鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第24話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~紅き炎~


周りに人の気配はせず、誰かいるように思えない道を紅火は一人進む。仕事を一人でこなすことも多い紅火にとってこの様な状況は珍しくもない。その場に立ち止まり、ぐるりと辺りを見回すが、人影はなかった。
「………なめやがって」
ぽつりと呟くと、素早くホルダーから銃を取り出し、天に向け発砲する。夕暮れの森の中。他に音を立てるものなどない空間で乾いた音だけが響く。
「隠しきれてない。そして今、俺は機嫌悪い。とっとと出てこいよ。俺みたいな子ども相手に臆してるのか? あぁ、もしかして、お兄さん達は雑魚なのかな?」
普段仲間に見せるようなことはないであろう笑みを浮かべ、挑発を仕掛ける。基本的にこんなものに引っ掛かる敵もいないのだが、今回はそうではないことを紅火は感じていた。
「誰が来るのかと思っていたら自分から死にに来るとはね。あんたらのギルドも落ちたもんだな」
紅火の斜め後ろの茂みから姿を表した。それに続くようにガサガサと草を掻き分けて姿を表す。種族はまちまちでそれをいちいち確認することは紅火はしなかった。どうせしたところで、すぐに消える相手。覚えたとしても意味はないのだ。
「ノイズさんはどこだ。あんたらの目的は?」
「目的? 殺された仲間の復讐かな?」
「は? ちっさ……そんなんで罪重ねるとか馬鹿なんじゃないの? あんたらの仲間は悪いことしたから消されただけだ。そんなことでノイズさんを巻き込むなよ」
「そんなこと? お前に何がわかる!? お前らもやってることは同じだ!」
敵の言葉を聞いた紅火の心は静かに深く沈んでいく。頭の中がしんと冷たくなっていく感覚。紅火にスイッチが入る。
「だから、何? 別にあんたらみたいに私利私欲で消してない。俺も能力は使ってない。俺達がいるのはあんたらがいるからだ。存在が迷惑なんだよ。分かってる? いなかったら、俺達はいない。存在しなくていい。普通に過ごせるのに……!」
ギルドの仲間達も好きでこんな仕事なんてしていないのに、と心の中で叫ぶ。しかし、そんなことを目の前にいる人達に言ったところで何も変わりはしない。紅火はやるべきことをするために剣を抜く。
「ノイズさんの居場所、吐け。ここにいないことは分かる。吐いてくれた方が楽だから、吐くまで俺は止まんないぞ」
冷たい思考の中で気付いたときには自分以外、誰も立っていないかもしれない、と冷静に分析する。寸前で止められるほど、紅火もお人好しではないのだ。周りにいる敵達がどうしようかと戸惑っているのが手に取るように分かった。そして、いきなり突っ込むようなことは紅火もしない。
「来いよ! 生意気言うお子様の俺を倒してみれば? まあ……あんたらに俺が倒せる可能性はないけどね。理由なんて決まってるじゃん……俺の方が強いから」
最初のやり取りで相手の戦術が甘いことは読めている。恐らくだが、実践経験も紅火の方が圧倒的に多いだろう。人数に頼る戦い方はしてこないと踏んだのだ。正面にいた敵に銃口を向け、最後の挑発を仕掛けた。
「俺はラストソウル、ブラック所属の紅火だ。…………こんなガキに殺られて、地獄で自慢出来るね。お兄さん達?」
「後悔すんなよ、ガキが!」
紅火に向かって一斉に飛びかかる者、警戒してその場から動かない者、遠距離攻撃をしかけようとする者……反応は様々だった。しかし、誰一人逃げ出すような者はいない。ここにいる敵は紅火に負けることは頭にないのだろう。
その選択がどんなに愚かなことなのか知らずに。
「はあ……………どんな敵相手でも、舐めてかかると痛い目見るんだよ。知らないの?」
持っていた銃をホルダーに素早くしまい、剣を両手で構えた。
「………後悔すんのは、どっちだろうね?」

