鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第30話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~危機~


「にゃ~にゃ~にゃにゃ~♪」
歩き始めて、一、二分くらいが経った。マリちゃんが私に襲いかかることもなく、優しく道案内をしてくれていた。暗くなったから気を付けて、とか、歩くスピードは平気かどうか、とか。普段の先輩より優しいエスコートを受けていた。
……本来なら、敵なんだろう。ギルドが敵と判断するような、裏組織の人なんだろう。コウくんが反応したということは、そういうことなのだから。でも、全くそんな風に見えないのは、優しくされて情が移ったからなのか、マリちゃんの本心なのか。
「にゃ~……にゃっ?」
「マリちゃん……?」
楽しそうに鼻歌を歌っていたのに、ぴたりと歩みと共に止まった。見るからに不機嫌になっていくのも分かる。
「みられてるのだ。そのめ、やなのだー!」
ふっと目の前から消えたと思ったら、右の方からどんっと衝撃が伝わってきた。それと同時にマリちゃんが何かに突っ込んだ音だと気付いた。
「マ、マリちゃーん! あんまり物は壊しちゃ駄目だよ! 物って言うか……自然! 大切に!」
「はーい、なのだよー!」
ひょっこりと草むらから出てきたマリちゃんはずるずる何かを引っ張りながら戻ってきた。それがなんなのか、嫌でも分かる。人の死体だ。ぴくりともしないそれに目を合わせることが出来ず、反射的に目を逸らしてしまった。
「……あの、マリちゃん? それって」
「てき、なのだ。うーん。なんだか、おおいきがする。おーえん、されたのだ??」
「応援……?」
「なかま、よばれたのだよ。たぶん、きっと、そーなのだよー! めーんどーは、たいちょーもふくたいちょーもふくふくたいちょーも……あ、みーもきらいなのにゃ」
嫌がるような表情をした後、ぽいっとゴミでも捨てるように敵だったものを放った。草むらの影に隠れて、私からは見えなくなる。
「おねーさん、みーから、はなれるの、だめだめなのね」
「分かった……」
コウくんを探しに来たときに、嗅いだ嫌な臭いの正体が分かった。血の臭いだったのだ。それも大量に流れすぎていて、生臭く、腐敗したような臭いがしていた。先輩はそれを私に見せないようにしていたのか。……耐性がないから、見せられないと判断してくれたのだ。
優しくないなんて思ったこと、撤回しますね、先輩……!
「うり?」
「今度はどうし……あ」
数人、私達の方に向かってきている。遠目だけれど、武器を持っているのも確認出来た。つまり、マリちゃんの言う、応援、つまり援軍だろう。
「なんだかおーいのにゃ? そんなにいたのだ?」
「いやいや、呑気過ぎるよ!? どこかに隠れないと……あーでも、そんなとこしても無駄、なのかな?」
「かくれんぼのひつようはないのだ♪ みーがころころすれば、ばんばんじーなのだ!」
えっと……ころころ? ばんばんじー? あ、棒々鶏……? いや、そんなのはどうでもよくって!
「危ないことはしちゃ駄目だから!」
「あぶぅ? らいじょーぶい♪」
わ、分かってない! 分かってないよ、マリちゃん! いや、さっきの行動でマリちゃんが強いんだろうなってのは分かったし、木もへし折っちゃうくらい強いのも承知だけど!
「マリちゃんが危ない……怪我するところは見たくないよ。私じゃどうすることも出来ないから、余計に申し訳ないと言うか……あう。その、私の自己満足なんだけど、危険なことはしないで欲しい」
「うにゅ……おねーさん、みーがいたいいたいするの、やなの?」
「うん。嫌だ」
「うー……うーうー……うん。わかった。ころころしない! いたいいたいならないよーにがんばる!」
一頻り悩んだ後、パッと顔を明るくさせながら、私と約束してくれた。
「だから、みー、おねーさんまもるのだ。あんぜん、あんしんに、じっこーするのだ!」
「うん。ありがとう」
……あれ、なんで私、こんなことしてるんだったっけ。敵とも味方とも言えない子と命の危機に晒されてるんだろうか。

危険なことはしないでくれと言ったはいいが、結論から言えば危険なことにはならなかった。マリちゃんは、前から横から襲いかかる敵達を片っ端から倒していた。武器なんて持たず、素手で千切っては投げ、千切っては投げの繰り返し。もちろん、実際に千切ってはないんだけれど、そんな風に思うくらい華麗な手さばきだった。私の心配なんていらないくらい、彼女は強いということなのだ。
「ここに来て、私、なんにもしてないなぁ……」
「にゃーはっはー! おまえたちが、みーにかてるわけないんじゃー♪」
あぁ……めっちゃ笑ってる。楽しそう……
私はというと、マリちゃんから離れた位置にいた。被害が飛んでこないくらい離れている。敵はどこから出てくるのか分からないが減る気配はない。
「ゲームの敵キャラが無限湧きしてるみたいだ……そんなに大きな組織だったのかな……?」
それとも、小さな組織が手を組んでここまでやっている、とか? いや、それはどうなんだろう。そこまでする意味はなんだろう。そこまでする理由なんてないように思える。私の乏しい知識では想像することすら困難だ。考えるための材料がない。
「! おねーさん! うしろ!」
「えっ」
そして、私は気付いた。離れていたとはいえ、ここは戦場であったことを。安全地帯なんてないことを。それに私が気付いたのは、愚かにも事が始まってからだった。
私の背後に二人、剣を構えた敵がいた。恐らく、私の後ろにそっと回ってきたのだ。そして、私はマリちゃんに言われるまで全く気付かなかった。ここから短剣を抜いたとしても対応なんて出来る気がしない。そもそも、対応なんて出来るはずもない。避けようにも、体が反応してくれなかった。
これは……私、どうなるんだ……? 分からないけど、大変なことになるのは確かで……いや、理解してても、信じたくないんだ。
襲いかかるであろう痛みを想像して、思わずぎゅっと目を閉じた。



~あとがき~
もしかしたら、いつもより短いかもしれませぬ。
でもきりがいいので、ここまでです(笑)

次回、背後から襲われたサファの運命は!?

書いてて思ったけど、マリとサファのコンビがなかなかいいですね。サファは普段から紅火相手にお姉さんしてるので、そのノリでマリにも接してます。まだ経験も戦いの知識もないので弱いサファ。誰かに守られるポジションです。お姫様かな?
まあ、本当はマリはもう少し後に出す予定だったんですけどね。出したくなっちゃった☆

敵が誰とか描写しないのは考えるのが面倒なのと、すぐにさよならするモブさんなので、描写していません。その他大勢、みたいな感じなので、読んでる人にお任せします。私も大して考えてませんし。
逆に言えば、描写しているってことは、それなりの役割を持ってるってことですね。きっと、多分、恐らく。

ではでは。