鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第25話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧の際はご注意ください》





~見えぬ景色~


先輩の背中を追って、だんだんと人気のない場所へと移ってきた。町外れの森の中。誰もいない、自然の中。
「ここに、コウくんが?」
辺りを見回してもコウくんの気配どころか、人の気配なんてしない。こんなところにいるのだろうか。
「あそこからかなり離れていたからな。……でも、音が聞こえた」
「音、ですか?」
「町の音と紛れてはいたけどな。あれは銃を撃った音だった。恐らく、紅火が威嚇かなんかで撃ったんだろう」
私には全く聞こえなかったな。……仮に、銃の音だとして、それがコウくんが撃ったとは限らないんじゃ……? 敵かもしれないんですよね。
私がそう言うと先輩は困ったように頷く。
「まあ、それはそうなんだが」
根拠のない自信、勘というやつらしい。先輩にしては、珍しい。こういうときこそ、理論的に、現実的に動きそうなものなのに。
「……俺にだって感情はあるし、予測もする。勘にもすがるときもあるよ」
不満げな私にラグ先輩も不満な顔を浮かべつつ答える。なぜそんな表情を浮かべたのか、理由は私には分からなかった。
「それに……臭いもする」
「におい??」
なんだろ? 何かするかな?
すんすんと周りの臭いを嗅いでみるけど、自然の草の臭いしかしない。普段、町にいるとこんな臭いはしないし、意識もしないから物珍しくはあるけれど。
「あぁ、分かんないのね。なら、いいよ」
え、なんでそんなに残念そうな目で見るんです!? なんで!?
「こんなときに何だけど……お前、なんでこんなとこにいんの。マジ使えねぇな」
「そ、そんなこと言われても分からないんですもん! 私、平均的な能力しかありませんもん!」
「そう。……じゃあ、バトルも平均的な能力あればもっとよかったのに」
はあ、とあからさまに大きなため息をついた。私に分かるようにわざと大袈裟にやっていることも察した。それを見てしまったら嫌でも腹が立つというもので。
「悪かったですね……! でも、これからもっと勉強して先輩をあっと言わせます!」
「えっ? ま、そんな日が来ることを楽しみにしてるわ」
今、一瞬、お前には一生無理だろって思いましたね。絶対思った……!
もう。さっきまで気不味い雰囲気だったのに、今のこれはなんなのか。……先輩が、わざとそんな雰囲気にしているのか、分からないけれど少なくとも話しにくさは完全に消えた。先輩が考えて発言をしていたのなら、それは少しだけ尊敬する、かもしれない。私のことをバカにしたのは許さないけれど、正論なのも事実なんだ。弱さをここで痛感することになるなんて。弱いということがどんなに不幸なことなのか、知っていたはずなのに。
いきなり黙る私に先輩は少しだけ首を傾げ、怪訝な顔を向ける。
「なんか急に黙りこくって怖いんだけど……っ! サファ!」
「え、わっ!? 何ですか!」
私の名前を呼んだかと思ったら、ぐるっと後ろを向かされた。振り返ろうと首をひねろうと思ったけれど、先輩の手によって完全に固定されてしまう。先輩の顔は全く見えない。私の視界に映るのは、今まで先輩と歩いてきた道だけ。
「あー……とりあえず、もっかい聞くわ。この先、俺についてくるんだな?」
「? は、はい……」
今更何を聞いているんだろう。ここまで来たら、帰るなんて選択するはずがないのは、分かっていそうだけれど。
「そうか。俺は帰ることをお勧めするけれど、ついてくるんだな?」
「先輩、しつこいですよ。ついていきます!」
「……ところで、お前は今までにスプラッター映画とか観たことある?」
すぷらったぁ? 新しいスイーツの名前ですか? それとも飲み物の名前っぽいかも? でも、いきなりそんなことを言うなんてどうかしたのだろうか。甘いもの食べたくなった、とか?
「あぁ、そういう反応なのな。……じゃあ、ついてくるなら、目を塞げ」
「え、なんでですか?」
「いいから、ついてくるなら黙って従え」
むう……ここで嫌だなんて言ったら、家に帰れと言われそう。今度こそ、突き返される気がする。それなら、従う方が無難かな。
「はぁい」
そう言って私は両手で目を覆った。いざとなれば見れちゃうけど、まあ塞いでるしいいよね。
なんて思っていたのは甘過ぎた。先輩は私のスカーフを勝手に外すとそれで私の両目を完全に塞いでしまった。
「え、えぇぇ!? 暗い!!」
「塞ぐってことはそういうことだろ。ほら、手」
「え、あ、はい……」
先輩に手を引かれ、この先に進むことになった。全く見えない。音と鼻などの感覚だけが敏感に働く。視界が奪われただけでこんな気分なんだな。

