鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第45話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際にはご注意ください》





~ノイズによる独白~


こちらとしてはしばらくは大きな事件らしい事件はなく……つっても、個人個人はあったんだけど。それは俺っちが語ることじゃないから、ざっとだけ。ラグが見習いから殺し屋へとランクを上げた頃、さらりとメイズから紅珠との婚約を聞かされた。「俺達、結婚するみたい~」って、他人事のように言ってきた。何がきっかけとか根掘り葉掘り聞いたけど……まあ、うん。ここじゃ、割愛しよう。
あとは……なんだろう。特には? なかったか?
うん、ない……かな。
この頃、花嫁修業だなんだと理由をつけて、ライラと紅珠が料理に挑戦することが多かった。元々、ライラはラグが来た辺りからちょこちょこやってはいたんだけど、そこに紅珠が加わった形だ。
これから話すのは初めてライラと紅珠が料理した話だ。ギルドに備えてあるキッチンにライラと紅珠。それとラグが並び、観客(?)の男達は近くの椅子に座って見ていた。
「ノルンのお料理教室ー! アシスタントはラグくんだよ! よろしくぅ~♪」
「えーっと、姉さんのテンション、おれ、ついてけない……うー」
「ここはよろしくって言うんだよ、ラグくん!」
「よ、よろしく……? って誰に言って?」
「今日は紅珠ちゃんもいまーす! よろしくね」
「あんた、いつもこんなんにラグ巻き込んでたの? ラグも嫌なら嫌って言いなさい?」
「やじゃない……でも、ついてけない」
とりあえず、意思を持つようにはなってきたラグだったけれど、ライラの言うことに嫌だとは言ったことはなかった。ロスや俺っちには文句を言うようになってきてたし、成長はしたんだろうけど……なんで俺っちには文句言うんだ? メイズと紅珠には言わないのに。まあ、うん。序列かな……
「今日はね、オムライス作るぞー!」
「え、待って? 今からご飯なの!? さっき食べたぞ!」
「私の手料理だよ? ノイズ、食べられない?」
「違う! そうじゃなくて!」
さっき昼飯一緒に食べたの忘れないでほしい。なんでまたオムライスだよ! せめて軽食にしよう!? 変なところでこだわり見せなくてもいいのに、謎のチョイスをしてきたものだ。
「ラグくん、ご飯と一緒に炒める野菜とか切ってくれる? 紅珠ちゃんも」
「ん」
「え、私も?」
ライラの指揮下のもと、着々と作業が進んでいく。思いの外、ラグの手際がよく、普段からライラの料理に付き合っていたから上達したんだろう。紅珠は経験したことがないのが丸分かりで、見ているこっちがはらはらするような手つきだ。
ま、なんやかんやあって、俺っち達の前にオムライスが並べられたわけだけど、メイズの前には紅珠が作ったもの。ロスの前にはラグが作ったもの。俺っちの前にはライラが作ったものが出された。まあ、当然こういう並びになるわけだ。
ライラとラグのものは綺麗な形になっているが、紅珠のは酷かった。何て言うんだろう。卵で包まれてないし、そもそも黄色くない。なんでだろう。見ていた限り、同じ材料のはずなんだけれど。
「紅珠、俺は何を食べさせられるのかな?」
「見ての通りよ。オムライスじゃない」
「へえ? これ、オムライスって言うんだ~? 俺の知ってるオムライスとは別物だね」
「悪かったわね、下手くそで!」
「そう言うけど、食べろって威圧凄いなぁ」
うん、気持ち分かる。けどまあ、普段の仕返しだ。助けは出さん。
「え、マジ!? 俺食べていいの!!」
「うん。消去法。仕方なく」
「可愛い弟の手料理とか幸せすぎ! ありがとう! とりあえず、保存しとくね!」
「今、ここで、食べて」
ロスはなんか変な方に進んだ気がする。大丈夫なんだろうか。
「へへーんっ! 彼女の手料理だぞ~♪」
「こういうときのお前に戸惑ってる」
「ごめんね? 楽しくって♪」
「……そうかぁ」
まあ、楽しそうで何よりだけども。
このあと、三人で色んな意味でひーひー言いながら完食したわけだ。今度からは時間を考えてやってもらったのは言うまでもない。

「んぅ……ノイズ……?」
「? 何? どした」
ライラが異変を訴えたのは特に何でもない日だったと思う。仕事もなく、俺っちの家でのんびりしていたとき。突然、きょろきょろと辺りを見回し始めたのだ。
「探しもん? 何がいるの。ペン? 本とか?」
「ううん。違う」
「じゃあ、どした」
「…………ノイズ、探してた」
「はい? え、精神的に弱ってるとかそういうこと? 珍しいな」
「うーん。案外遠くないかも。最近ね、景色が霞むって言うか、見えにくくて」
ライラが言うには、不意に不安になり、俺っちを探したってことらしい。さっきまで傍にいたのに、いきなりそんなことするものだろうか。なんて不審に思って、ライラを連れて、そのままの足で病院へと向かったのを覚えている。
そこで言われたのは、ライラの視力が急激に下がっていることと、この低下がいつ止まるのか分からないこと。そして、原因は分からないということだった。分かってからは視力低下も早かった。……なんて、こちらが意識してなかっただけで、本人にとっては早いとも思わなかったかもしれないけれど。
結局、ライラの目はほとんど見えなくなるまでになってしまい、必然的に仕事の方も引退せざるを得なかった。仲間はもちろん、この件に関して少なからずショックを受けたものだけれど、ラグも例外ではなかった。
「姉さん、見えないの?」
「うん、そうなの。……あ、でも大丈夫!」
不安げなラグの声を察したらしい、ライラがラグの頭を撫でた。その事が不思議だったようで、ラグは撫でられつつ首を傾げた。
「見えなくても、ラグくんのことは見えてるから! 心の目で見てるから、ばっちりだよ~」
「? こころのめ?」
「ノルン、ラグが戸惑ってるから変なこと言うなっての……気にせんでいいぞ? 単純に今までの経験が役に立ってるだけだから」
「あははっ♪ ノルンってば、面白いこと言うねぇ? そういうの好き~」
「その声はサンだねっ! お仕事行ったのかと思ってたよ~」
「ノルンが心配で行けなかったんだよ?」
「んなこと言って、紅珠に怒られても知らないからな?」
「ありがと、サン。私は大丈夫だよ。今まで通り、生活は出来ると思うし、なんなら、ノイズが助けてくれるもん。ねっ?」
「お、おう」
急に同意を求められて、適当に答えてしまった。間違いではないから、いいけど。
目が見えなくなっても、ライラはライラのままだった。変な行動をするわけでもなく、辺りに怒鳴り散らすなんて、取り乱すようなこともなくて。そこら辺は、ライラ自身の心の強さなんだろうな。



~あとがき~
ワイワイしてたのに、ちょっと暗くなりましたかね。そんなことないのかな?

次回、やっと! 核心をつけそう!

ラグの言葉使いが幼さ(?)を残しつつも、ちゃんとしたものになってきました。成長したんやで!
あと、最後の方さらりときてしまったけれども、まあ、うん……いいか…

ではでは。