鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第39話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~ノイズによる独白~


彼女と出会ったのはお互い五歳になる前。まだまだ子供で、こっちの世界のことはぼんやりとしか知らなかったくらいの年の頃。父親に呼ばれて、顔を合わせたのが初めまして、だった。そして、その席で「お前の婚約者になる子だ」と紹介された。そんなことを言われて、はっきりと意味を理解する子供がどこにいるのだろう? 少なくとも、自分は『婚約者』の意味が分からなかったし、女の子も首を傾げて不思議そうにしていた。
それが、彼女との出合い。ノルン……ライラとの出逢いだった。
言われたからと言って、意識することはない。まず言葉の意味をお互いが理解していないのだから、当たり前だった。どうしようかと考えていたら、ライラの方から話しかけてきた。
「わたしの、なまえは、ライラ。ライラ・マアルテナ、です」
「えっと。カイン・エレクト……」
「カインくん! これから、よろしく、だね!」
こんなどこにでもある自己紹介から始まって、家のこと、家族のこと、自分のことを話した。そのあとは、することもないし、家の庭に出て、意味もなく遊んだのを覚えている。子供だし、それが普通だった。そして、その日を境にライラとは毎日のように一緒に過ごすことになった。

「へぇー? 『こんやくしゃ』ねー?」
「いみ、わかってんの。メイズ」
「あはは。わかるよ。しょーらいをやくそくしたあいて、でしょ」
親戚でもあり、同い年でもあったメイズにライラを紹介した日。ライラは初めての相手に緊張していたようで、あまり口を開かなかった。まあ、メイズと俺っちの間に遠慮していたのかもしれない。傍にはいたけれど、話に割り込むことはせず、黙って傍にいるだけ。しかし、メイズの『将来を約束した相手』という言葉に顔を赤くしていた。多分、俺っちもそう。あまりにもごく自然に、さらりととんでもないことを言う、メイズに慌てたんだと思う。そして、とんでも発言を多分、分かってて言っているメイズはくすくすと楽しそうにしていて。
「カイン、わかりやすーい。まっかっかだよぉ?」
「うるさいなぁ! メイズにはいないのかよ!」
「いるわけないじゃん。そんなしきたり、ぼくんちにはないよーん」
「むかつく!」
「あはは。ライラ、こーんなカインだけど、よろしくしてね。ついでに、ぼくともよろしくね♪」
「あ、はい。よろしく、おねがいします。メイズさん」
幼いながらに、ライラは敬語を使っていた。俺っち相手に使ったのは最初だけだったけれど。そんなライラにメイズは笑っていた。
「しっかりさんだね。でも、ぼくにけいご、いらないよ。とし、ちかいんだし。なまえでよんで」
「メイズ……って、よべばいい?」
「うん。ありがとー」
へらへらと腹立つ笑顔を浮かべて言う。この日から時々メイズが俺っち達の輪に入っては、遊ぶということが増えた。
……こういうの思い出す度、本当にメイズは変わらないんだと思う。メイズは子供の頃から頭がよく、要領がよく、強かで。当時は学校なんてなく、家で専属の教師が勉強を教えていたものだが、たまに三人で授業を受けることも少なくなかった。三人が同じ問題を出されたとき、真っ先に解き終わるのはメイズで、俺っち達を置いて、外で武術の練習をしていたものだ。そしてやっとの思いで終わり、メイズの元へ行くと、遅かったね、なんて嫌味を言うのだ。天才という言葉がついて回るような、そんな奴だったのだ。むかつくメイズにもライラは優しくて。「メイズはすごいんだね」なんて笑顔で言うもんだから、こっちも毒気を抜かれてしまって。また三人でふざけあう。それがギルドに加入する前の日常だった。

