鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第47話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~ノイズによる独白~


「もう、なんでもいいか。お前はここで殺されるんだ。覚悟してもらおうか」
考えるのが面倒になって、剣を相手に向ける。これだけでリングマの後ろにいた二人は怯えたように小さな悲鳴をあげる。が、リングマだけはその様子を気にすることはなく、俺っちの言葉にも動じることはない。動じるどころか、勝手に話を進めていく。
「アンタ、二人で来たんだな? あのイーブイのガキ、なかなかやるじゃねぇか。オレの部下も何人か殺られたみてぇだしなぁ」
「そりゃ、出来た後輩なんで」
「じゃあ、アンタはどうなんだろうなぁ?」
「何が言いたい」
すっと片手を挙げると控えていた部下が近くにあった部屋の扉を開け、どこかへと行ってしまう。一体、何がしたいんだろうか。そういえば、ここの監視カメラは切られているって言っていたから、ラグには見えていないのか、これ。何がどうなっているかも見えないんだ。
そんなことを考えつつ、ラグに連絡を取ることもしなかった。ラグからの連絡もなかったから、情報回収がまだ終わっていないんだろうなって勝手に思っていた。実際は待機しているだけかもしんないんだけど、まあ、こちらが知る手立てはないわけだ。
部下らしき二人が台車を押して出てきた。台車の上には麻袋のようなものが乗っていて、それは何か入っているらしく不自然に膨れていた。
「お前、婚約者がいるだろう?」
「……ははっ。そういうことかよ」
このリングマが何が言いたいのか理解してしまった。そこまで調べあげていたことにもビックリなんだけど、当時はビックリというよりは冷や汗が止まらなかった。だって、予測が正しければその袋の中には俺っちの愛する人が入っているんだから。
こればっかりは外れていて欲しいと思った。そんなことないと、言い聞かせて、安心したかった。けれど、冷静な部分がもちろんあって、そいつは覚悟を決めろと囁く。
「さあ、感動のご対面といこうか? お前達にとってはいつも通り、かもな?」
麻袋の結び目が解かれ、中身が露わになる。そこには予想通り、ライラの姿があった。相手に暴行でも受けたのだろう。体は傷だらけだし、本人は気絶しているらしかった。痛々しく、見ているのも嫌になるくらいだ。
「なかなか、強情でなぁ……流石は元暗殺者って言ったところか。それでも見えないってのは大きなハンデだ。簡単だったぜ?」
「言いたいことはそれだけか? 仲間に手ぇ出したこと、後悔させてやんよ」
武器を構えて、すぐにでも動けるように体制を整える。ボスを含めた三人をさっさと倒して、ライラを助けなければならない。俺っちの頭にはそれしかなかった。
「あっはははっ!! 分かってねぇなぁ? こいつの命は俺達のもんだぜ? 生かすも殺すも俺次第だ! いい気になるな。まあ? この女の命なんて惜しくないって言うなら構わねぇけどな?」
ここで仕事を選ぶなら、ライラは見捨ててでも全うすべきなんだろう。仕事に情を挟むな、なんてのは常識なんだよな。けれど、そこまで非道になんてなれなかった。だって、今までずっと隣にいて、傍にいてくれて、支えてくれた。捨てられるわけない。
ここで攻撃することを選んでいたら、どうなってしまうんだろう。一人で、三人を倒すのにどれ程の時間がかかるのか。普段なら一分もあればなんとかなりそうだ。が、今回はライラを人質に取られている。そして、ライラは意識がないから逃げることも出来ない。……必ず、ライラを助けられる自信は残念ながら、なかった。
「武器を下ろして、こっちに寄越しな」
リングマはライラの首元にナイフを当てて脅している。変な動きをすれば殺してやるなんて言っているのは見て分かる。俺っちは構えていた武器を下ろし、リングマの足元へと投げ捨てる。自分の武器を仕舞うと、俺っちの捨てた武器をリングマは拾い上げた。くるくると弄ばれ、ニヤリと嫌らしい笑顔を浮かべながら次の指示を飛ばす。
「素直でいいねぇ?……仲間に連絡しな。お前は帰っていいって」
「……あいつが素直に応じるわけないだろ」
「応じさせろ。お前を一人にしたいだけなんだよ」
「一人……ね。……ラグ?」
『はい。聞こえてます』
「こっちもそろそろ終わりそうなんだ。……で、集めた情報、サンに早く渡してやりたいからさ……先戻っててくれるか? ってかさ、こっちの言うこと、聞こえてる?」
『うん……全部聞こえてる』
「ははっ……だよなぁ」
『……準備、します』
「ほーい。安全にちゃあんと帰んなさいよ」
『了解』
ラグとの通信はぷつりと途切れた。リングマにはきっとラグの言葉は流石に聞こえていないだろう。にしても、ラグの初敬語をこんな場面で聞くことになろうとは思わなかったなぁ……
「帰るって。よかったな。これでお前の望む通りになったわけだ」
「聞き分けのいい後輩だな。これであんたとサシで話せるって訳だ……お前ら、下がれ」
部下に向かって指示を出すと、二人は素直に部屋を出ていく。残ったのは気絶した状態のライラと何も手出しが出来ない俺っち。そして、圧倒的優位なリングマの三人だ。
リングマは俺っちの武器をこちらに向けるとなんの躊躇もなく撃ってきた。致命傷になるような場所は狙ってこなかったが、間違いなく被弾したのは確かで、撃たれた勢いで地面に倒れる。
「かはっ……一思いに、殺せばいいのに……」
「それじゃあ、面白くねぇだろ?」
ライラをその場に放り投げて、こちらへと歩いてきた。そして足元に転がっている俺っちを煙草の火でも消すように踏み躙る。それもご丁寧に撃たれた箇所を重点的に。これで叫ばない方がおかしい。どこからこんな声が出るんだってくらいに叫んだ。
こんな仕事をしているんだ。まともな死に方は出来ないって思っていた。けどまあ、こんなことになるなんて思ってなかったわ。流石に。
「いいねぇ……もっと叫んでくれよ。そっちの方がこっちも楽しいから……よっ!」
俺っちの腕を目掛けて真っ直ぐに剣を突き立てる。避けることも出来ずに深々と刺さった。痛みで叫ぶ中、このまま出血性ショックで死んでしまうかもなんて客観的に考えていた。頭の片隅でどこまでも冷静な自分がいるんだから恐ろしいもんだよ。
動けない上にリングマにボコられるんだから、たまったもんじゃない。いっそのこと、意識を飛ばしてしまった方が楽なんだろうが、そこまで相手はお優しくなかった。傷口を抉るように剣を突き立てるもんだから、飛ばせるものも飛ばせないってもんだよ。いやはや、今思い出しても鳥肌もんだよ? ほんとに。



~あとがき~
うぐぐぐ……辛いぃぃぃ!!!

次回、大ピンチのノイズは一体どうなる……?

もうさ、見ている皆様は未来が見えているわけですよね。これは過去編です。どうなるかは分かりきっているわけだよな……うん。そういうことだよ!

もう話すことはない……ノイズの過去編終了まで走り抜けるのみ……つってももう少しかかると思いますけど……はい。

ではでは。