鈴鳴カフェ

ポケモンの二次創作とオリキャラの小説を連載しています。

last soul 第19話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~初めては大変なことにばっかりです~


「基本の構えつっても、人それぞれなんだけど……楽なのは重心を低くして、いつでも走り出せるようにすること。相手の動きを読んで、いつでも前に出られるようにする」
相手の動きを……読めるのか…私は………いやいや、弱気なことを言っている場合じゃないね。言われた通りにやってみよう。
私は腰を落とし、重心を低くしてみる。この体勢がなかなかキツい。普段やらない体勢だからか、いまいちピンときていないというか……難しい。
「形は様になっているな……じゃあ、そっから全力で走って」
「走るんですか!? え…これで?」
「しっかり前に走れよ」
走ること前提でアドバイスされても……走らなきゃなのか。
私は一息つくと、思いきり地面を蹴った。端まで走ったところで、私は先輩の方を振り向く。壁にぶつかりそうになったのは、内緒の方向でお願いします。
「………まあ、いいか。次」
歯切れ悪いと感じたのは私だけでしょうか。
考え込むようにしていた先輩は、手招きをして私を呼ぶ。それに従い、元の場所まで戻ってくる。
「短剣もナイフも同じなんだが、基本的には斬りつけるか突くかの二択。短剣は刃が両方についている分、どちらを向けても大丈夫だ。しかし、同時に自分を傷付ける可能性もあることを忘れるなよ」
もし、斬りつけるときに横にすれば、どちらの方にも刃は向いていることになるのか……
「それと、剣と違って短剣はこちらの小回りが利く。素早く動いて相手を翻弄しつつ、攻撃する……これが基本パターンかな」
「それじゃあ……私はこれから何をすれば…」
「短剣の使い方を覚えること。それと瞬発力を鍛えること。あとは……そうだな…洞察力と体力をつけることかな。翻弄すると言っても、相手の動きがわかっていないと出来ないし、体力ないと動けなくなるし」
そ…そうですね……
結局、何をすればいいのかがわからないけれど……まあ、いいや。なんとかなるでしょ!
「体に叩き込むしかない。瞬発力、洞察力は運動で鍛える。短剣は反復練習かな」
「は、はい……」
「さて……まだ時間あるし…お前がバテるまでやるか」
バテるまで!? いや、もうすでにバテ気味なんですけど……
「知るか。休憩挟んでやるから、続けるぞ」
あうー……でも、出遅れてるみたいなもんだし……よし! 頑張らなくちゃ!
「ご指導よろしくお願いします!」
「………あぁ」

