鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第14話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~用事と事実~


サファと別れ、街を一人で歩いていた。仕事のときと格好が違うものの、ギルドで見知った人には普通にバレバレのようで、ちょいちょい挨拶されていた。
ラグは、面倒だなと思いつつ、かといって、関係を壊すのも本心ではないため、軽く返答しつつ目的地を目指す。幸いにもそこまで知り合いに会うこともなく、辿り着くことが出来た。
「ふぅ…………ルピナ、いるだろ?」
「あ、ラグくん。こんにちは~♪ なんか久し振りだね。んと、今日は何をお探しですか?」
ルピナ、と呼ばれたツタージャは頭に花飾りを着け、両腕には花束が抱かれていた。優しそうに微笑みかけるルピナに対し、ふいっと目線を外す。そして、不機嫌そうに皮肉を込め、敬語で話を続けた。
「分かってて聞いてますよね、ルピナさん?」
「うふふっ♪ 分かる? じゃあ、少々お待ちくださいね。お客様♪」
「意地悪だな、ほんと」
「ラグくんほどじゃないもん。どうせ、先輩さん達をいじめてるんでしょー? 駄目だよ、そんなことしちゃ」
「なっ!……いや、最近はしてないし」
「またまた~♪ あ、そこ座ってていいよ」
ルピナに勧められ、ラグは近くにあった椅子に座った。その様子を見て、ルピナはクスリと小さく笑った。聞こえていないだろうと思ったが、ラグと目があったため、聞こえていたか、と舌を出した。
「そんなことより、お前は仕事しろっての」
「えー? してるよ。私、お花屋さんだもん」
「そういうことじゃ……あぁ、もういい」
「ふふ♪ やっぱり、私には勝てないみたいだねっ」
「お前と性格が合わないだけ。それに勝とうとか思ってない」
「強がってる♪」
「ねぇよ! ほら、土産欲しいなら、しっかりと役目果たしてもらおうか」
先程、店で買ったケーキが入った箱をちらつかせる。ルピナは過剰に反応を見せ、作っていた花束そっちのけで、ラグに近づいた。
「ラグくぅん! それ!! くれるの!?」
「欲しかったらそれなりの対価があるんじゃない?」
「大丈夫! いつも以上の花束を作るよっ♪ お姉さんのためのでしょ? それなら、私も力を入れちゃうよ」
「………分かってんじゃん」
ニヤリと笑って見せ、再びルピナから視線を外す。ケーキを見せられたためか、ルピナは鼻歌を歌いながら花束作りを再開した。そんなルピナに苦笑を漏らすものの、それくらい嬉しいものなのは、ラグ自身もわかっていた。
「……よし、完成っ! ラグくん、どうぞ♪」
ラグはルピナから手渡された花束を見た。白とピンクの二色で可愛らしく作られた花束に仕上がっている。そして、花束と同時に渡された白い封筒を見て、少し瞳に影が落ちた。
「あ、それは別件」
「………あぁ」
「今回のは……ラグくんが望むものだと思うよ」
「なるほど。それで、今回は誰か来んの?」
「うん。ヘラ様がね」
「ふうん……ついにあの人が動いたか。けど、そこまでの奴か? 俺一人でもどうにでもしてやるけど」
「きっと動くのはラグくんだけだと思う。あの方はあくまで策士よ。本気で動くことはない」
ルピナはにこりと笑う。それを見てラグはふるふると首を振り、気持ちを切り替えた。
「…………それもそうだな。んじゃあ、そろそろ行く。ほれ、例のやつ」
「わーいっ! ケーキだー♪ ラグくん、また遊びに来てね~」
「用がない限り来ねぇよ」
「むっ……意地悪。けど、それがラグくんなんだよな。仕方ないか」
「よくご存知で。……邪魔したな」
ひらりと軽く手を上げ、ルピナの店を後にした。そして、次なる目的地へと向かった。

しばらく歩いてやって来たのは、町外れにある野原。人の気配もなく、ここだけぽっかりと別世界のように感じた。ラグは立ち止まって周囲を見るが、すぐに歩みを再開させる。
「……久し振りだな。ここ」
花束を片手にルピナから受け取った封筒を弄びながら、小さく呟いた。
そして、野原を抜け、崖の上に出る。ふわりと優しい風が吹き抜けていった。そこから見える風景は近代的な街などは見えず、植物の緑と空の青が幻想的な風景を生み出していた。
ラグは、崖の先にある墓石の前にしゃがみ、花束を置いた。しばらくそのまま黙っていたが、その場に座り語りかけていく。
「……最近来れなくてごめんなさい。ちょっと立て込んでたというか、忙しくてさ。けど、俺は元気だから。もちろん、他の皆も」
そこまで言うと、ラグは立ち上がり優しく微笑んだ。
「だから、心配しなくていい。……あと、もう少し待ってて。きっと俺が終わらせてみせるから………それじゃ、また来ます」
軽く頭を下げ、来た道を戻っていった。そしてギルドに向かうため、足を進めた。

