鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第19話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~初めては大変なことにばっかりです~


「基本の構えつっても、人それぞれなんだけど……楽なのは重心を低くして、いつでも走り出せるようにすること。相手の動きを読んで、いつでも前に出られるようにする」
相手の動きを……読めるのか…私は………いやいや、弱気なことを言っている場合じゃないね。言われた通りにやってみよう。
私は腰を落とし、重心を低くしてみる。この体勢がなかなかキツい。普段やらない体勢だからか、いまいちピンときていないというか……難しい。
「形は様になっているな……じゃあ、そっから全力で走って」
「走るんですか!? え…これで?」
「しっかり前に走れよ」
走ること前提でアドバイスされても……走らなきゃなのか。
私は一息つくと、思いきり地面を蹴った。端まで走ったところで、私は先輩の方を振り向く。壁にぶつかりそうになったのは、内緒の方向でお願いします。
「………まあ、いいか。次」
歯切れ悪いと感じたのは私だけでしょうか。
考え込むようにしていた先輩は、手招きをして私を呼ぶ。それに従い、元の場所まで戻ってくる。
「短剣もナイフも同じなんだが、基本的には斬りつけるか突くかの二択。短剣は刃が両方についている分、どちらを向けても大丈夫だ。しかし、同時に自分を傷付ける可能性もあることを忘れるなよ」
もし、斬りつけるときに横にすれば、どちらの方にも刃は向いていることになるのか……
「それと、剣と違って短剣はこちらの小回りが利く。素早く動いて相手を翻弄しつつ、攻撃する……これが基本パターンかな」
「それじゃあ……私はこれから何をすれば…」
「短剣の使い方を覚えること。それと瞬発力を鍛えること。あとは……そうだな…洞察力と体力をつけることかな。翻弄すると言っても、相手の動きがわかっていないと出来ないし、体力ないと動けなくなるし」
そ…そうですね……
結局、何をすればいいのかがわからないけれど……まあ、いいや。なんとかなるでしょ!
「体に叩き込むしかない。瞬発力、洞察力は運動で鍛える。短剣は反復練習かな」
「は、はい……」
「さて……まだ時間あるし…お前がバテるまでやるか」
バテるまで!? いや、もうすでにバテ気味なんですけど……
「知るか。休憩挟んでやるから、続けるぞ」
あうー……でも、出遅れてるみたいなもんだし……よし! 頑張らなくちゃ!
「ご指導よろしくお願いします!」
「………あぁ」

今、何時だろう。
バテるどころの話ではないよ……死ぬって。殺す手段を覚える前に私が死ぬ。
修行場で大の字になって倒れている。倒れているというか、寝ているというか微妙なところではある。
「これでも緩い方なんだが……ま、いいや。今日はこれで終わりにするか」
教えている先輩も私と一緒になってやってくれているのだが、息一つ乱さず、涼しい顔をしている。しかもまだ緩いって……緩いって!
「こ…ここのメンバーの人達ってどんくらい強いんですか……」
「そのまんまだろ。先輩から後輩って感じ。一番強いのは師匠。弱いのはお前だな」
馬鹿にした感じがひしひしと伝わってくる。言い返したいが、あいにく、正論しか言われていない。無念。
上半身を起こし、気を取り直して、ラグ先輩の方を見た。先輩は近くの壁に寄っ掛かって、片手でくるくるとナイフを回している。今日はずっとあれ、持ってるような気がする。
「師匠ってロストさん……でしたっけ。一番先輩さんなんですか?」
「らしいな。っつても、ほとんどマスター達とは差がないらしいけど……今で強さの順位をつけるなら、師匠、マスター、俺、紅火、リアル、シリア、お前。ノイズさんは戦力外」
あ……怪我してて戦えないから……か。
「でも、まだ戦えていたら……マスターと同等の力はある。それは断言出来るな。それにメイズさんがいたら、ギルド最強は師匠と争うことになる……と思う」
マスター達の時代、恐ろしい……
「黄金時代って言われてたな。あそこがピークだったって感じ。今は普通だけどさ……師匠がいるだけ、まだ強いところなんじゃ…」
「お前、自分のことを下に見すぎなんじゃない?」
声がした方を見ると、ノイズさんが顔を覗かせていた。これには先輩も驚いたのか、ノイズさんの方を見たまま反応がない。
「ノイズさん……どうしてここに?」
「あっち行ったらリアルしかいなくってさ♪ ラグに用があったから探してたの」
「………? 俺にっすか」
「そ。俺っちが用ある訳じゃなくて……伝言頼まれた」
ノイズさんはそう言うと、先輩の耳元で伝える。私の方までは全く聞こえず、何を話しているのかさっぱりだ。
ノイズさんが先輩から離れると、先輩は少し困ったように顔をしかめた。
「…………えっ? もう?」
「その反応を見る限り、また手を貸してるな~? どこに加担しようとラグの勝手だけど、あまり無茶するなよ」
「別に無茶してません。いつものことですし……俺はこれで失礼します。サファ、明日も同じことするからな」
それだけを言い残し、修行場を出ていった。残された私は驚きのあまり、開いた口が塞がらなかった。
「あ…あれをまた明日もやるのぉぉぉ!?」
「あははっ♪ サファも大変みたいだな♪」
ノイズさんは笑っているが、私にとっては死活問題なのではなかろうか。明日は絶対、筋肉痛でひいひい言いながら特訓することになるだろう。……そんなの願い下げなんだけど。
「そういえば、ノイズさんは今、帰ってきたんですか?」
「ん? いやいや、もっと前から帰ってきてたよ? ギルドに来たのは今だけど、寮に戻ったのは大分前」
「そうでしたか……あう~…むりぃ~」
「最初はそんなもんだよ。慣れれば楽になるさ」
その慣れが来る前に私は過労死しそうです。
「ははっ♪ サファを見ていると新人だった頃を思い出すな。皆そんな感じで先輩達に指導されたもんだよ」
「それじゃあ、ノイズさんもですか?」
「まあね。当時は厳しすぎて死ぬかと思ったくらい」
それを乗り越えて今がある……ということかな。はあ……先は遠いよ…
べたっとへたりこんでいると、ノイズさんが手を貸してくれた。そして何とか立ち上がると、やっとギルドの方へと戻るために歩を進める。昼前に特訓を始めた気がするが、もう少しで夕方になりそうだった。意外と長いことやらされていたもんだな。
そういえば、先輩はもう、ギルドには帰ってこないのだろうか。そのことが気になったため、ノイズさんに質問してみることにした。
「ノイズさん、先輩、どこに行ったんですか? また加担してるって……どういう…」
「ん? サファにはまだ早いかな? いつか知ることが出来るよ」
あ、はぐらかされた……
「強いて言うなら、ラグは色んなところに糸を張っている。だから、必要とされれば、ギルド外の仕事も受けるのさ。いわゆる、何でも屋、みたいな」
「つまり、ギルドの仕事以外に他の仕事もやっている、ということですか?」
「今はそんな認識でいいと思うよ」
うーむ……先輩についてはまだまだわからないことだらけだなぁ……これから、少しずつ知っていけるのかな。
私とノイズさんは談笑しながら、ギルドに戻っていった。



~あとがき~
無理矢理終わらせた感ヤバいっすね。すみません。

次回、ラグを呼び出した人物とはぁ!?

ラグさんはギルド以外でも色々頼まれることがあります。いや、簡単なお手伝い~とかそういう感じのではなく。
ま、そういうところもこれから紹介できればと思っています。はい。

特に言うことなし!

ではでは。