今、何時だろう。
バテるどころの話ではないよ……死ぬって。殺す手段を覚える前に私が死ぬ。
修行場で大の字になって倒れている。倒れているというか、寝ているというか微妙なところではある。
「これでも緩い方なんだが……ま、いいや。今日はこれで終わりにするか」
教えている先輩も私と一緒になってやってくれているのだが、息一つ乱さず、涼しい顔をしている。しかもまだ緩いって……緩いって!
「こ…ここのメンバーの人達ってどんくらい強いんですか……」
「そのまんまだろ。先輩から後輩って感じ。一番強いのは師匠。弱いのはお前だな」
馬鹿にした感じがひしひしと伝わってくる。言い返したいが、あいにく、正論しか言われていない。無念。
上半身を起こし、気を取り直して、ラグ先輩の方を見た。先輩は近くの壁に寄っ掛かって、片手でくるくるとナイフを回している。今日はずっとあれ、持ってるような気がする。
「師匠ってロストさん……でしたっけ。一番先輩さんなんですか?」
「らしいな。っつても、ほとんどマスター達とは差がないらしいけど……今で強さの順位をつけるなら、師匠、マスター、俺、紅火、リアル、シリア、お前。ノイズさんは戦力外」
あ……怪我してて戦えないから……か。
「でも、まだ戦えていたら……マスターと同等の力はある。それは断言出来るな。それにメイズさんがいたら、ギルド最強は師匠と争うことになる……と思う」
マスター達の時代、恐ろしい……
「黄金時代って言われてたな。あそこがピークだったって感じ。今は普通だけどさ……師匠がいるだけ、まだ強いところなんじゃ…」
「お前、自分のことを下に見すぎなんじゃない?」
声がした方を見ると、ノイズさんが顔を覗かせていた。これには先輩も驚いたのか、ノイズさんの方を見たまま反応がない。
「ノイズさん……どうしてここに?」
「あっち行ったらリアルしかいなくってさ♪ ラグに用があったから探してたの」
「………? 俺にっすか」
「そ。俺っちが用ある訳じゃなくて……伝言頼まれた」
ノイズさんはそう言うと、先輩の耳元で伝える。私の方までは全く聞こえず、何を話しているのかさっぱりだ。
ノイズさんが先輩から離れると、先輩は少し困ったように顔をしかめた。
「…………えっ? もう?」
「その反応を見る限り、また手を貸してるな~? どこに加担しようとラグの勝手だけど、あまり無茶するなよ」
「別に無茶してません。いつものことですし……俺はこれで失礼します。サファ、明日も同じことするからな」
それだけを言い残し、修行場を出ていった。残された私は驚きのあまり、開いた口が塞がらなかった。
「あ…あれをまた明日もやるのぉぉぉ!?」
「あははっ♪ サファも大変みたいだな♪」
ノイズさんは笑っているが、私にとっては死活問題なのではなかろうか。明日は絶対、筋肉痛でひいひい言いながら特訓することになるだろう。……そんなの願い下げなんだけど。
「そういえば、ノイズさんは今、帰ってきたんですか?」
「ん? いやいや、もっと前から帰ってきてたよ? ギルドに来たのは今だけど、寮に戻ったのは大分前」
「そうでしたか……あう~…むりぃ~」
「最初はそんなもんだよ。慣れれば楽になるさ」
その慣れが来る前に私は過労死しそうです。
「ははっ♪ サファを見ていると新人だった頃を思い出すな。皆そんな感じで先輩達に指導されたもんだよ」
「それじゃあ、ノイズさんもですか?」
「まあね。当時は厳しすぎて死ぬかと思ったくらい」
それを乗り越えて今がある……ということかな。はあ……先は遠いよ…
べたっとへたりこんでいると、ノイズさんが手を貸してくれた。そして何とか立ち上がると、やっとギルドの方へと戻るために歩を進める。昼前に特訓を始めた気がするが、もう少しで夕方になりそうだった。意外と長いことやらされていたもんだな。
そういえば、先輩はもう、ギルドには帰ってこないのだろうか。そのことが気になったため、ノイズさんに質問してみることにした。
「ノイズさん、先輩、どこに行ったんですか? また加担してるって……どういう…」
「ん? サファにはまだ早いかな? いつか知ることが出来るよ」
あ、はぐらかされた……
「強いて言うなら、ラグは色んなところに糸を張っている。だから、必要とされれば、ギルド外の仕事も受けるのさ。いわゆる、何でも屋、みたいな」
「つまり、ギルドの仕事以外に他の仕事もやっている、ということですか?」
「今はそんな認識でいいと思うよ」
うーむ……先輩についてはまだまだわからないことだらけだなぁ……これから、少しずつ知っていけるのかな。
私とノイズさんは談笑しながら、ギルドに戻っていった。



~あとがき~
無理矢理終わらせた感ヤバいっすね。すみません。

次回、ラグを呼び出した人物とはぁ!?

ラグさんはギルド以外でも色々頼まれることがあります。いや、簡単なお手伝い~とかそういう感じのではなく。
ま、そういうところもこれから紹介できればと思っています。はい。

特に言うことなし!