ノイズさんと一緒にまたいつもの部屋に戻ってきた。部屋に戻ると、リアルくんが椅子に座り、本を読んでいるのを見つける。仕事から帰ってきたのだろうか。
「リアルくんっ!」
「……………あ、サファさん。ども……ノイズ兄も」
「おう。仕事終わったのか?」
「はい。まあ………一応。今日のは普通の依頼だったので」
ここで言う、普通とはどちらを指すんだろう。
私が首をかしげていたからか、リアルくんが気付いて説明してくれた。
「普通のって、そのままの意味で……表の仕事のことです。サファさんは見ましたか? ここの掲示板」
「それなら、少しだけ見たよ。色々あったのを覚えているけれど、詳しくは見てないな」
「見てくれたならわかると思います。そこに載っている依頼のことです」
何があったっけ……? 人探しとか、届け物とかだっけ。あ、護衛とかもあったかな。
「はい。それであってます」
リアルくんはにこりと笑い、肯定してくれた。先輩とのギャップがあって、なぜかこちらの方が嬉しく感じる……リアルくん、優しい。
「んー……私、裏の組織だから、普通って暗い方の方だとばっかり思っていたけれど、違うんだね」
「そんなのばかりやってたら、病んじゃいます。少なくとも俺はそんなのごめんです」
「そりゃ、そうだよな。誰だっていい気はしないと思うよ。俺っちもやだし。それに日常化してしまったら、取り返しのつかないことになるからな」
取り返しのつかないこと……?
「殺すという行為が日常化してしまったら、戸惑いがなくなる。そりゃ、仕事だし、戸惑いはない方がいいけれど、本当の意味でなくしちゃいけないものなんだ」
ノイズさんの真剣な顔に大変なことを聞いた、という実感が湧いてきた。リアルくんも少しだけ真剣な目付きで、私を見る。
「もし、殺すことに快感を覚えてしまったら? そのことが日常化して、セーブをかけられなくなり、人の血を欲するようになる。……そうやって壊れてく人もいるんです」
「言いたくないけど、この道長いから、そういう奴ら死ぬほど見てきた。壊れた奴らの末路も知ってるつもりだ。サファも覚えときなよ~…………って、サファ? 大丈夫??」
ノイズさんに覗きこまれ、ハッと顔を上げた。二人が先程と違い、心配そうな顔をしていた。心配させるような顔をしていたのか。ヤバイヤバイ……
「あっ…………はい。なんか怖い話だなって」
「ごっ…ごめんなさい! 怖がらせるつもりは全然なかったんです」
「ううんっ! きっと近いうちに知らされていたよ。大丈夫」
先輩から色々聞いてはいたけれど、それはほんの一部に過ぎない。今、ノイズさんやリアルくんが言っていることも事実。けれど、これもきっと一部に過ぎなくて。他にも知らなきゃいけないことは多いはず。
少しずつでもいいから、知っていかないといけないんだな……
「ま、今のサファじゃ心配しなくてもいいか」
「え? 何でですか?」
ノイズさんの言った言葉の意味を理解したのか、リアルくんもくすりと小さく笑った。
「確かにそうかもしれません」
「えっ? えっ? 何の話?」
「だって、今のサファ……なあ?」
「ですね。今のサファさんなら………です」
何の話だろう……全くわからない。
考えていると、ガチャ、と扉の開く音が響く。そこから、欠伸をしながら先輩が入ってきた。先程、外で見た格好とは違い、いつもギルドで見ている格好になっていた。ここに来る前に家に寄ったのだろうか。
「ラグ兄、こんにちは」
「ちはっす。三人揃って何してんだか……暑苦しい」
「どこがだよ。三人集まって話してただけだろ? もしかして、自分だけ入れなかったことを悔やんでんの?」
「ちょっとノイズさんの言っていることがわからないっすね。誰が何だって?」
「………もういいです。ごめんなさい」
ノイズさん、折れるの早い……
あ、そうだ。先輩に今の話を聞いてもらおうかな。心配しなくてもどうのってやつ。
直で冷蔵庫に向かって、ロールケーキを取り出している先輩に今の話を簡潔に……というか、私なりに伝えた。先輩は準備する手を休めることなく、更に無表情で答えを放ってきた。
「そりゃお前……殺す手段持ってねぇじゃん。心配も何もないだろ」



~あとがき~
今回は色々詰めこんでいますね~……大変だ。
新キャラもちょいちょい出てきてますね。

次回、ケーキ食べながら、武器について色々考えます。
プロフに書いてあるけどね(笑)

ラグが受け取った封筒については、近いうちに明らかになると思いますよ~♪ あと、誰のお墓なのかも。
ルピナがお姉さんって言っていた人なので、女の子には違いない……はずだ。オネェとか特殊じゃない限り。
んーと、いわれる前に言っておこう! ルピナとラグはできてないよ! 二人のお相手は別々にいるはずさ……きっと。

別に二人はサファのことをいじめているわけではないです。脅しているわけでもない。が、そういう世界なんだよって言っているだけなんです。だから、責めないでね!

ではでは!