鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第16話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~実力と夢~


外はもう夜だろうか。ここにいると、時間経過がわからない。が、今はそんなことを考えている余裕はなかった。そんな私の周りには無造作に武器が散らばっていた。危ないと思うだろうが、全て安全な状態のため気にしなくて大丈夫。
私は手と膝をつき、ようは四つん這いになった状態のまま動けなかった。先輩はどうしているのかわからないが、多分、先輩も放心状態だろう。
武器と格闘し、わかったことがある。
私、運動神経ない!
これだけあれば、少しは出来るものがあると思っていたが、その予想を反し、全てにおいて散々な結果を産み出していた。
例えば、銃………は、先程のあれを先輩に言ってみたら、即却下された。次に剣はよろめいていて危ないと止められ、刀も同様の理由で却下。飛び道具は全くのノーコンで話にならなかった。槍は回せず、回ったと思ったら、手元が狂って、先輩の目の前に飛ばしてしまった。(まあ、先輩は飛んできた槍をかわしていたけど。)鞭にいたっては、自分に絡まる始末。もっと酷いことになっていたが、言いたくないので、省略させていただくけれど。
「私って………私って…」
「あそこまで駄目なものか………練習すればなんとかなるか? いやなんか……そんな次元じゃないよな………これからどうしよう。唯一ましと言えるのは、短剣だったが……接近戦ってのがな」
接近戦……あの有り様で接近戦は……
私と先輩のため息が同時に漏れた。そして先輩は若干の疲れを見せつつ、私に近付いてきた。
「サファ、今日はもう帰れ。色々やって疲れたろ? 武器の件はこっちでちょっと考えてみるから」
「…………すいません。お疲れ様でした…」
「おう。気を付けろよ」
ふらりと立ち上がり、出口へ歩く。先輩はまだ残るのか、周りにある武器を手に取りながら、ぶつぶつと何かを言っているのが聞こえた。
「……はあ………どうしよう…ガチで」
………笑えないけど、笑うしかない。
私、ここでやっていけないかもしれない。

家に帰ってきて、誰かに相談する気力もなくベッドに倒れこんだ。
「いや、確かにあれだよ?……体育の成績、ギリギリだったけど………あそこまで駄目なものなんだろうか。もう少し出来てもいいんじゃ~………って、このままだったらどうしよ」
この前、ノイズさんの約束したばっかりなのに。このまま私が武器を扱えないってなったら、ギルド辞めさせられるのかな。そうなれば、ノイズさんとの約束が……いやまあ、あれだよ? ある意味、こういう仕事はやらない方が身のためなんだろうけれど。いやいや、もう頑張るって決めたのにそれはないよ。うん……どうしよ。
ベッドの上でごろごろしながら考えるものの、いい案が思い付くはずもなく。べたっと広がり、うつ伏せになりながら顔をあげた。
「…………もう寝よう」
考えることも嫌になり、ベッドに潜った。先輩が言っていた通り、疲れていたのかすぐに寝てしまった。

こわい。おかあさん、おとうさん、どこ?
いたい。あつい。わかんないよ。
どこを見ても真っ赤で出口もどこだかわからない。出たくても出られない。
目の前に誰か来た。何かを向けている。それが何か知っている。当たれば死んじゃうんだ。だからといって、逃げようとしなかった。怖くて、逃げられなかった。死ぬと思った。ここできっと、終わりなんだと。
けれど、終わらなかった。
また人が来た。その人がやっつけた。私の前まで来て、手を差しのべた。私とよく遊んでくれる、大好きなお兄さんだった。
「ほら、もう大丈夫。一緒に出よ」
おかあさんは? おとうさんは? どこ?
「きっと大丈夫だから……行こう」
やだ。やだ。おかあさんとおとうさんのとこ、いく。つれてって。
「駄目。俺と一緒に出るんだ」
やだ。おねがい。いかなきゃだめなの。
「駄目なものは駄目なんだ。頼むから、言うこと聞いてくれ」
やだ。おかあさんにあうの。おとうさんにあうの。たすけるの。
「…………ごめん」
無理矢理引っ張られ、抱き抱えられ、私の行きたい方向とは逆へと走り出す。
やだ。やめて。こっちじゃない。あっちにいる。つれてってよ! ひとりはやだよ!
「………ごめん。ごめんな」
お兄さんはずっと謝って私を外へと連れ出した。中とは違って、息苦しくなかった。
「俺、あっち戻る。この子頼んだ」
「おい、やめとけ! お前も怪我してんだろ。死ぬぞ!?」
「大丈夫。死なないよ………それじゃ、よろしく」
お兄さんは私を知らない人に預け、戻っていく。私が手を伸ばしても届かない。
おにいさん、まって。わたしもいく……おかあさんとおとうさんにあいたいよ。
中に戻る直前、お兄さんはこちらを振り向き、いつもの優しい笑顔を見せてくれた。
私が見た、最後の笑顔だった。

「………ねーちゃーん? ねーちゃーん? あーさーだーよー?」
「………………ん。うわあぁぁぁ!! ちかっ! コウくん、ちかっ!!」
「だって、いつも起きてくる時間なのにさ、起きてこないんだもん。何かしてやろーかなーって考えながら起こしたんだぜっ!」
ドヤ顔をしながら、ピースを向けてきた。私は呆れつつも、起こしてくれたことには変わりない。コウくんにお礼を言い、一緒に部屋を出た。
「姉ちゃん、今日はのんびりだったね。いい夢でも見てたのー?」
「へ? んー……夢は見てたと思うけど、どんなのか忘れちゃった」
「そっか。ま、いっか♪ 朝ごはん食べよー」
「うんっ」
うーん……どんな夢だったっけなぁ……思い出せない。つまり、そこまで重要なことじゃないんだな。うんうん。というか、夢に重要性なんてあるものなのかな。
さて、今日こそは私の武器、見つけなきゃ!



~あとがき~
さあって、ほぼ扱えていなかったサファちゃん! これからのギルド生活どうするんでしょうね!

次回、ラグが打開策考えている間に、サファとリアルがもう少し仲良くなります。
リアルの過去を話したいね。

途中にあった、回想(?)はサファの夢なのか、はたまた、誰かの思い出話なのか………それは今後に関わるはずさ。
………お兄さんって誰なんだろうね。
すでに出ているかもしれないし、新キャラさんかもしれない。それはご想像にお任せします~

ではでは!