鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第44話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際にはご注意ください》





~ノイズによる独白~


「じゃあ、しっかりやんなさいよ。二人とも」
「ノイズ! ラグくんのこと守らなきゃ怒るからね! 絶対だよ!」
「危険を感じたら逃げてね、ラグくーん。そこのアホ達は捨て置いていいから~♪」
紅珠、ライラ、メイズの三人からの有難い(?)お言葉を背に別行動へと移る。目立たないところから中へと侵入するんだろう。前線の役目はそれがスムーズに行くように目一杯暴れることだ。……というか、メイズの奴は一度酷い目に遭ってもいいんじゃなかろうか。
「さてさぁって! 俺達はいつも通りにやるか。気合い入れて行くぞー!」
「なんでそんなに元気なんでしょうかねぇ……? こっちは気が重いんだけど?」
「そりゃ、可愛い弟がいるんだよ!? 張り切るでしょ?」
「アーハイ。ソーデスネ」
「あー……おと」
「お。どーした、ラグ?」
答えを聞く前に俺っちのマフラーを引っ張られ、バランスを崩して思わず転んでしまう。こういうことをする性格ではないから、何事かとラグを見ると隣で同じように伏せていた。ラグを挟んだ方には同じようにラグにやられたらしいロスが大の字になって寝ていた。
「……あの、ラグ? 何し」
言い終わる前に頭上に何か通る音が微かに聞こえる。目線を通ったであろう終着点まで移すと、銃弾の痕が見えた。ラグが教えてくれなければ、殺られていたかもしれない。
「……マジか。なんで分かった?」
「おと、きこえた。でも、さい…さいれんさ? だったとおもうけど」
サイレンサー付きのライフル銃の音を聞き分けた、と言うのだろうか。いやいや、そんなのあり得るのか。サイレンサーの意味は!? 全く音がないわけではないけれど、離れているはずの音を聞き分けられるもんなのか?
「守る側なのに、守られちゃったなぁ……ありがとな、ラグ~♪」
大したことを考えていないらしい、ロスがよしよしとラグの頭を撫でていた。くっそ、呑気め。
「ノイズ、こっから狙えるか?」
「問題ない。ロスは本拠地突入しとけ。後から追いかけるから……ラグは、どうしようか」
「ノイズが連れてきて。ってことでおっ先ー!」
体勢を整えると、メイン武器である長刀を鞘から抜きつつ正面突破していく。毎回思っていたけれど、正面突破以外の方法はなかったんだろうか。

遠くから狙ってきた敵は銃剣の餌食になってもらって、ロスの後を追った。後ろにはちゃんとラグもついてきている。すぐに合流をするとロスの正面には何十人もの敵がわらわらと群がっていた。こういうのを見ると、一体どこにこんなにいたんだろうと考えてしまう。
「おーおー! 助けて、ノイズ~」
全くそんなことを思っていないロスがヘルプを出す。冷ややかな目線を送ってから、ロスの隣に立つ。そして、最小限の確認だけを取った。
「ロス、ここに来るまでに何人始末した?」
「十もないねぇ……ここ、規模ちっさいから、五十人もいないと思う。他と手を組んでなければ!」
「やっぱそうなるか」
「さっさと全員やっつけて、帰ろうかっ」
「そうだな……ラグ、隅っこにいろよ? あ、あと危なくなったら容赦なくいけ、なっ?」
「すみっこ。よーしゃなく。うん。分かった」
ラグの移動を確認してから、本格的に仕事に取りかかった。ここからは片っ端から斬るのみ。ロス達と五年は仕事をしてきて、お互い邪魔しないように立ち回ることは簡単に出来た。ま、たまに流れ弾みたく敵が飛んできたり、仲間が飛んできたりすることはあったけどさ。
それでも、今回は二人だけじゃないことが仇になった。普段なら二人のうちどちらかを狙ってくれるけれど、今は後ろにラグもいた。だから、敵の勢力もラグに向けられるものがあったわけで。……もちろん、そうならないようにロスと全力でやっていたわけだけど、一瞬の隙を突かれた。
俺っちとロスの間を縫って、ラグに一直線に駆け寄る敵がいた。手には剣。腰には抜かれていない拳銃。そんな武装をしているのが見えた。
「やっば! ラグ!」
ぼんやりこっちを見ていたラグは、目の前に迫る敵を見ても動じなかった。それどころかじっと観察するように目線を離さず、その場を動かない。
「死ね、ガキ!」
「それは、きけない。……よーしゃなく、そう言われた」
振りかぶった剣を避けて、相手の頭上へと跳躍。肩車されるように覆い被さると何の迷いもなく、相手の首の骨を折ってしまった。どさりと崩れ落ちた敵の上に着地をすると、落ちていた剣を拾って、心臓を一突き。ここまでの一連の流れに無駄な動きはなく、ものの数秒で片付けてしまう。
「……うわーお」
そんなこと、こちらは全く教えてないはずなんだけどねぇ……? どこで覚えてきたの、ラグ。
こちらの困惑なんて知るはずもなく、何事もなかったようにまた隅っこの方で大人しくなる。
これを見て、ラグはただの子供じゃないって確信をした。今までも疑ってなかった訳じゃない。けれど、確信が持てなかったんだ。あどけない仕草だってするし、感情の起伏がないだけで子供っぽいところはちゃんとあったと思う。……あった、よな?
とにかく、鮮やかな手さばきで軽々と敵を処理してしまったラグを見て、ロスが何を思ったのかは知らない。聞こうとも思わなかったし、そんな気は回らなかった。ただ、思ったのは、そこら辺にいる子供とは全く違う道をラグは来てしまったってことだけ。……今でも何も言わないけれど、いやまあ、言えるわけないんだけど。人体実験なんてろくなもんじゃない。そんなものを短い期間とはいえ、受けてきた可能性があるのだと、思った。



~あとがき~
ここまできて、この話は必要なのかと疑問になってきました。謎。

次回、やっと! 今回に関係ある話をします!
おっせぇぇぇーー!!!

ラグくんはね、天才なんだよ。
……なーんて言葉で納得はしないでしょうが、理由うんぬんはまた今度。まあ、躊躇せずに剣をぐさーなんて子供はできないよなぁ……このときのラグは五歳なんだけども……五歳児怖いね((違う
次回からはラグも成長してますんで、言葉は多くなりますよ。はい。

ではでは。