鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第3話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧の際はご注意ください》





~なんとなく予想はしていたんです~


マスターの部屋に向かう間、私と先輩は口を開くことなく、ただただ、歩いていた。
ぶっちゃけ、私は何度も話しかけようと試みた。が、それはことごとくに無視られ、私の心も折れたので、黙ることにした。
この人、気遣いって言葉、知らないんじゃないのかな。人としてどうよ、それは。
「いい加減、思ったことを口にするのやめたら? 気持ち悪い」
「なっ……!?」
無表情でスパッと毒を吐かれた。そしてすぐに正面を向いてしまった。
私、この人と上手くやっていける自信ないです。無理。絶対無理。
「……マスター、ラグです。失礼します」
マスターの部屋の前に着き、断ってから扉を開けた。マスターは椅子に座り、にこりと笑っている。いつもと変わらない笑顔だ。
「あら、シュラちゃん。とっても似合っているわよ♪ うん、よかったわ」
「えへへ……」
「マスター。話って何ですか? 俺、仕事あるんですが」
「そうだったわね。では、単刀直入に言うわ。ラグ、シュラちゃんとコンビ組みなさい」
「………………は?」
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マスターの口から放たれた言葉は到底信じられるものではない。あのラグ先輩だって、きょとんとしている。私だってそうだ。コンビを組むってなんだっけ、と変なことを考えてしまう始末。だが、一応確認しておこう。
コンビって……えー……ラグ先輩と…組む……の?
「そ。ラグなら経験も豊富だし、何かと助けになると思うのね? それにラグだって、他人に教えるってことをそろそろ経験しておかないとね♪」
「だからって、こいつじゃなくたっていいじゃないすか! 何の罰ゲームですか!?」
ラグ先輩がこちらを指差しながら、訴える。反対することは構わないのだが、聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。私もマスターに向かって……というより、ラグ先輩に向かって反論する。
「ひどいっ! なんで罰ゲームってことになるんですかー!! 私だってこんな意地悪な人とコンビとか嫌ですよ!」
「お互い、頑固ね~♪ でも、マスター命令よ?」
「んなこと言ったって、この状態で仕事とか無理! これなら、他と組んだ方がましだ!」
「いきなり裏のお仕事なんてさせないわよ。大丈夫よ」
「だから、そういうこ……………はい? 裏?」
裏? それって……裏組織のお仕事のこと?
先輩が表立って出来ないようなことをするって言った……あれ?
「こいつに……させるんすか? それはちょっと…」
「マスター命令」
「いや……でも……強引というか…キツいというか」
「ラグ」
「…………だっ…て……こいつは」
ちらりと先輩がこちらを向いた。今までとは違う目をしていた。何と言うか、心配しているような、不安げな目をしている。少しの間ではあったが、そんな目をされたことがなかったため、戸惑いを覚えた。
え、もしかして……そっちに引き込ませないようにしてる? なにそれ、優しい……
「貴方がついていれば、何とかなる。……いいじゃない。私に対する恩返しってことで」
「……っ! それ言われたら、断れないじゃん。…わかりましたよ……それじゃあ」
「今日のところはメンバー紹介をしてあげてね。ラグの仕事だって今すぐにー……ってやつでもないでしょ?」
「……了解です。…………シュラン、行くぞ」
「え、ちょ……私の意志は!?」
私の優先順位が低いのは大いにわかっているつもりだ。しかし、マスターとラグ先輩の間だけで決められるのも、なんか微妙である。
扉を開け、マスターの部屋を出たところで、ラグ先輩が口を開いた。
「しゃーないだろ。……マスターに逆らえないんだよ」
「いや、私の意志が全くないじゃないですか。もう少し粘って欲しかったと言うか……」
「あれでも粘ったつもりなんだけどな」
ふえぇ……
でもまあ……少なからず反対してくれたのは、嬉しかったけど、やっぱり、ラグ先輩とはコンビ無理だよ。
どうにかその思いを伝えたくて、先輩に意見を仰ごうと、先輩の方を向いた。先輩は近くの壁に寄りかかって、何やら考え事でもしているようだ。しかし、今は私の話を聞いてもらわねば。
「あの……せんぱ…」
「悪い、さっきのは言い訳だ。お前をこっちに引き込む気はなかった。普通に総合ギルド所属だってことでも、よかったはずなのに。……俺の力がないから、巻き込む形になって。………あぁ、これも言い訳か」
「…………え?」
「こうなった以上、コンビ組んでお前のこと、俺が護る。今はそれしか方法がないんだ。こっちの世界で生きるには……それしかない」
「先輩はそれでいいんですか!? 私と組むの、嫌がってたじゃないですか。自分の意見を殺してまで従わなきゃいけないんですか!?」
「そうだよ。従わなきゃなんねぇんだよ。それに……俺がお前と組むのを嫌がったのは…」
そこまで言って、何かを思い出したのか、先輩は口を紡いだ。そして、くるりと方向転換をすると、前を歩き出そうとした。私はその背中に思わず叫んだ。
「先輩!」
「とにかく、そうするしかねぇんだよ。………わかれ、馬鹿が」
「なっ…」
「ついてこい。裏組織のメンバー、紹介するから。……話はそれからだ」
先輩の声が寂しそうで、悔しそうで、やりきれない思いを感じた。あんなに私のことを見下して、馬鹿にしていたのに、どうしてあんなに悲しそうにするのかわからなかった。先輩自身のためじゃなく、私のため?
どうしてなんですか? なんでそんな顔するの……?
コンビ組むことだけが嫌だ、という訳でもないように見えて、よくわからない。
「シュラン、早く来い」
「あ………はい」
ここにきて、ラグ先輩という人がわからなくなってしまった。一体、この人はなんなんだろう?



~あとがき~
案の定、二人はコンビを組むことになりましたね。ってまあ、簡単な紹介にコンビ組んでますよ~……って、言ってましたから、わかるよね。うんうん。
しかし、ラグはシュランにこちら側に来て欲しくなかった模様。必死でしたね、彼。

次回、裏組織のメンバー紹介やったるよ~♪

二人の関係は話が進めば、なんとなくわかってくるかと思っています。
今は互いに信頼はないですが、ラグはラグでシュランを護ってくれるでしょうね。シュランはシュランでさっさとラグを尊敬していただきたいわ。
これからの展開に期待!……されても、面白くはないので、見守ってくれたら嬉しいです。

ではでは!