ではでは。

last soul 第18話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~戦い方は人それぞれです~


「………技、ですか。でも…」
「使える使えないの問題じゃねぇんだよ。使えるようにしないと、お前が死ぬだけなんだからな」
私が続きを言う前に先輩はストレートに正論をぶつけてきた。そりゃそうだ。戦いの手段を知らなければやられるのみ。……なのは、わかっているんだけれど。
「仮に使えるとして……どう頼るんですか?」
「技で相手の動きを制限したり、予測したり……だな。そういうのは、殺しの技術でやってもらいたいんだが、無理だってのが昨日のではっきりしたから」
あう。
先輩はどこからか取り出したナイフを弄びながら、私達に向き合った。そして、くるりとナイフを回し、私に向けた。
「これから俺が教えてやる。短剣の使い方もな」
「サファさんは短剣使いってことですか」
「一番ましだったからな」
先輩は、半ば諦めているかのような声でリアルくんに説明をした。それは仕方のないことだとはいえ、軽くヘコむのはおかしいだろうか……
「えっと、技を使うことはおかしいことじゃないですからね。特にサファさんのようなエスパータイプなら」
リアルくんのフォローに私は驚きを隠せなかった。私の反応に気が付いたのか、リアルくんは私に説明してくれた。
「俺もシリアも電撃を使うことがあるので。なので、珍しい話ではないんです。……ですよね、ラグ兄」
「まあな。相手の動きを鈍らせるのは一般的な考えだし……ま、俺には有効な技がないが」
「ラグ兄には“どくどく”があるじゃないですか」
リアルくんに言われると、そうだけど、と小さく呟いた。先輩はあまり、技を補助として使うことがないのだろうか。
「でも技に頼る時間がもったいないじゃん。それなら、有効な技を覚えるより、殺しの技を覚える」
「ラグ兄はそれで調律されていますけど……全員が全員、そういうわけではありませんしね」
「…………そりゃそうか。現に目の前にいるし」
先輩はそう言うと私の方をじっと見てきた。妙に納得している感じなのが腹が立つが……事実なのだから仕方がない…か。
「とりあえず修行場に行くぞ。今日は簡単な扱い方だけでもマスターさせてやる」
「あ、はい……」
私と先輩はリアルくんをその場に残し、部屋を出た。リアルくんは頑張って、と言うように笑って送り出してくれた。
昨日が散々な結果だったから、全く気乗りしない。しかし、先輩は私を気遣う気がないのか、くるくるとナイフをペン回しするかのように扱っていた。滅茶苦茶危ないと思うのだが、落とす気配は全くない。
先輩みたいに、とはいかなくても、どうにか戦えるくらいにはなりたいと思う。……思うけど…私はまだ、この仕事のことをきちんと理解したわけではないのだ。恐らくそれを理解するのは、自分の目で実感したあと……そんな気がする。

修行場につき、早速、短剣の使い方を習うことになった。短剣、と言ってもやはり色々な種類があるようで、先輩がずっと弄んでいたナイフはもちろん、それよりも小さいやつもあれば、大きいものもある。私は先輩が持っていたやつより少し大きいものを手に取った。
「………そもそも、短剣とナイフは別物なんだよな」
「え? 同じなんじゃないんですか?」
「お前が持っているのは短剣だよ。……俺の持っているのはナイフ。それの区別はわかるか?」
「いや、全く。短剣=ナイフって思ってました」
「……短剣は“dagger”だ」
だがー?
「発音悪いな……まあ、いいけど。短剣は対人用武器のことを指し、ナイフは日常的刃物を指す。短剣には諸刃が両面にあるけど、ナイフは片方だけなんだ。ほれ」
先輩が差し出したナイフの刃の部分を見てみると、確かに片方にしかついていたない。よく見る包丁とかそんな感じのやつだ。包丁よりは小さいナイフだけれど、よく見れば違うのがわかった。私がうなずくのを確認し、またナイフをくるくると回しながら説明を再開した。
「実を言うと、短剣って殺傷能力が低いんだよな。主にサブとして使われることが多い。接近武器だし、それなりの技術もいる。接近戦になるだろうから体術も覚えた方がいい」
「そんな大変な武器を私に……?」
「暗殺において、一般的には銃が適していると言われている。けど、お前が使えないんじゃ仕方ないだろ。文句言うなら自分の能力の低さを恨め」
あう。まあ、銃が適しているのはなんとなくわかりますけど……
「ま、人それぞれの向き不向きはある。それに俺は使い手によって、暗殺に適している武器、というのは変わると思っている。俺にはどれがいいかなんてわからないからさ」
先輩には選択肢が沢山あるみたいですしね。……そりゃ、そうなりますよね。
思いきり嫌味たっぷり&皮肉たっぷりを込め、言ってやるが、ラグ先輩は全く動じず、知らんぷりされた。反応がないと、恥ずかしくなってくるから不思議である。
というか、今の私、滅茶苦茶子供っぽい……
「基本動作、構えは教えてやる。そこからどうするかは……わかっているな?」
はぁい……頑張りまーす…
私のやる気のない返事に、先輩は無言で私の後頭部を叩いた。更にじろりと睨まれ、私の立場はないことを確認させられた。
しかし、さっきの説明からすると、私みたいな運動神経ゼロのやつに扱える代物なのだろうか。無理なように聞こえたのは私だけなのだろうか。
いやいや、弱気になるな自分! 先輩が選んだのだから、まだましな方なんだろう。そこから私がどこまで伸びるかが問題なのだ。頑張れ、私。負けるな、私!



