鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第15話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~一人前になるための一歩を踏み出した……のか?~


「………………あ」
確かにそうか、と納得。先輩は特にリアクションもなしにケーキとカップを手に席に座った。一応、一人分ではあるけれど、食べ終わったら、次ってなるのだろうか。
「けど、悠長なことも言ってられない。お前に合う武器、探さないとな」
「やっぱり、そうですよね。どんなのがいいんだろう」
「それは人それぞれだと思います。いくつか試してみないと……」
「リアルくんは刀だよね? いつも持ってるし」
「いつもって訳じゃないですけど……まあ、そうです。俺のメインは刀です。サブは銃とか小太刀ですけど」
小太刀ってなんだろ。
「簡単に言うと、小さい刀みたいなもん。そんくらいわかれ、馬鹿」
あうぅ……
先輩に突っ込まれ、ちょっとへこんでいると、ノイズさんが笑いを押さえきれずに漏れていた。リアルくんも少し困り顔で笑っていた。
私、そんなに面白いことしてる?
「ふふっ……えっと、俺っちは一応、銃剣。サファに聞かれる前に言っておくと、銃の先にナイフがついてるのが一般的に銃剣って言われているやつね。俺っちが使ってるのはちょっと違うけど……」
はえ~……特殊な武器だなぁ……
ここまで聞くと、先輩や他の人のが気になる。
「紅火さんは剣と銃の併用ですね。シリアは鞭。二人ともサブは使ってません」
「ロスはメインは長刀でサブは銃と短剣。紅珠はメインは銃。サブは大剣だっけか? サブのスケールでかいけど」
「俺はメインとか決めてない。時と場合による」
先輩だけオールマイティなんですが……
私が驚いていると、リアルくんが付け足してくれた。
「ラグ兄はなんでも出来ちゃうんです。でも、基本的に狙撃手ですよ。スナイパーってやつです」
「こいつの二つ名、『疾風の銃士』だからな♪」
なんですかそれ! なんかカッコいい!
言われた本人はロールケーキおかわりに行っていて、聞いていなかった。分けようって考えはないらしい。
そんな先輩はおいといて、リアルくんが先輩のことについて教えてくれていた。
「二つ名を聞くと、遠距離型のように思いますけど、ラグ兄が得意なのは接近戦なんですよ」
「? 狙撃手なのに? 狙撃ってことは、遠くから狙う人のことじゃ……」
「そうですよ。でもそれは、腕を買われていたからであって、得意ってことでもないらしいです」
「んでも、あいつの場合、千メータ級の狙撃も難なくこなすよ。これで得意でもないって言われるのって嫌味だよな~」
千メータ……千メートルってことだよな。ってことは、一キロ? 一キロ離れている敵を撃てるってこと? ヤバッ!
「だよね~? ま、手練れだとそれくらい普通らしいけど、それでも一握りだと思うよ。現にここのギルドでそんなこと出来るの、ラグだけだよ」
「ですね。俺も頑張らなきゃです」
私にはきっと無理。遠い敵をやっつけるの無理。恐らく、かなりの集中力が必要だろう。私にそんな集中力はあいにくだが、存在しない。
「私に合う武器って一体……」
私の呟きにおかわりから帰ってきた先輩が反応した。
「試していかないとわかんねぇよ、それ。……時間あるし、今日試してみる?」
「………………えっ」
「お、いいんじゃない? せっかくだし、色々やってみたら?」
ノイズさんが笑いながら勧めてきた。何も言ってこないけれど、リアルくんも黙ってうなずいている。
まあ、いつかはやらなきゃいけないし、いつやっても同じか。よし、やろう。
「はい。よろしくお願いします、先輩っ!」
「………おう。じゃあ、今から行くか」
先輩はヒョイッと残っていたロールケーキを掴み、口に放り込んだ。そしてそのまま、部屋を出ていこうと、扉の方へと歩いていく。そして、その後を追っていく、私。
どこ行くんだろ。
「ギルドの外になるんだけど、修行場ってのがある。ようは闘技場だな。そこを使う」