しばらく歩いていると少しずつ嫌な臭いがしてきた。何がとは言えないけれど、説明が出来ない臭い。私が今までに体験したことのない臭いがする。さっき、先輩の言っていた臭いとはこれのことなのだろうか。
「あ、あの、先輩……なんか、変な臭い……」
「そうだろうな」
先輩はそれだけしか言ってくれず、詳しい説明はしてくれない。変わらないスピードで歩くだけ。しかし、突然ふと先輩の手が離れる。私が離したのかと焦ったけれど、恐らく先輩自ら離したのだ。
「な、なんで離すんですか!? 先輩、どこ!」
「お前の斜め前だよ。そこにいろ」
えぇぇ!? なんで!
とりあえず、先輩の言う斜め前を手でぶんぶん叩いてみる。何かに当たることはなく、空しく空を切る。先輩、当たらないように避けているのか。それとも私の側を離れたのか。
「……紅火、これまた派手にやったもんだな?」
「あ……ラグ、さん」
遠くの方でコウくんと先輩の声が聞こえる。周りが静かなせいか聞こえない距離ではない。
「ごめんなさい。なんにも知らなかったみたいです。……俺が聞き出すの失敗したのかもしれないけど」
「あ? んん……いや、本当に知らないんじゃないか? こんなんされてまだ割らないんなら、もっとでかい組織にいるだろ」
「そういうもの?」
「だってお前、ちゃんとしたんだろ?」
「しました……」
な、なんの会話なんだろう。
「じゃ、間違いなく知らないんだ。俺の予想だけど、したっぱは何も知らされずにやらされていたんだろうな。俺達に喧嘩売るってことは、そういうことだ」
「……そうですね。ところで、ラグさんはなんでここにいるんですか? 俺の心配?」
「んなわけねぇだろ。お前を心配する必要がない。ノイズさんの心配しかしてないぞ」
「……あはは♪ そーだよねぇ。……って、え? 姉ちゃん!? なんでいるの!?」
ずっと先輩と話をしていて気付かなかったらしい。まあ、私はコウくんがどこにいるのは全く分からないけれど。
「帰れって言ってもついてくるもんで、連れてきた」
「えぇ……姉ちゃん来るって知ってたらもっと上手くやってたのに。大暴れしちゃった~」
「いつもこんなんだろ、お前は。……で、処理班に連絡は?」
「あ、それはもうしてあります。勝手にやってくれると思います」
処理班……?
「そうか。……ノイズさんはここにいなかったみたいだし、ギルドに戻るか。……紅火はサファ連れて一旦帰る? 日も暮れたし」
えっ!? 結局、お家に帰れと。何が起こっているのか把握出来ないまま、帰るの?
「俺はまだいけますよ?……でも、この件に姉ちゃんを巻き込みたくはないので、帰ります! それに夜目も利きませんし」
えぇぇ!? ちょ、コウくん!?
私の知らないところで、どんどん話が進んでいく。会話に参加しようにも二人がどこにいるのかも分からない。目隠しを取ればいいのだろうけれど、そんなことをしたら、先輩に何されるのかたまったもんじゃない。そもそも、結び目が固すぎて解くことが出来ない。
「懸命な判断だな。じゃ、帰る前に“探知”してくんない? 俺が許可するから」
「! よっしゃ! 了解っす!」
う、うん? なんだか意味が分からなくなってきた。というか、話についていけない……
先輩の言う、“探知”ってなんだろう?



~あとがき~
後半、サファが目隠しされているので描写がありません。が、予想はつくよね?
前回の次回予告と違う? 知らない知らない((

次回、紅火の“探知”の説明!
きっとね! 多分ね!!!

L.Sの小説を書くのが久しぶり過ぎて皆の口調、性格を忘れてます。しんどい……まあ、大丈夫。前の読み返してきたから!
あの、ラグってこんな人だったっけ(汗)

そして今回からってか、冒頭に注意書を載せておきました。そもそもダークな話が多くなる予定なのに載せるのを私が忘れていました(汗)
過去に出した話については編集して付け足しておきます。まあ、今後の話が全てそうだとは言いませんが、一応ね! ジャンルがあれだから!

ではでは。