鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第11話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧の際はご注意ください》





~好きなものを目の前にすると、テンション上がるよね~


心のなかで私が気合いを入れ直していると、先輩がじっと私のことを見つめてきて、困ったような表情をした。
「急に意気込むお前、怖いんだけど」
先輩、ひどいです。まあ、一人で決意していただけだし、別にいいけどね……いいけどねっ!!
「そんで? 他は?」
「ギルドの寮のこと聞きたいです」
「特別なことはなんもねぇよ? 男女別になってて、共同スペースがあるだけだ。……当たり前だが、金は払ってるからな」
「そこにいる人達って遠いところから来てるってことですかね?」
「それが一番の理由なんじゃねぇかな。あとは近いからって理由とか? 家賃を払える奴なら、いい場所だと思うぜ。個室はともかく、寮の掃除は勝手にやってくれるしな」
私はおばさんのところから通えるから、縁のない話だけれども、出稼ぎに来ている人にはありがたい話なのかもしれない。家賃がいくらなのかは気になるところだけれど。
そう思い、先輩に聞いてみると、ふむ、と少し悩む仕草をする。そういう仕草をしている先輩が少しカッコいいな、と思ってしまう。
……何考えてんだか。私は。
「家賃か……部屋の場所や広さや設備によるけど、安くて六、七万じゃねぇかな? 俺んとこは軽く十五万は越えてるんじゃねぇの」
「!? たっか! どんな部屋ですか!!」
「あ? 普通だよ? リビングあってキッチンあってって感じの。一応、風呂とかもあるけど、大浴場行っちゃうな」
普通のマンション並みじゃないですか……! 一人暮らしなのにそんないいとこ住んでるんですね。先輩、滅茶苦茶稼いでる人みたい……
「…………馬鹿にしてんの?」
「いえいえ……全く。そういえば、裏のお仕事ってそれなりに稼げるんですよね」
「命かけてるから」
………ですよね。それなりの報酬っていうのがありますよね。どれくらいっていうのは、聞かないでおこうかな。じゃあ、他に聞きたいこと……
「先輩っていつからギルドにいるんですか?」
「知らなくていい」
ピシャリと即答され、私から目線を外した。完全に踏んではいけない地雷のスイッチを入れた気分だ。気まずい雰囲気が流れる。
……聞いちゃ駄目なとこだったのか。やっちゃった。
「ご…ごめんなさい……」
私は俯きつつ、謝るが、先輩から言葉が発せられることはなく、沈黙が続く。先輩を見ることが出来ず、地面を見た。
そりゃ、むやみに過去を詮索するようなことされたら嫌になりますよね。……私のバカァァァァ……
「…………あーもう。拾われたんだよ」
「ふへ……?」
我ながら、間抜けな返事を返したと思う。先輩は私と目を合わすことはせず、淡々と続けていく。
「衰弱してたとこを師匠に拾われた。んで、色々あって、かれこれ十年以上、この仕事をやってんの。はい、終わり」
「じゅ…じゅーねん……」
「そっちから聞いといて呆然とするなよ。他の人が見てるぞ、恥ずかしい」
先輩に突っ込まれ、顔が赤くなるのを感じた。なんとか平常心を保とうとするが、どうしたら元に戻るのか全くわからない。どうしよう。
「………変なやつ」
「へ…変じゃないですよ!」
「挙動不審」
「これは先輩が変なこと言うからで…」
「本当のこと言ってるだけだ。お前と行動してると、命取りだな」
駄目だ……勝てる気がしない。確かに原因を作ったのは私だし、挙動不審になっているのも事実。
いつかどうにか負かせる日が来るのだろうか……?
「次でお待ちのお客様、店内へどうぞ」
どうやら、話をしている間に順番がきていたようだ。今の先輩とのやり取り、聞かれてはいないだろうか。心配にはなるが、まあ、聞かれたところで困ることもない。少し恥ずかしさが残るだけだ。
「先輩、行きましょ」
「おう」
さっきまでの言い合いはなんだったんだろう、と思うくらい普通に返事をされた。もしかして、遊ばれていた?
「…………サファ?」
「いえ、なんでもないです!」