「ねぇ……カイン、メイズ。二人はどこのギルドに行くの」
ライラと知り合ってそれなりの月日が経ったとき、不意にそんな話を持ちかけてきた。歳は、九、十くらいだっただろうか。俺っちとライラはピチューからピカチュウへと姿を変えていた。イーブイで気が付いたら、二足歩行をしていたメイズとあまり身長が変わらなくなっていた気がする。ライラがそんな質問をしたとき、その場にはメイズもいて、メイズと顔を見合わせてライラの真意を考えたものだ。どう答えればいいのかと思っていたんだけど、メイズが笑って答えた。
「ギルドはねー……『ラストソウル』だよ。そこが一番近いしさ」
「理由、どうにかしろよな」
「えー? うそじゃないし。それにそこに行けって母さんも父さんも言うし? 長男だからね。俺」
メイズの家は、メイズが優秀過ぎて、他に跡継ぎを作らなかったそうだ。それ故、かなりの重圧がメイズにはあったんだと思う。ま、そんなの全く気にしていないメイズは、好き勝手やっていたんだが。
「カインも、俺と同じでしょ?」
「まぁ……うん」
メイズが行くからと言う理由もあった。だが、第一には、母親が以前加入していたギルドだからというのが一番だったようだ。
「ライラもそこじゃないの? 俺達とは、違うとこ行くの?」
「ううん。一緒……カインがいるんだもん。私はついてくだけから」
メイズの質問に浮かない表情で答える。俺っちは何か嫌なことがあるのだろうと思って、出来るはずもない提案を投げかけた。
「ライラが嫌なら、違うとこでもいーけど」
「あ、違うの! その、嫌、とかじゃなくて。なんだか、変わっちゃう気がして……今はこうして、のんびりして、三人でお話ししてさ。お昼寝とかお勉強とか出来るけど……ギルド入ったら、そんなことも言えないよねって」
要するに、ライラは今の関係がなくなる心配をしていたみたいだ。そんなのは、いらない心配だと言うのに。だから、メイズと二人で大笑いした。
「あはははっ! 今更、離れるとか、別れるとか、無理無理! なくなるわけない。俺とカインの腐れ縁は永遠だよー」
「そうだけどさ……うん。間違っちゃいないけど、キモい言い方するなよ」
「俺達の友情は永遠だぜ、カイン……☆」
「ウザい! わざとだろ、それ!!」
「まあねぇ~♪ 友情っつーか、家の付き合いだし。仕方ないよね。嫌でも付き合わなきゃねー? だって、家族だもんねー? ライラもさ」
「えっ……? でも、私は、まだ……」
「いやいや。いつか、カインと結婚するんだし、俺とも家族だよ~♪」
「ライラとは家族になる。けど、メイズとは縁切ってもいい」
「あは♪ 寂しいよぉ~♪」
こんな悪ふざけにライラの曇っていた表情は簡単に晴れる。メイズと軽く目配せして、合図をする。
「うそつけ!」
「よくわかったね。もちろんうそで~す」
「ふふっ……ありがと、カイン、メイズ。私、二人と一緒なら、なんとかなる気がしてきた。二人に置いていかれないように、頑張るね」
「大丈夫。置いてったりしないよ。一緒に強くなればいいんだ。……ま、メイズは俺っち達のこと、置いていくかもな」
「えー? 心外だな。カインはともかく、ライラのことは待っててあげる。だから、カインより強くなってね。ライラ」
「お前、いっぺん死ね」
「やだよ。生きる~♪」
確かにこんな馬鹿げた会話は少なくなるかもしれない。けれど、メイズがどっかで死ぬようなイメージはなかったし、自分自身もそこら辺のやつよりはマシな方だと思っていた。だから、メイズと二人でライラは守っていけばいいと。そして、いつかは一人だけの力で守れるようになりたいと思っていたんだ。



~あとがき~
幼いノイズがノルンと出会った経緯と二人とメイズとの話でした。ノイズとノルンの出合い~ギルド加入前までですね!

次回もノイズ視点による、過去編です。
ギルド加入からやってくぜ。あ、題名も変えずにやっていきます。ノイズの過去編終わるまではこのままですね。

独白とは、登場人物一人で会話なしに語ること。モノローグのことです。しかし、ここではあえて、過去編のことを指します。会話もありますし、一人語りではないです。まあ、あるキャラ視点であるってところは一人語りなのかもしれませんね。
会話が少なくて、読みにくい部分もあるかもしれませんが、お許しを! 私も模索中なんです(笑)

ノルンはもう死んでしまっているので、こうして過去編にしか登場しません。可哀想なことをした……
ちなみに、ノイズとメイズは親戚同士で、家族ぐるみの関係なので仲がいいです……仲がいいというか、気兼ねない友人関係です。話には書きませんでしたが、ノルンもノイズとは遠い親戚に当たります。血筋的にはノイズとメイズの二人の方が近いですけどね。

ではでは。