「へえ……そんなところが。そこって他の人は使うんですか?」
「使うよ。けど、許可証が出てない限り、俺らの貸し切り状態」
「今日はその許可証が出ていないんですか?」
「そう。ま、今日は元々俺が使おうかなって思ってたから、取られる前に借りてた」
なるほど。
そしてギルドの外に出てきて、すぐ横に体育館のような建物がある。広さはなかなかあるが、道具等が見当たらない。学校だったら、倉庫があるけれど、ここにはない。まあ、ここで体育するわけじゃないから、当たり前と言えば当たり前か。
先輩は、自分の肩がけバッグを漁って次々と武器を出していた。銃、剣、飛び道具、鞭……それぞれ何種類も出てきた。…………って、多っ! 先輩のバッグは四次元ポケットなの!?
「ん、刀類と槍類がねぇか。……取ってこよ。ちょっと待ってろ」
あ、はい。
なんか銃、と言っても色々種類があるんだな。他のもそうだけれど、なにが違うんだろう。
「触ってもいいけど、怪我しても知らんからな」
………はい、触りません。
先輩が修行場を出ていき、私一人残された。目の前には先輩が出していた武器の数々が並べられている。なんか危なさそうなやつをちょっと触って………いや、怖いな。
「でも、あれだな……私が扱うんだよね。出来るのかなぁ……自信ないよ」
まあ、こんなのに最初から自信ある人なんて早々いないんだろうけれど。
私はなんとなく、近くにあった銃を手に取る。先輩のことだから、安全装置的なものはしっかりしてあるだろう。しかし、その安全装置を外し、引き金を引けば……きっと弾が出る。その弾が出て、人に当たれば簡単に殺せるはずだ。
ずっしりと重い銃を両手でしっかりと支え、観察していく。持っているだけで緊張しているのか、ドキドキと心臓が脈を打つ。ここまで鳴らなくてもいいのに、と思うくらい速く鼓動していた。
……駄目だ。これ以上は持っていられない。
持っていた銃をあった場所に戻し、胸に手を当てる。当てただけでわかるくらい、ドキドキしている。そして、それにあわせて呼吸も浅くなっていた。
「……はあ…はあ………」
なぜだろう。持っているだけなのにああなるものだろうか。……私ってそこまで繊細なのだろうか。それはそれで嬉しいことではあるが、なにがともあれ、私には銃は向いていない、ということだな。
「ただいま。………? どうした?」
「あっ………いえ! なんでもないですっ」
帰ってきた先輩が首をかしげながら聞いてきた。手ぶらで帰ってきたということは、またバッグの中から出てくるのだろう。そんな先輩にとりあえず、否定した。
いや、なんでもあったんだが、言う必要はないだろうか。いや、言ったところで、試さないとわかんないだろ、とか言ってきそう。
「……………」
「先輩?」
「いや、なんでもない。…………始めるか」
おお……このギルドに入って一週間ちょっとで武器を探すことになるとは。
というか、武器以前に私、戦えるのかな……? ま、なんとかなるか!



~あとがき~
ケーキ食べたの、ラグだけじゃん! まあ、元々ラグあてにあったものですけど……

次回、サファの実力はいかに! って感じかな?
いや、わからないけどさ。

ラグの二つ名……いわゆる、通り名ってやつですが、『疾風の銃士』と書いて『しっぷうのガンナー』って読みます。ガンナーとしても優秀だけど、風のようにしなやかに敵を倒していくからって理由。
他のメンバーにもついてますが、それはまた機会があれば、ということで!

今回、皆のメイン、サブ武器を紹介してみました。ラグ以外、きちんと相棒を決めてるんですよ。いや、ラグにも各種の相棒がいるけどさ。
そして、ノイズさんが言っていた銃剣。本当にあるんですけど、ノイズさんが持っているのは、もう少しファンタジー系ですわ。銃として殺傷能力が低いのかもしれない。ま、使う機会ないからいいか。

銃って持つと緊張するもんなのかなーと思いますが、サファは異常に反応してますね。その理由も本編で語りますよ! 多分っ!

ではでは!