鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第10話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧の際はご注意ください》





~一人より二人だと思いました~


「ふあぁぁぁ……こんなに人多いもんなんですかぁ……聞いてませんよ。でもそれだけ人気店ってことか」
「ちょっと待て。なんで俺まで引っ張ってきやがった。今日、行くとこあったんだけど?」
「でもでも、暇だよぉぉぉ」
「…………話を聞け! この馬鹿女!!」
「きゃあぁぁぁぁぁ?!」
横にいたラグ先輩の見事なチョップを食らい、私は思わず悲鳴を上げる。その声に周りの人が一斉に振り返った。しかし、そんなことを気にしている場合じゃない。
「うぐぐ……痛いじゃないですか! 私、女の子ですよ? レディーなんです!」
「知るか。俺の話を聞かないお前が悪い」
「…………う」
私と先輩は今、昨日言っていた洋菓子店に並んでいる。一応、開店前から並んでいるのだが、私達が来る前からずらりと並んでいた。
平日だし、少ないと思っていたのだが、ここまでとは思ってもみなかった。更に私達の後ろにも列が出来ているのだから、驚きだ。
「当たり前だ。滅茶苦茶人気だからな。休日はもっとヤバイけど」
そりゃ……そうですよね。
「で、ロールケーキでしたっけ? でも、ロールケーキとかどこの食べても同じなのでは……?」
「…………わかってねぇな。ロールケーキ作んの大変なんだぞ? 力の入れ具合とか、クリームとのバランスとか…」
そんなん知らないですよ。美味しければどこだっておんなじですもん……
私がそう言うと、先輩はため息をつき、憐れむような目でこちらを見てきた。意味がわからず、私は首をかしげる
「悲しい奴だな。………そのまま大人になって死んでくんだろ。悲しいことだよ」
「あっれぇ!? こだわらないだけでここまで言われるの!?」
私の突っ込みに先輩は反応を見せず、私のことを見ることもしなかった。なんか悲しい……
先輩は首にスカーフを巻いておらず、代わりに耳に巻いていた。そしてゴーグルを首にかけ、ブーツは履いているものの、手袋はなし。完全に休日スタイルというか……ギルドに行く気ないのかって感じである。
というか、会ってよくよく聞いてみると、全く行く気がなかったらしく、午前中はギルドの寮に籠るつもりだったらしい。しかし、用事があって外に出てきたところを私に捕まえられた……ということ。
で、今に至る。
その話を聞いて、まず寮なんてあったんだな、と思ってしまった。あとで聞いてみよう。
「大体、先輩がどんなの食べたいか知らないんですもん。私、ここに来るの初めてだし」
「うわ。人生損してる」
「すいませーん……そこまで重要でしょうか?」
「語ってやってもいいが」
「話長そうなんで、また今度聞きます。そんなことより、私、聞きたいこといっぱいあるんですよ! ここで聞いてもいいですか?」
「…………ここで話せることなら」
先輩、嫌々って感じだが、私の要望は聞いてくれるようだ。そこは大人の対応ってことなのだろう。
それでは、お言葉に甘えて色々質問させてもらおう。この前、教えてもらったけれど、他にも知りたいことは多い。
「ギルド入ったときに証明証を貰ったじゃないですか。結局、これって、何なんですかね?」
「読んで字の如くですが」
………いや、そうなんですけどね? そういうことではなくて。
「基本的にはギルドに加盟しているっていう証明。……他には裏のをやってるっていうのもあるし、身分証にもなる。それがあれば、大抵のことは許されるぞ? 入れないようなところに侵入したりとか、極秘資料を見られたりとか」
これ、そんなに凄いんですね……
私は首にかけてあるペンダントのような証明証を掴んだ。同時にお守り代わりのペンダントが揺れる。二つもつけているのは邪魔かな、とも思うのだが、外すことはしたくはない。
これは両親と唯一繋がっていられるものだから。
「…………サファ?」
「ふぁいっ!? なんですか?」
「何か暗いというか辛そうというか……そんな顔してるから。……大丈夫か?」
「大丈夫ですよ! ちょっと思い出に浸ってただけなんで……というか、先輩、心配してくれたんですか?」
「お前に何かあったら、紅珠さんとメイズさん……ついでに紅火に殺されるのは俺だ」
あぁ……そうかもしれない。
そういえば、おじさん、先輩と面識あるってことを言っていたような……いなかったような。でも、先輩からおじさんの名前が出てくるってことは、会ったことあるってことだろうか。
「メイズさんとは面識あるよ。……というか、俺の先輩だし……メイズさん」
「……………えっ?」
「今は引退してるけど、メイズさんもバリバリのやり手だったからな。いや~……強かった強かった。ランク試験は面倒だからって最後のやつは受けなかったけど」
最後のやつ、ということは、始末屋ランクに上がるかどうかの試験……ってことか。というか、試験なんかあるんだ。
試験受けなかった理由があれだけど。
「他に先輩って……?」
「俺が加入したときは、紅珠さんとメイズさん。あとはノイズさんにノルンさん。あと……師匠。その五人が入ってた」
ノルンさんと師匠って初耳です。
ノイズさんは先輩が敬語を使っている時点で何となく予想はしていた。それとおばさんもそうだろうな、と漠然と考えていた。そして、おじさんのことは今ここで聞いた。
残りの二人は初登場なんですけど……
「ノルンさんは今はいない。師匠…ロストさんは長期任務中で留守にしている」
そのノルンさんって人も引退したのかな。
つまり、今現役なのは……
「師匠と紅珠さんの二人。ノイズさんは実質上引退みたいなもんだしな。……あ、でも、紅珠さんも今は活動停止中みたいなもんだから、師匠だけかも」
うわあぁぁぁ……世代交代ってやつですか。
「いや、知らないけど。結局のところ、今ギルドにいて、何年もやってるのは俺だけになるのかな」
ふっと先輩の表情に影が落ちた気がした。私はそれを見て、今まで私と先輩とで生きてきた世界が違うことに、改めて気がついた。
先輩は色んな人の終わりを見てきたのだろうか。同じ仕事をしている人達はもちろん、殺した相手の終わりも数え切れないくらい見てきているんだろう。
そう思うと、切ないというか悲しくなってくる。
きっと、これからもこの先も。
「…………先輩、私、頑張りますね!!」
私が強くなって、先輩のそばにいてあげられたら。きっと、少しでも悲しい気持ちを分けられる。一人で悲しくなるより、二人の方がきっといい。
「? 急にどうしたんだよ。つか、何を頑張るわけ」
「色々ですよ♪」
何があっても大丈夫。
私は先輩のパートナーなんだからっ!



~あとがき~
次回も続きます~♪
まだケーキ買ってないですもんね!

次回、ラグさんの話が続きますよ。

新しい名前が出てきましたね。ノルンさんというらしい。種族とか性別とか、他の部分は不明ですがね。今はギルドにいないようです。
ま、これからの登場に期待だよ☆
ちなみに、ラグが入った頃のブラックの構成も公開されましたが、あれは幼馴染み組ですね。
紅珠、メイズ、ノイズ、ロスト、ノルンの五人組!
そこにラグが入ってくるんですね~

証明証の説明も簡単に入れさせていただきました。
他の使い方は大してないと思いますが、証明証がなければ、ギルド地下の部屋に入れません。あとパスワード。
まだサファは知りませんがね(笑)

ではでは!