鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第17話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~みちしるべ~


朝ごはんを食べ、コウくんと途中まで一緒に歩いていた。今日は平日だから、コウくんは学校へ行かねばならない。そんな学生であり、ギルドの先輩でもあるコウくんに昨日のことを相談してみることにした。
「なるほど。武器か~……んー…こればっかりは練習あるのみだと思うな。……んでも、そんなにコントロール出来ないものなの?」
「そんなの、私が知りたいよぅ……そりゃ、体育の成績、二ばっかだったけど」
「姉ちゃん、体育そんなに出来なかったっけか?」
「胸張ることじゃないけど、運動オンチだよ!」
「誇らしげに言うね、姉ちゃん」
そうでもしないと、心折れそうなんだもん。
「んー……俺はね~……って、参考になんないけど、俺の家系は銃を使うのが上手なんだって! だから俺も銃使いなんだ♪」
けど、コウくんって、剣も使うって聞いたよ?
「そだよ~♪ それは新しいこともしたいなーって思って教えてもらった。んで、思いの外、上手く出来たから、一緒に使ってんの」
そうなんだ。やっぱり、親の遺伝ってのあるのかな。私、ないのかもしれない……
「そこはどうなのかわかんないけどね。父さんが何使ってたか知らないもん」
いや、それにしたって、おばさんがそうなんだよね。その遺伝があるのでは……?
コウくんは少し考える仕草を見せたが、結局、わかんない♪ と言われてしまった。当たり前と言えば、当たり前の反応なのだが。
「あ、じゃあ俺、こっちだから♪ 今日はギルド寄って帰るから一緒に帰ろー!」
「わかった。じゃあ、ギルドでね♪ 学校、頑張ってね」
「うん! いってきまーすっ!」
コウくんに向かって手を振りながら、これからのことを考える。
さて、頑張らなきゃ……どうすればいいのか知らないけど。

「おはようございまーす……ってあれ、リアルくんだけ?」
「あ、おはようございます。サファさん。ラグ兄はまだ来てませんよ。ノイズ兄は午後からですね」
ギルドに来てみると、他のメンバーはおらず、リアルくん一人だけだった。ここが広いだけに一人だけ、というのはなんか寂しく感じる。元々、メンバーが少ないのもあるのだろうけれど。
「昨日はどうでした?」
「駄目でした……こんなに運動オンチだったとは思えないくらいの駄目っぷりだったよ」
「れ…練習すれば……なんとかなるかと」
「ここにいる人達、全員、親から受け継いでるとかそんなんでしょ? あ、先輩は違うんだっけ? いやでも、言ってないだけかもだしなぁ…」
リアルくんの近くに座るなり、机に突っ伏した。先輩が来るまでこうしてよ。
「あの………俺とシリア、一般人でしたけど」
「へぇ~……………えっ?」
「いや……その、親とかそういうのじゃなくて、望んでこの世界に来たっていうか…」
リアルくんの告白は驚くなんてもんじゃなかった。私みたいに関係ないところから、この世界に飛び込んだ……なんて。
その話を聞く……なんて不謹慎…かな。
「いいですよ。別に」
「えっ! でも…」
「俺は平気ですよ。でも、話すなら、俺の過去話もついでに聞いてください。繋がるんで」
にこりと笑い、リアルくんが自分のことを話始めた。私が聞いたとはいえ、本当にいいのだろうか。
「……俺達、一応、兄妹なんです。けど、見ればわかると思いますが、俺とシリアは本当の兄妹じゃないです。父親が同じなだけで、腹違いの兄妹、ということですね」
何か事情があるのかな。離婚したとか……?
「んと、俺の父親がだらしない人で……女遊びが激しいというか……十八禁並の話になるんですよ。例えば、家に連れ込んで女の人と………ね?」
私、十八歳じゃないから、わかんないかな~? けどまあ、壮絶人生なのには変わりないか。
「まあ、でき婚ってことで、収まればよかったんですけど、父親の女遊びが収まるはずもなく、俺の母親は出ていきました。俺は母親の顔は知りません。知りたいとも思わないけれど」
お…お父さん……こう言っちゃなんだけど、駄目な人なのか!
私の反応に少し笑みを見せると、話を続けた。
「ま、そのあとすぐ、シリアの母親と結婚して、シリア産んで……でも、同じことの繰り返しでした。そこで父親は俺達のことを捨てたんです。多分、邪魔だと思ったんでしょうね。……父親は多額の借金もしてて、それを俺達に投げました」
……リアルくん。
「それでもよかったんです。あの人に思い入れなんてなかったし。けどまあ……借金取りに追われたり、悪い人達に追われたり、大変でしたね」
淡々と昔話を話していくリアルくんが大人だな、と思うのと同時に寂しいと思った。確かに話を聞く限りいい人に聞こえない。酷い人だと思う。しかし、そこではなく、リアルくんの心情が掴めないことに少し、恐ろしく思う。
「しかし、児童施設に入ってからは結構平和だったんですよ。……でも、いつだったか、悪い人達に捕まったんです。そのときは、シリアはいなくて、俺だけでした。本当、たまたまだと思います。それで廃墟に連れてこられて、拳銃突きつけられたときは、このまま殺されるんだろうなって」
なっ!?
「でも、ラグ兄が助けてくれたんです。……あっちは俺がいることに気づいていなかったみたいで、驚いた顔してましたけどね」