~あとがき~
修行シーンとか書くのめんどいので、簡単にやっちゃいたいと思います。描写少なかったら、想像力を働かせてくださいn((殴

次回、ラグとサファで修行とか。メンバーの実力の話とか。次の章への布石とか。

運動神経ゼロのサファにラグはどうするんでしょうね。なんだかんだ、ラグの悩みの種になりそうです。サファが。

ラグは自分の技を出すより、武器で戦った方がいいと思っています。さらに、技だけって言われると、ラグの戦闘力半減すると思ってください。……打撃戦ならいつも通りなんですけどね。
半減つっても、元がすこぶる高いので、半減していても、常人以上だと思いますがね。
サファはこれからに期待です。……え、心配? うん、私もだよ!

ではでは。

last soul 第17話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~みちしるべ~


朝ごはんを食べ、コウくんと途中まで一緒に歩いていた。今日は平日だから、コウくんは学校へ行かねばならない。そんな学生であり、ギルドの先輩でもあるコウくんに昨日のことを相談してみることにした。
「なるほど。武器か~……んー…こればっかりは練習あるのみだと思うな。……んでも、そんなにコントロール出来ないものなの?」
「そんなの、私が知りたいよぅ……そりゃ、体育の成績、二ばっかだったけど」
「姉ちゃん、体育そんなに出来なかったっけか?」
「胸張ることじゃないけど、運動オンチだよ!」
「誇らしげに言うね、姉ちゃん」
そうでもしないと、心折れそうなんだもん。
「んー……俺はね~……って、参考になんないけど、俺の家系は銃を使うのが上手なんだって! だから俺も銃使いなんだ♪」
けど、コウくんって、剣も使うって聞いたよ?
「そだよ~♪ それは新しいこともしたいなーって思って教えてもらった。んで、思いの外、上手く出来たから、一緒に使ってんの」
そうなんだ。やっぱり、親の遺伝ってのあるのかな。私、ないのかもしれない……
「そこはどうなのかわかんないけどね。父さんが何使ってたか知らないもん」
いや、それにしたって、おばさんがそうなんだよね。その遺伝があるのでは……?
コウくんは少し考える仕草を見せたが、結局、わかんない♪ と言われてしまった。当たり前と言えば、当たり前の反応なのだが。
「あ、じゃあ俺、こっちだから♪ 今日はギルド寄って帰るから一緒に帰ろー!」
「わかった。じゃあ、ギルドでね♪ 学校、頑張ってね」
「うん! いってきまーすっ!」
コウくんに向かって手を振りながら、これからのことを考える。
さて、頑張らなきゃ……どうすればいいのか知らないけど。