気まずいです。誰かタスケテクダサイ。
確かに先輩の言うことを守らなかった私が悪いんだろうけど、でもでも、私だってギルドのメンバーなんだよ。それだけは分かって欲しい。
私の少し前を歩く先輩は私の方を気にするでもなく、スタスタと歩いている。しかし、不意に先輩が立ち止まり、ある一点を見つめて動かなくなってしまった。
「…………紅火…」
「せ、先輩? コウくんが何か……?」
「何でもない」
先輩はそう言うと再び歩き出す。
まただ。また、残される。
「嘘。こんなに訳の分からないことが起こっているのに、何でもなくないですよ」
「…………仮に何かあったとして、今のお前に何が出来る?」
私の数歩先で立ち止まり、振り返った先輩は冷たい目をしていた。ノイズさんに何かあったと分かってからずっと同じ目を私に向ける。
今の先輩はきっと、裏のお仕事の先輩なのだ。未熟な私を巻き込まないようにしてくれているのだろうか。それとも単純に私が邪魔なのか。その両方なのか。……いずれにせよ、ここで簡単に頷いて帰るわけにはいかない。
「今の私には戦うことは出来ません。……危ないことがあっても、身を守ることも出来ないです。でも、コウくんは私の弟です。気になっちゃ駄目ですか? 心配しちゃ、いけませんか? 何かあったら……嫌…だから……」
だから、私にも背負わせてくれ、と願った。こんなよわっちい奴が何言ってるんだと自覚しつつも思った。それを口には出せなかったけれど。
先輩はしばらく黙っていたけれど、諦めたかのようにふいっと私から目線をはずし、ため息をこぼした。
「………あーもう。じゃあ、もう好きにしろよ。どうなっても知らないからな、俺は」
え、やった……? いいってことだよね!?
「ここでお前に何かあっても知らないから。あいにく、今の俺は手ぶらなんでね。お前を守りきれると断言出来ない。死んだって文句は言えないから」
それだけ言って、それでもいいならついてくれば、と小さく呟いた。諦めた感じの先輩の声は先程の冷たい感じはなく、いつもの先輩の声で。そして私の方を振り向きもせず、また先を歩き始めた。その足が向く方向は私の家ではなく、別の道に逸れている。
「……もう、ここに入った時点でいつかはこうなるって知ってたんだもん。覚悟決めなきゃね」
ぐっと拳を握って気合いを入れ直すと、先輩の背中を追う。何が起こっているのかはよくわからないけれど、よくないことが起こっているのは理解出来る。私の力はまだ小さいから、何が出来るわけではない。それでも、私は……!



~あとがき~
まず始めに。

ほんっっっっとうに、お久しぶりです!!!!!

いやぁ……一年もほったらかしててすいません。見ている人もいないと思うんですけど、一年以上更新していなくてこっちもびっくりだよ。見てなかった私が悪いんだけども。
きまぐれ日記はちょこちょこやってたんですが……こっちは意識が向かなくて。ごめんなさい!
せめて、一年に一回は更新しろよって感じですよね。ごめんなさい……
何か深刻な事情があったとか、そういうわけではなく、単純に時間なくて続きが書けなかっただけですね。時間がねなかったの!! ごめんなさい!
これからは気を付けます(フラグ)

さて、次回は、紅火のいるであろうところに向かったラグとサファの見たものとは!

多分、そんな感じでやっていきます。はい。

今回はあれね。紅火の覚醒(?)が見せられて満足です。普段はアホっぽい子がキリッとなると変な感じがしますね。ギャップかな?
ラグも言うことを聞かないサファにずっとイライラしてましたが、完全に開き直って、勝手にしろ、と言った具合になりましたね。サファを守ると言っていたのにこの適当さはなんなのか(笑)
頑なにサファを巻き込まんと奮闘していたラグもサファに押し負けたって感じなのかね。それとも、今後避けられるものじゃないから今のうちにってことなのかもしれません。多分、後者の理由でしょうか。その判断に悩まされていたのかもですね。
わからんけどね!!

ではでは。