鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第49話

《この物語は死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧の際はご注意ください》





~ノイズによる独白~


メイズの優しさ(?)を痛感しつつ、これからのことを考えた。もう暗殺者として働けないならどうするべきなのか。
「カイン、これからどうしようか悩んでるでしょ」
「え? あ、顔に出てた?」
「いや、出てないよ。でも、今まで通りに働けませんよって言われれば誰だって考える。大丈夫大丈夫。L.Sで働けるように俺が鍛えてあげる~♪」
「はあ? どうするかなんて決めてな……」
「俺が今までやってきたことを叩き込んであげる。戦えなくても裏方なら問題ないだろ? お前の仕事は俺がやってやるからさ」
「お前のって……情報管理? 待て待て……俺っちに務まらなくない? そんなにやったことないのに」
「じゃあ、お前は逃げるの? ライラは見えなくても逃げなかったぞ」
「……あーそういうこと言っちゃうのか。悪魔め」
「飴と鞭だよ。喜びな~♪」
言いたいことだけ言うと、丸椅子から立ち上がる。そして一度も振り返ることなく出ていった。勝手な奴だと言えばそれまでなんだけども、これがメイズなんだと言えばそういうことになる。
あいつはあいつなりに気遣ってくれているんだって分かる。必要以上に気遣うんじゃなくて、いつも通りに……普段と同じような雰囲気で話しかけてくれた。それだけでなんとなく安心出来たんだ。
でも、一人になった途端、紅珠とメイズに言われたことを少しずつ噛み砕いて理解していった。一人になったんだって感じた。いや、仲間はいるんだけど、そうじゃなくって……一番親しい人をなくすとここまで孤独感を感じるんだなって。
メイズから言われたときはなんとも思わなかったのに。分かっていたから、知っていたから大丈夫だろうって思っていたのに。
「……大丈夫なんかじゃないんだなぁ」
ぱたぱたと目から涙が落ちる。誰もいないその場所で一人静かに泣いた。慰めとかそういうのはいらなかった。されたって止まるもんじゃないし、むしろして欲しくなかった。それが当時の思いだった。
今考えると、メイズはそんなところも分かってて、接してくれていたのかもしれないんだなんて思うんだ。

目が覚めて、一思いに泣いた後はうじうじなんてしてられなかった。メイズが言うようにするなら、ある程度動けなきゃいけなかった。
二人には言われなかったけども、リハビリしていく中でなかなか危ない状況と言うか、それなりに苦労しなきゃ生活出来ないんじゃないかってくらいにやられていた。こういうことこそ、言っておくべきだと思うんだよね。紅珠はタイミングなくなったかもだからいいとして、メイズが言うべき案件だよね。違う? こっちが間違ってんのかね? まあ、今更だけど。
リハビリしていく日々で仲間が見舞いに来ることもあって、それがまた冷やかしなのでは思うくらいに騒いでいく。が、そこにラグが来ることはなかった。理由は分からないでもない。きっと来にくいんだろうな。それが分かっていたから、俺っちも何も言わなかった。時折、どうしてるかは周りに聞いてはいたけど、本人と直接話すことはしばらくしなかったっけか。
「やっほー! 無茶してるー?」
「ロス。相変わらず騒がしいな」
「やな顔するなって! 来てあげたんだからさっ」
そんなことを考えていた頃。ロスが変わらない笑顔を携えて、顔を覗かせに来た。
俺っちの仕事を押し付けられている(らしい)ロスは、なかなか病院に顔を出すことはなくて。それを責めるつもりも……つーか、うるさいから来なくてもいいやと思うくらいだったから、こいつの訪問はなんというか……いらない訪問だった。うん。
ちなみに、メイズは結構、頻繁に来てくれていた。まあ、心配で来てくれていたわけじゃなくて、仕事を教えてやるっていう勉強会のためだけに来てたから、容赦なかった。労る気持ちってのを忘れてきただろってくらいには。
「何しに来たの? 冷やかし? 説教?」
「なんでそんなマイナス表現ばっかりなのさ。ノイズ、入院で心が荒んでるの? よしよししてあげようか?」
「結構、普通だよ! いつもこんなんだろ、お前の相手は」
「そうかなぁ? もう少し優しいよ。ほれほれー」
うっとうしいな。こいつ。
一通り、目の前でうざったい動きをして、満足したのかすっと姿勢を正した。
「まあ、いいや。こんなことしに来た訳じゃないからさ」
「え、違ったの?」
「違うよ! ほーら、さっさと入ってきたらー?」
病室の入口に声をかける。しかし、誰かが入ってくる様子はなかった。ロスがしびれを切らして、入口に近づくと、ぐいっと腕を引っ張って無理矢理、病室へと入れさせた。引っ張ったせいで、バランスを崩し、転けそうになっていたけれど、それはロスがしっかりと支えていた。
「あう。力、強いよ。兄さん」
「おー……ラグか。久し振り」
「……う」
ラグは気まずそうに目線を合わせてくれない。ところどころ真っ白な包帯が巻かれていて、少し痛々しくみえるけど、思いの外、元気そうでよかった。
「んじゃ、俺、仕事あるから! ラグ、一人で帰れるよな? 兄ちゃんいなくても大丈夫だもんなー? じゃあねー!」
「ちょ、ロス!?」
言うだけ言って、勝手に出ていった。俺の知り合いは皆、こんなんばっかだ。このやろうめ…
気まずい気まずい! ラグも居心地悪そうだもの。そりゃそうだよな!? 俺っちもそうだもん。ごめんなー! こんな先輩でー!
と、色々思っていたけれど、口にはしなかった。隅っこに立って、居場所がなさそうにしているラグに何かを投げ掛けることもしなかった。かける言葉もなかったからだ。ラグはライラに懐いていた。初めに心を開いた相手が、彼女だったのは知っていたから。……こいつから、そんな大好きな姉さんを奪ったのは俺っちだったから。ごめんも、大丈夫も、何も言えなくて。
「……そっち、行ってもいい?」
沈黙を破ったのは、ラグだった。本当なら、こっちがやらなきゃいけないはずなのにな。



~あとがき~
めっちゃ久しぶり。
まあ、誰も見てないっしょ~

次回、気まずい二人が交わすものとは……

メイズとノイズはなんだかんだ言って、いいコンビだと思っています。ふわふわっとしているメイズに突っ込みを入れるノイズ……そんな二人の関係はお互いを信頼しているからこそなんでしょうね。信頼してるから、悪ふざけもするし、下手に言葉にしなくても通じるところがある……んだろうなって。
まあ、メイズが優秀なだけかもしれませんけどー!

ではでは。