鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第41話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~ノイズによる独白~


ギルドで修行を積み、実力をつけていくわけだけど、ここでもやっぱり差は出るもので。
一番始めに暗殺者へとランクを上げたのは、サンダースへと進化したメイズとグラエナへと進化したロスだった。ほとんど二人同時で、年は十代前半くらいだったか。次に紅珠。俺っちと続いて、最後にライラ。最後って言っても、十代後半くらいだったし、十分早いんだけど。
ここまで誰一人欠けることなくやってこれたのは奇跡に近いんだと思う。こういう危なっかしい世界だ。簡単に仲間が死ぬ。友人は死ぬし、死ぬまで言わなくとも心が壊れていく。そういう先輩の話はよく聞いたし、後輩も見送ってきた。つまり、強靭な精神力が必要となるわけだ。そこのところ、この五人は全く問題はなかった。メイズは言わずとも、鋼のような精神力だし。ロスも楽観的な性格で、悪い話も重く受け止めることはない。紅珠は父親から叩き込まれた忍耐力があった。俺っちにいたっては、幼い頃からメイズに馬鹿にされてた……というか、いじられまくっていたわけで、それが幸いにも生きている。まあ、屈辱的ではあるんだけども。ライラは持ち前の明るさと、物事の切り替えが早かった。辛いときには人を頼る術も知っていて、賢く立ち回っていたんだ。
そして、この同時期にある転機が訪れる。

