鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第40話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~ノイズによる独白~


初めてギルドの前に立ったとき、最初に思ったことは「でっかいギルドだな」だった。そのとき、メイズとライラが何を思ったのかは分からない。メイズはあいっかわらず笑顔で、ライラは少しだけ顔を強張らせていた気がする。
「ねえ、二人とも。早く行こうよ」
メイズのこの言葉で人生初のギルドへと足を踏み入れた。怖気づくような性格でなかったメイズに、このときだけは感謝したし、尊敬をした。
ギルドに入って真っ先にマスター室へと向かっていた。メイズを先頭に二、三歩下がって二人並んで歩いていて、隣ではあわあわして、必死に平常心を保とうとしていた。
「うー……マスターってどんな人なのー」
「さあ? 会ったことない。メイズは?」
「あるわけないでしょ。初対面だよ、初対面」
どこのギルドに入るかは全て親の独断だった。俺っちは親が昔ここにいたから。ライラは俺っちについていく形で選び、メイズは近さで選んでいる。ライラはともかく、メイズの理由は嘘だと思った。メイズの両親は厳しかったのもあるし、近さの理由で選ぶはずがない。まあ、この理由は今でも知らないし、今後教えてくれる訳がない。
「失礼します、マスター。今日から加入するので、挨拶に来ました」
「入りなさい」
低い声で、部屋に入るように促された。やっぱり先頭のメイズが扉を開け、こちらを振り返る。
「準備いい? カイン、ライラ」
「なんで開けてから聞くの? 開ける前に聞けよ」
「ここまで来たら、行くしかないもん。大丈夫!」
踏み込んだ先にいたのは、マスターと近くの棚にもたれかかっていた、マグマラシだ。
「今日からお世話になる、メイズ・フォルテナです。これからよろしくお願いします」
「同じく、カイン・エレクトです。よろしくお願いします」
「ライラ・マアルテナ、です! よろしくお願いします!」
「……ふむ。随分、若い。あいつらは呑気でいいな……私は、ここのギルドマスターにして、紅の一族の長、紅蓮だ。そして、そこのは私の娘で次期マスターの紅珠。君達と、同年代でな。よろしくしてやってくれ」
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あいつら、と言う言葉に当時は引っ掛かったものだが、この場で追及出来るほど、肝は座っていなかった。しかし、後々聞くところによると、俺の母親とメイズの両親はマスターと同期だったらしく、ライラの母親はその後輩だったらしい。つまり、子供を旧知の友に預けたということなんだろう。
ま、これは今になって言える考察であって、当時の俺っち達が知るはずもなく。
「この世界に入るということは、分かっているだろう。……嫌な世に生まれたものだな。しかし、まあ、これも縁だ。紅珠、案内を。世話もしてやれ」
「はい、父様」
今はそんなことないけれど、このときの紅珠はどこか冷めた部分があった。名家として、本家としての重圧があったんだろう。
「……あんた達、この世界でやってくなら、まずは名前を変えなさい。本名を名乗るのは、周りに迷惑がかかるわよ」
「へえ……うん。分かった。他にすることは?」
「順応はやっ」
「……道具はこっちで用意する。武器はそっちで用意して」
「はーい。ちなみに紅珠ちゃんは何使うのー?」
「……拳銃」
「銃か~」
よくもまあ、初対面の相手……御本家様の令嬢に気軽に話せるものだと思う。同姓のライラでさえ、どうしようかと悩んでいたのに。なんだか恐ろしくなってきて、メイズの腕を引っ張り自分の方へ引き寄せた。
「ちょっとちょっと、メイズ!」
「んー? なあに?」
「お前、時々怖いよ!? なんなの!」
「何って、俺は俺だけど」
「やめて。不安になる。なんか不安になるから!」
「あ、あの、紅珠、ちゃん。聞いてもいい、かな」
今まで黙っていたライラが思いきって紅珠に話しかけていた。
「何かしら」
「同年代の子、ギルドにいないの?」
「いなくはないけれど……あいつ、ムカつくのよね。それにこの年で入るのも珍しいわよ」
「そうなんだ」
「まあね。……って、噂をすれば、なんとやらってね。どこいくの、ロス」
紅珠に呼び止められたポチエナはこっちを見て、なんとなく状況を察したみたいだった。
「おーおー! 今日から来るってのは、お前らだったのかー! メイズ! ひっさしぶり!」
知らない相手が笑顔で話しかけてきたことにもビックリだったけど、それよりもメイズの名前が出てきたことに、驚いた。
シエナ。ここのギルドだったんだ?」
「まあな! 後ろの二人はお前の友達?」
「うん。幼馴染み」
「へー! えっとね、俺はシエナ・ウェザーっての! ウェザー家次期頭首でーす♪ あ、ここではロストって名乗ってる。ロスって呼んでくれよ」
「俺達、家の長男で、会合かなんかで顔合わせしたことあるの。だから、お互い名前知ってたんだー」
ウェザー家と言えば、それなりに有名で優秀であると有名な家だった。血筋的にもある本家と近いと聞いたことがあった。
「俺達、同期だな! 末長くやってこーな」
「嫌よ。末長くなんて」
「楽しそうなことになりそうだね~」
「うん。なんだか、馴染めそうな気がしてきた!」
「年近いから、まあ、よかったけど」
これが、皆との出会い。今後ともお世話になる腐れ縁の出来上がりだった。
ギルドに入り、俺っちはノイズと名乗り始め、メイズはサン、ライラはノルンと名乗る。そして、紅珠とロスの五人でよくつるむようになった。やっぱり皆新人で、しかも年が近いこともあって、すぐに打ち解けられた。まだ十歳くらいのときだったわけだし、まだまだ子供。遊んだ後は友達だと言わんばかりの単純さだった。
この五人で仕事に行くことも少なくなかったし、ペアになったりトリオになったり、色々だった。



~あとがき~
ギルド加入まででした。

次回、まだ続きます。
多分、ラグを拾う話からやります。

新しいキャラが出ました。紅珠の父であり、前マスターの紅蓮さんです。ぐれんって呼んでくださいね。まあ、これから出てくるか知らないけどな!
ちなみに、今でも生きてます。だからって出てくるかは分かりませんが。

メイズは顔が広いな~……あと、旧姓も公開です。婿養子なんですけど、自分の家の家督はどうしたんだろう……長男で才能もあって期待されてたのに、それをさらっと放り出すメイズさんでした。ま、自分の家を継ぐより、紅珠と結婚した方が地位は上がりますけどね。でも、そんなことも興味ないでしょうな、メイズは。

ではでは!