあ、ここで立ち止まってても仕方ないのだが。
「入っていいぞ。……ここでは本名言うなよ。絶対に言うな」
「はっ…はい!」
二度釘を刺され、慌てて首を縦に振った。ここからは私の知る世界じゃない。……きっと、怖い世界。
私なんかがいていい世界なのか、わからないけれど、どうにかしないといけない。先輩が護ってやる、と言ってくれたものの、頼りっぱなしは駄目だと言うことは理解している。だからこそ、少しでも早く、一人前にならなくてはいけないのだ。迷惑になるのだから。どうすればいいのかわからないけども。
これからのことを考えていると、先輩の苦笑が聞こえてきた。
「そんなんじゃ、焦ると足をすくわれっぞ」
う……また口に出てました?
「いや? 口に出てはないけど、考えそうじゃん。お前」
そんなに単純!? 私、単純ですか!?
ラグ先輩にさあな、と軽く流され、部屋に入っていく。私も慌てて後を追う。
扉を潜り、一階の大部屋とはまた違う雰囲気に包まれていることに気づいた。
地下だから、外の光など入って来るはずもなく、人工的な照明で成り立っている空間だ。だからといって、薄暗い訳でもなく、普通の大部屋。強いて言うなら、上より少し狭いだろうか。まあ、上は滅茶苦茶広かったため、この空間に不満はない。
カウンターキッチンや何台かの机と椅子。小部屋と繋がるであろう扉。そして更に下があるのか、階段も見えた。
「んー……皆いねぇじゃん……まあ、適当に座っとけ。揃ったら紹介すっからよ」
「あ、はい。すいません……」
何故、今、謝罪の言葉が出たのかわからないが、近くにあった椅子に座った。先輩は当たり前かのように、カウンターキッチンの方へ歩いていく。
飲み物でも取りに行ったのかな? 冷蔵庫もあるみたいだし。地下だというのに設備いいな、ここ。
しばらく先輩の行動を見て、そこから、私の予想は半分当たり、半分外れていたことがわかった。
「先輩……それは?」
「あー? ケーキと紅茶」
「………先輩が食べるんですか?」
「そうだけど」
「えーっと……先輩、甘いの好きですか?」
「それなりに」
「そ…そうですか……あの、ケーキバイキングとか行くんですか?」
「行くぞ。まあ、一人じゃ行ったことねぇけど」
となると、二人以上ということだろうか。……それは男同士なのだろうか。
さっきまで嫌な人だなーとか、ワケわからん人だなーとか思っていた自分が馬鹿みたいに思える。
普通の人だ。ラグ先輩って……普通の人なんだ。
そう思うと、今まで失礼なことを考えていたことに罪悪感を感じた。もちろん、先輩のいないところで考えていたことだから、本人は知るはずもない。言われたって困るだろうが、謝らないと気が済まなかった。
「先輩、ごめんなさい。私、色々疑ってました!」
「はあ? いきなりなんだよ。気持ち悪っ」
…………前言撤回しようか、これ。
頭を上げ、とりあえず落ち着くために、先輩によって淹れられた紅茶のカップを手に取る。そして、カップに口をつけて一口飲んでみた。
「……………先輩!」
「……………何」
「先輩の淹れた紅茶、美味しいです! 何これ!」
「何って、ただの紅茶だよ。その辺にあるやつ」
淹れ方によってここまで左右されるのだろうか……奥が深いな、紅茶というものは。
先輩は普通にケーキを食べている。これは流石に自分の分しかないのだろう。と、なると、ここにいる人たちの中で、先輩しか食べないということだろうか。
「先輩、メンバーの人達って?」
「……一言で言うと、変人の集まり」
変人の……集まり?
「ん。……名前と種族教えとくよ。そっちの方がわかるだろ」
「お願いします!」
「えっと、当たり前だけど、マスター…紅珠さんはわかるよな? マスターが俺らをまとめてんの。で、お前がわかるのは……紅火くらいか」
「コウくん、ここのメンバーなんですか!?」
コウくん、とは、紅珠さんの息子さんで私の弟みたいな存在のマグマラシ。基本的になんと言いますか……お馬鹿さんである。
そんなコウくんが裏組織のメンバーだったとは……なんで?
「後でな。で、他は…」
先輩が続けようとするが、ある一点を見つめてピタリ、と動きが止まった。そちらを辿ってみると、知っている顔が一人。他、知らない人達だった。
「あ、姉ちゃん! ほんとに来たーー!」
「……ちはっす」
「うっはーーー! 新人ちゃんだ! 新人ちゃん! ついに俺も先輩だよ!?」
「ラグ、おデート中だったか? お邪魔だったかなぁ~?」
「うるさいです。……右から紅火、リアル、シリア、ノイズさんな」
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コウくんは家で見る通りで変わらずだった。しかし、マスターと同じ色のスカーフとブーツを身に付けている。
リアル、と呼ばれたプラスルは口数が少ない子なのか、冷めた目をしている。スカーフは赤色で、手袋とブーツは青色だった。手には日本刀を持っていた。もちろん、鞘に収まっている。
シリア、と呼ばれたマイナンは元気っ子、という感じ。まあ、普通に親しみやすい子だとは思う。リアルくんとは違い、武器らしい武器を持っていないようだ。
「勘違いしてるかもだから言うけど、シリア、女だからな」
先輩がぽつり、と私に耳打ちしてくれた。
まさかの俺っ娘か。まあ、よく見ると可愛らしい女の子か。俺という一人称に騙されそうになってる。
そして、ノイズ、と呼ばれたピカチュウは左耳が垂れており、包帯のようなものが巻かれている。他の人はスカーフなのに対し、ノイズさんはベージュのマフラーを巻いていた。そして右目にアイパッチをつけている。
「で、俺とマスターの六人で今は成り立っている。一応、これで全員だ」
…………ふへー……なんだろ、なんか……大丈夫だろうか? このメンバーは。
リアルくんは冷めた目でシリアちゃんを見てるし、そのシリアちゃんはダブルピースを向けている。ノイズさんはのほほんとしているし、コウくんにいたっては、なぜだかドヤ顔している。
で、ケーキを食べている、ラグ先輩……か。
どうしてもちぐはぐに見えてしょうがないんだけどなぁ……私。



~あとがき~
無理矢理紹介しちゃいました☆
紅珠さんの息子、紅火くんですが、シュランの言う通り、お馬鹿さんです。多分。
実力はありますよ。シュランより年下で裏組織のメンバーだからね。はい。
まあ、彼のことはこれから追々と……ね!
あとは俺っ娘のシリア、まともな人材のリアル。
あまり紹介できなかった、ノイズさん。
主人公的位置にいる、ラグさん。
そして、全員をまとめる、紅珠さん。
皆、少しずつ紹介しまーす。
もちろん、新人さんのシュランのことも追々と。

次回、色々説明します! 多分!

作中でも言ってますが、ラグは甘いものが好きです。要は甘党なんですね。お茶淹れるのが上手だったり、実は料理出来ちゃったりします。お菓子限定だけど(笑)
その分、健康にも気を使っているご様子ですわ。
挿し絵でもお菓子食べてる描写が多いかもですね。

ではでは!