あぁ……絶対遊ばれていたな。泣きたい。
しかし、こんなところで泣くわけにもいかないため、黙って店内へ入る。店内の内装は、可愛らしい感じだが、特別珍しいものが目に入るわけでもなかった。目の前にあるショーケースには、色とりどりのケーキが綺麗に並べてある。
先輩みたいに大好きってわけじゃないけど、凄く美味しそうなケーキがたくさんある……! まあ、今回の目的はロールケーキだけなんだけどね。
「先輩、どれですか……あれ、先輩?」
「流石……朝から並んで入ると種類豊富…」
つまりは、お昼とか夕方とかは売り切れていて買えないときもあるってことか。というか、ここにきて、言葉足らずになってきてるよ、先輩。
先程まで冷めた目をしていた先輩だったが、多くのケーキを目の前にして、目を輝かせている。まるで、新しいおもちゃを与えられた子供のようだ。そこまで嬉しいものなのだろうか。私には理解しがたいことだが、先輩にとっては、心踊らせるには十分なのだろう。
とりあえず、ショーケースを眺めている先輩は、ほっといてロールケーキを見てみるか。
フルーツと木の実とチョコと抹茶……と普通のか。ロールケーキだけでこんなに種類あるんだな。これ全部買えって言われることはないだろうけど、どれがいいんだろう? 無難に普通のやつ?
「ロールケーキ、どれにするんですか? 私に任せると、普通の選びますけ………あれ? どこ行った?」
私の隣でショーケース見ていたはずの先輩がいなくなっている。あれ? 置いてかれたの、私の方? いやいやいや! おかしくない!? 勝手に引っ張って来たのは私だけれど、黙って行くのは男の人としてどうなの!
「サファ、うるさい。何?」
「うわあ!? ビックリしたぁ……いつの間に後ろに」
「ロールケーキ見始めた辺りから」
かなり始めの方じゃないですか……
気配もなく後ろに回り込むなんて、仕事の影響か何かとしか思えない。いや、実際にそうなのだろうけれども。
「どれがいいんですかね」
「迷うこと言うな……けど、ここ、木の実のロールケーキが一番美味しいんだよ」
「へぇ……フルーツと何がちが………いや! すいません!! 愚問でしたね!」
キッと睨んできた先輩を慌ててなだめる。豹変しすぎだと思うのだが、それほど好きってことなんだろう。今度から気を付けよう。
まあ、木の実だから、モモンとかオレンとかそういうのだよね! うん! けど、フルーツも広く見て木の実の部類だと思うんだ……私。
「じゃ…じゃあ、私、それを買ってきますね? 先に出てますか?」
「いや、俺も何か買うから、先行け」
ロールケーキを私に買わせて、更に別の買うんかい。ロールケーキは約束だとしても、必要か? ピースのやつを買うんだろうけれど、それは今、必要なのか……?
「………これも愚問か」
ここは素直に先に買って、待っていよう。よし、そうしよう。これ以上、変なことを言って、場の雰囲気を壊すのは防がなければ。



~あとがき~
ケーキ買うだけでここまでくるか、普通。
まあ、いいんですけどね~

次回、ケーキ食べたい。

ラグ、いいとこ住んでますよね。
二十歳の一人暮らしだからね? 十五万越えですからね。どんだけ稼いでるねんってね。
いやまあ……百万単位なんだろうが……多分。
でも、十五万って、なかなかの広さだと思う。いや、狙ってるけど。
一人で住むには広すぎると思うんだけど、ラグのことだから、寝室とリビングと仕事部屋みたいに分けてるんじゃないかな。

ラグの過去を少し公開しました。
本人的に言いたくないことではありますが、言っても問題はないようですね。
つまるところ、ロスは兄でもあり、師匠でもあり、恩人でもあるってことになります。なんかいいところを全てかっさらったみたいになってますが……
そういった意味では、ラグはロスに逆らえないような気もする。

あとは、ケーキとか甘いものが沢山あったら、ラグの性格変わります。変わりますって言うか、目が輝きます。
性格は大して変わってないけど、態度が変わる。
イメージ崩壊って感じですね(笑)
クールなんだけど、そういうはっちゃけポイントも必要だと思うんです。はい。
そう思った結果が今回のあれだからね。
うん、微妙!

ではでは!