「おはようございまーす……ってあれ、リアルくんだけ?」
「あ、おはようございます。サファさん。ラグ兄はまだ来てませんよ。ノイズ兄は午後からですね」
ギルドに来てみると、他のメンバーはおらず、リアルくん一人だけだった。ここが広いだけに一人だけ、というのはなんか寂しく感じる。元々、メンバーが少ないのもあるのだろうけれど。
「昨日はどうでした?」
「駄目でした……こんなに運動オンチだったとは思えないくらいの駄目っぷりだったよ」
「れ…練習すれば……なんとかなるかと」
「ここにいる人達、全員、親から受け継いでるとかそんなんでしょ? あ、先輩は違うんだっけ? いやでも、言ってないだけかもだしなぁ…」
リアルくんの近くに座るなり、机に突っ伏した。先輩が来るまでこうしてよ。
「あの………俺とシリア、一般人でしたけど」
「へぇ~……………えっ?」
「いや……その、親とかそういうのじゃなくて、望んでこの世界に来たっていうか…」
リアルくんの告白は驚くなんてもんじゃなかった。私みたいに関係ないところから、この世界に飛び込んだ……なんて。
その話を聞く……なんて不謹慎…かな。
「いいですよ。別に」
「えっ! でも…」
「俺は平気ですよ。でも、話すなら、俺の過去話もついでに聞いてください。繋がるんで」
にこりと笑い、リアルくんが自分のことを話始めた。私が聞いたとはいえ、本当にいいのだろうか。
「……俺達、一応、兄妹なんです。けど、見ればわかると思いますが、俺とシリアは本当の兄妹じゃないです。父親が同じなだけで、腹違いの兄妹、ということですね」
何か事情があるのかな。離婚したとか……?
「んと、俺の父親がだらしない人で……女遊びが激しいというか……十八禁並の話になるんですよ。例えば、家に連れ込んで女の人と………ね?」
私、十八歳じゃないから、わかんないかな~? けどまあ、壮絶人生なのには変わりないか。
「まあ、でき婚ってことで、収まればよかったんですけど、父親の女遊びが収まるはずもなく、俺の母親は出ていきました。俺は母親の顔は知りません。知りたいとも思わないけれど」
お…お父さん……こう言っちゃなんだけど、駄目な人なのか!
私の反応に少し笑みを見せると、話を続けた。
「ま、そのあとすぐ、シリアの母親と結婚して、シリア産んで……でも、同じことの繰り返しでした。そこで父親は俺達のことを捨てたんです。多分、邪魔だと思ったんでしょうね。……父親は多額の借金もしてて、それを俺達に投げました」
……リアルくん。
「それでもよかったんです。あの人に思い入れなんてなかったし。けどまあ……借金取りに追われたり、悪い人達に追われたり、大変でしたね」
淡々と昔話を話していくリアルくんが大人だな、と思うのと同時に寂しいと思った。確かに話を聞く限りいい人に聞こえない。酷い人だと思う。しかし、そこではなく、リアルくんの心情が掴めないことに少し、恐ろしく思う。
「しかし、児童施設に入ってからは結構平和だったんですよ。……でも、いつだったか、悪い人達に捕まったんです。そのときは、シリアはいなくて、俺だけでした。本当、たまたまだと思います。それで廃墟に連れてこられて、拳銃突きつけられたときは、このまま殺されるんだろうなって」
なっ!?
「でも、ラグ兄が助けてくれたんです。……あっちは俺がいることに気づいていなかったみたいで、驚いた顔してましたけどね」