『………子ども? こんなとこで何して…』
『あ…あの……』
『えっ……と…その………あ、見られてた。うへ。どーしよー……怒られる~…』
『! ごめんなさい! 俺のこと……殺しちゃうんですか……?』
『あっ………んと……いや、お前、被害者だろ。巻き込まれただけっぽいし……加担してないなら別に殺す理由はない。が、このまま帰すわけにも…』
『!? ご…ごめ……』
『いやいや!? 泣くなよ! 大丈夫だから。つか、こっちこそごめん……敵に紛れてて、気付かなかった……って言い訳してんな……俺。悪い、怖かったろ?』
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「そう言って、ラグ兄は俺に向かって手を差し伸べてくれました。『大丈夫だ』って何度も言いながら、笑顔を向けてくれました。多分、ラグ兄なりの励ましだったと」
何だろ……先輩、優しくね?
「そのあとは、ラグ兄の簡単な事後処理が終わるのを待ってました。正直、ラグ兄があのとき、何をしていたのか全く覚えてません。ラグ兄は殺さないって言ったけれど、当時の俺はこの人に殺されるってずっと思ってましたから」
恥ずかしそうに笑う、リアルくん。
そりゃまあ、目の前で人が何人も殺されて、自分も殺されるんじゃないかってずっと思っちゃうよな。
「えぇ……でも、ラグ兄の言った通り、殺しませんでした。ギルドに連れていかれて、マスターと会いました。そこで勧誘されたんです」
「唐突だね!? おばっ…じゃなくて、マスターはどんな意図でそんなことを?」
「俺が口外しないかしばらく監視するためかと。ラグ兄は無理に来ることはないって言ってくれたんです。でも、次、同じことがあれば、手段を持たない俺は死ぬんだろうなって」
あぁ……そうか。リアルくんは…
「それに今回は俺だけだったけれど、次はシリアもいるかもしれない。シリアには同じ目を合わせたくなくて。……だから、俺は強くなりたいって思いました」
リアルくんには護るものがあるんだ。だからこんなにも過去と向き合って強くなろうと努力出来るんだ。シリアちゃん、という大切な人を護るためにここにいるんだ。
「俺がここにいるのは、自分を守るため……シリアを護るために……だったんですけど、シリアもなぜだか一緒に入るはめに…」
そういえば……そうだな。シリアちゃんはどうやって接点を持ったんだろう?
「借金取りやらから守る、とマスターが提案して……それでシリアには内緒で俺だけブラックに所属するって約束だったんですが、シリアが嗅ぎ付けて………押しに負けて…」
シリアちゃん、強い。
私の呟きにこくん、と小さくうなずいた。
「まあ、ざっとこんな感じですね。……そこから俺はノイズ兄から剣技を学びました。剣技、と言っても、刀なんですけどね」
ほへ~……んでも、意外と先輩って優しいんだな。私にもたまに優しい感じの見せてくれるけど。
「ラグ兄、根は優しい人ですから。いつもはぶっきらぼうというか、人を寄せ付けませんけど、こちらから近寄れば避けませんしね」
そうなんだ。よし、自分から押していこう。
私が決意していると、リアルくんは、頑張って、と言うように笑ってくれた。
私とリアルくんはしばらく、雑談のようにずっと話をしていた。恐らく、一、二時間くらいだろうか。部屋の扉が開き、先輩が欠伸をしながら入ってきた。
「先輩っ! おはようございます!」
「朝からうっさい」
あうっ……
「ラグ兄、遅かったですね。何かあったんですか?」
「ん~……色々考えて寝落ちした。けどまあ、技術に頼れないなら、技に頼ることにした」
技術も技も同じなのでは。
「お前、エーフィだろ? エスパータイプの技に頼るしかねぇだろ」
あぁ……そっちか。
でも、私、何か技とか使えたっけ?



~あとがき~
久しぶりの挿し絵……なのかな。
なんかもう適当になってきてるし、なくてもいいかなって思い始めている私です(笑)

次回、ラグがサファに戦い方伝授するよ!

リアルとシリアはまあ、別種族なので完全に血が繋がっているわけではない。……のは、見ての通りなんですよ。で、なんでそうなったかってのをつらつらと書いてみました。……もう少し考えろって感じですね。ごめんなさい。
ま、結構複雑環境にいる二人なんですね~
それは他の皆もそうなんだけど。

ではでは!