ライラが暗殺者として認められて、全員ランクが上がったわけだから、皆でお祝いしようかという話になった。その日、ロスが仕事でいなくて、帰ってきたらしようかと前々から計画を立てていたのだ。ロスにも仕事に行く前、早く帰ってこいと言ってあったはずなんだけど、なかなか帰ってこなかった。
「前から言ってあったのに、あいつ、なんで遅いのよ! 時間にルーズ過ぎる!」
「まあまあ。紅珠ちゃん、落ち着いて? きっと長引いてるんだよ……それか寄り道……かな?」
「寄り道とかあり得ないんですけど!」
「ノルンの言う通りだよ、紅珠。騒いだってロスは帰ってこないよー?」
「うっ……そうだけど」
帰りの遅いロスを怒る紅珠をライラとメイズでたしなめていた。俺っちは三人の会話に入ることはなく、ぼーっとしていた。ロスはマイペースなところがあるし、こうなることはなんとなく予測していたんだ。それに、あいつの性格を今更、嘆いたところで直るものでもない。
四人で……というか、主に紅珠が遅い遅いと文句を言っていると、扉が大きく開いた。その場にいた四人は皆そっちを向く。
「おっそいわよ、ロス!」
「そんなことより、先生いる!?」
「はあ!? そんなことよりぃ!?」
「いないんじゃない? 十二時過ぎてるし、一般的に夜中だよ」
「なんだよ、ロス。怪我でもしたの? だっさ」
この台詞にメイズが笑いながら参戦してきた。
「ノイズに言われたくないんじゃない? この前危なかったじゃーん」
「あれは、お前が面白半分に振り回した斧がかすったからな! 死ぬかと思ったわ!」
「手加減はしたよ。でも避けて欲しかったな~」
「つまり、当てる気満々で振り回したんだ!? ほんと、死んで! 優しさの心貰ってこい!」
「俺はいつでも優しい心持ってるし、慈愛の精神で生きてるつもりだよ~」
「嘘つくんじゃない!」
慈愛の精神があるなら、殺しの場でふざけたり遊んだりしないし、そもそも仲間に向かって武器を投げることはないだろう。……まあ、わざとだってのは分かりきっていることだし、本気で当てに来ているわけではないことも十分理解していた。メイズが本気になれば、慣れていない武器でも人の命は簡単に刈り取れるはずだから。
「サン、ノイズ。脱線しすぎだよ? それで、ロスくんはどうしてメルディ先生を探しているの?」
「こいつ、診て欲しくて……俺、手当てとか出来ないし」
ロスの腕の中にいたのは、幼いイーブイだった。誰が見ても酷い怪我で、これで生きているのか怪しいくらいだった。
「え、拾ってきたの!? 嘘でしょ」
「あは。そんな心あったんだね、ロス。殺しにしか興味ないのかと」
「俺にだって心はありますぅ~! あと、俺が一番好きなことは寝ることでぇ~す。惰眠貪るの楽しいぞ!」
「ロスくん、休日に連絡つかないのはそういうことなんだ……?」
「えっと……それはごめん」
この世界で、可哀想だとかなんだと理由をつけて人を拾うのはよくないことだ。第一にきりがない。こういう仕事をしていれば、必ず被害者は出るし、こちらもある意味、加害者なのだ。だから、情けで助けることはよくないと暗黙のルールとして存在する。それはこの場にいる五人全員知っていたし、今まで一度も手を出したことがない。そりゃ、巻き込まれた人から話を聞いて、警察に引き渡すとか、子供なら施設に連れて行くとかはやるけども。それはあくまで事後処理として。死にかけを助けるなんてしたことがない。
「って、そんな茶番はいいんだよ! どうにかならない? 俺じゃどうにも……」
「私は無理。応急手当じゃどうにもならなそうじゃない。下手に手を出したくない」
「うーん……簡単な手当てじゃ、どうにもならないよね……多分」
「俺っちも無理だぞ。手当て出来るかも怪しい」
「……しょうがない。俺がやったげる」
メイズが重い腰を上げるように、ゆったりと立ち上がるとロスを連れて医務室へと行ってしまう。取り残された三人も後を追う。
「なんで、ロスはこう予測出来ないことするのかしら。こっちに飛び火してるじゃない」
「でも、あの子……どうしてあんなに傷だらけなんだろう? 今日のロスくんの仕事、殺しじゃなかったよね。それなら、そういうことに巻き込まれた子じゃないんだろうけど……」
「そーいや……じゃ、やっぱ寄り道した先で見つけてきて? でも、なんで手ぇ出したんだ」
「さあね。とにかく、どうするか決めなくちゃ……それにちゃんとした手当ても必要でしょうし」
会話をしながら向かっていたから、着いた頃にはメイズの手当ては終わっていて、拾ってきたイーブイはベッドの上に寝かされていた。……まあ、このイーブイがあのラグなんだけどさ。ここでは敢えて、イーブイの男の子ってことで通させてもらうわ。
そのイーブイは、痛々しいほどに包帯が巻かれていて、呼吸も浅い。きっと怪我のせいで熱でも出しているんだろう。
「専門的なことは出来ないから、止血と軽い手当てで終わらせといた。断言は出来ないけど、命に別状はない」
なんでも出来るな、こいつ。なんて思いながら、反対に出来ないことってなんだろうとも考えた。パッとは思いつかないけれど、メイズがいてくれて助かったと思う場面はいくらでもあったものだ。絶対言わないけど。
「で、ロス。このイーブイはどうしたの?」
「んー……思いの外、仕事が長引いてさ。近道しようと思って、山ん中突っ切ってたのね。そんときに見つけた」
「拾った理由は何?」
「気紛れ~」
「嘘つけ」
紅珠の追及に音を上げたロスはひらひらと手を振りながら、イーブイが寝ているベッドに腰かける。
「むー……嘘じゃないよ。第一理由は気紛れだ。でも、なんだろうな。助けなきゃって思ったんだよ。あとは、サンと被った」
「? 俺ぇ?」
「同じイーブイ族だから?」
「族って何よ。……まあ、いいわ。それで。ロスはこれからその子をどうするわけ? 見たところ、一歳、二歳くらいよね」
「引き取るにも、ここにいる全員まだ頭首になった訳じゃないし……親が許さない、もんね」
ライラの言葉にその場にいた全員が黙る。ライラの言った通りだ。家を守っていたのはまだ親だった。後々、継ぐことになっていても、それはまだ先の話だ。今、他人を引き取るどうのと扱える話ではない。だったんだけど、ロスは笑顔でこう言った。
「俺が持ってきた話だ。こいつは俺の弟にする!」



~あとがき~
ラグ、登場です。喋ってないけどね!

次回、まだ続くよ。
ギルドに加入するラグ関連の話です。

明確な年齢をここでは出していませんが、ラグがロスに拾われたのは、ラグが二歳、ロスが十八歳ですね。ノイズ、メイズが同い年なので、十八歳。紅珠は一つ下なので、十七歳です。ノルンの年は公開してませんでしたっけね……まあ、紅珠と同い年だと思います。多分。(深く考えてなかった)

メルディの名前がここで出てきました。つまり、紅珠やノイズ達より年上……あ、いえなんでもないです。ごめんなさい!

ではでは。