『………子ども? こんなとこで何して…』
『あ…あの……』
『えっ……と…その………あ、見られてた。うへ。どーしよー……怒られる~…』
『! ごめんなさい! 俺のこと……殺しちゃうんですか……?』
『あっ………んと……いや、お前、被害者だろ。巻き込まれただけっぽいし……加担してないなら別に殺す理由はない。が、このまま帰すわけにも…』
『!? ご…ごめ……』
『いやいや!? 泣くなよ! 大丈夫だから。つか、こっちこそごめん……敵に紛れてて、気付かなかった……って言い訳してんな……俺。悪い、怖かったろ?』
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「そう言って、ラグ兄は俺に向かって手を差し伸べてくれました。『大丈夫だ』って何度も言いながら、笑顔を向けてくれました。多分、ラグ兄なりの励ましだったと」
何だろ……先輩、優しくね?
「そのあとは、ラグ兄の簡単な事後処理が終わるのを待ってました。正直、ラグ兄があのとき、何をしていたのか全く覚えてません。ラグ兄は殺さないって言ったけれど、当時の俺はこの人に殺されるってずっと思ってましたから」
恥ずかしそうに笑う、リアルくん。
そりゃまあ、目の前で人が何人も殺されて、自分も殺されるんじゃないかってずっと思っちゃうよな。
「えぇ……でも、ラグ兄の言った通り、殺しませんでした。ギルドに連れていかれて、マスターと会いました。そこで勧誘されたんです」
「唐突だね!? おばっ…じゃなくて、マスターはどんな意図でそんなことを?」
「俺が口外しないかしばらく監視するためかと。ラグ兄は無理に来ることはないって言ってくれたんです。でも、次、同じことがあれば、手段を持たない俺は死ぬんだろうなって」
あぁ……そうか。リアルくんは…
「それに今回は俺だけだったけれど、次はシリアもいるかもしれない。シリアには同じ目を合わせたくなくて。……だから、俺は強くなりたいって思いました」
リアルくんには護るものがあるんだ。だからこんなにも過去と向き合って強くなろうと努力出来るんだ。シリアちゃん、という大切な人を護るためにここにいるんだ。
「俺がここにいるのは、自分を守るため……シリアを護るために……だったんですけど、シリアもなぜだか一緒に入るはめに…」
そういえば……そうだな。シリアちゃんはどうやって接点を持ったんだろう?
「借金取りやらから守る、とマスターが提案して……それでシリアには内緒で俺だけブラックに所属するって約束だったんですが、シリアが嗅ぎ付けて………押しに負けて…」
シリアちゃん、強い。
私の呟きにこくん、と小さくうなずいた。
「まあ、ざっとこんな感じですね。……そこから俺はノイズ兄から剣技を学びました。剣技、と言っても、刀なんですけどね」
ほへ~……んでも、意外と先輩って優しいんだな。私にもたまに優しい感じの見せてくれるけど。
「ラグ兄、根は優しい人ですから。いつもはぶっきらぼうというか、人を寄せ付けませんけど、こちらから近寄れば避けませんしね」
そうなんだ。よし、自分から押していこう。
私が決意していると、リアルくんは、頑張って、と言うように笑ってくれた。
私とリアルくんはしばらく、雑談のようにずっと話をしていた。恐らく、一、二時間くらいだろうか。部屋の扉が開き、先輩が欠伸をしながら入ってきた。
「先輩っ! おはようございます!」
「朝からうっさい」
あうっ……
「ラグ兄、遅かったですね。何かあったんですか?」
「ん~……色々考えて寝落ちした。けどまあ、技術に頼れないなら、技に頼ることにした」
技術も技も同じなのでは。
「お前、エーフィだろ? エスパータイプの技に頼るしかねぇだろ」
あぁ……そっちか。
でも、私、何か技とか使えたっけ?



~あとがき~
久しぶりの挿し絵……なのかな。
なんかもう適当になってきてるし、なくてもいいかなって思い始めている私です(笑)

次回、ラグがサファに戦い方伝授するよ!

リアルとシリアはまあ、別種族なので完全に血が繋がっているわけではない。……のは、見ての通りなんですよ。で、なんでそうなったかってのをつらつらと書いてみました。……もう少し考えろって感じですね。ごめんなさい。
ま、結構複雑環境にいる二人なんですね~
それは他の皆もそうなんだけど。

ではでは!

last soul 第16話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~実力と夢~


外はもう夜だろうか。ここにいると、時間経過がわからない。が、今はそんなことを考えている余裕はなかった。そんな私の周りには無造作に武器が散らばっていた。危ないと思うだろうが、全て安全な状態のため気にしなくて大丈夫。
私は手と膝をつき、ようは四つん這いになった状態のまま動けなかった。先輩はどうしているのかわからないが、多分、先輩も放心状態だろう。
武器と格闘し、わかったことがある。
私、運動神経ない!
これだけあれば、少しは出来るものがあると思っていたが、その予想を反し、全てにおいて散々な結果を産み出していた。
例えば、銃………は、先程のあれを先輩に言ってみたら、即却下された。次に剣はよろめいていて危ないと止められ、刀も同様の理由で却下。飛び道具は全くのノーコンで話にならなかった。槍は回せず、回ったと思ったら、手元が狂って、先輩の目の前に飛ばしてしまった。(まあ、先輩は飛んできた槍をかわしていたけど。)鞭にいたっては、自分に絡まる始末。もっと酷いことになっていたが、言いたくないので、省略させていただくけれど。
「私って………私って…」
「あそこまで駄目なものか………練習すればなんとかなるか? いやなんか……そんな次元じゃないよな………これからどうしよう。唯一ましと言えるのは、短剣だったが……接近戦ってのがな」
接近戦……あの有り様で接近戦は……
私と先輩のため息が同時に漏れた。そして先輩は若干の疲れを見せつつ、私に近付いてきた。
「サファ、今日はもう帰れ。色々やって疲れたろ? 武器の件はこっちでちょっと考えてみるから」
「…………すいません。お疲れ様でした…」
「おう。気を付けろよ」
ふらりと立ち上がり、出口へ歩く。先輩はまだ残るのか、周りにある武器を手に取りながら、ぶつぶつと何かを言っているのが聞こえた。
「……はあ………どうしよう…ガチで」
………笑えないけど、笑うしかない。
私、ここでやっていけないかもしれない。

家に帰ってきて、誰かに相談する気力もなくベッドに倒れこんだ。
「いや、確かにあれだよ?……体育の成績、ギリギリだったけど………あそこまで駄目なものなんだろうか。もう少し出来てもいいんじゃ~………って、このままだったらどうしよ」
この前、ノイズさんの約束したばっかりなのに。このまま私が武器を扱えないってなったら、ギルド辞めさせられるのかな。そうなれば、ノイズさんとの約束が……いやまあ、あれだよ? ある意味、こういう仕事はやらない方が身のためなんだろうけれど。いやいや、もう頑張るって決めたのにそれはないよ。うん……どうしよ。
ベッドの上でごろごろしながら考えるものの、いい案が思い付くはずもなく。べたっと広がり、うつ伏せになりながら顔をあげた。
「…………もう寝よう」
考えることも嫌になり、ベッドに潜った。先輩が言っていた通り、疲れていたのかすぐに寝てしまった。

こわい。おかあさん、おとうさん、どこ?
いたい。あつい。わかんないよ。
どこを見ても真っ赤で出口もどこだかわからない。出たくても出られない。
目の前に誰か来た。何かを向けている。それが何か知っている。当たれば死んじゃうんだ。だからといって、逃げようとしなかった。怖くて、逃げられなかった。死ぬと思った。ここできっと、終わりなんだと。
けれど、終わらなかった。
また人が来た。その人がやっつけた。私の前まで来て、手を差しのべた。私とよく遊んでくれる、大好きなお兄さんだった。
「ほら、もう大丈夫。一緒に出よ」
おかあさんは? おとうさんは? どこ?
「きっと大丈夫だから……行こう」
やだ。やだ。おかあさんとおとうさんのとこ、いく。つれてって。
「駄目。俺と一緒に出るんだ」
やだ。おねがい。いかなきゃだめなの。
「駄目なものは駄目なんだ。頼むから、言うこと聞いてくれ」
やだ。おかあさんにあうの。おとうさんにあうの。たすけるの。
「…………ごめん」
無理矢理引っ張られ、抱き抱えられ、私の行きたい方向とは逆へと走り出す。
やだ。やめて。こっちじゃない。あっちにいる。つれてってよ! ひとりはやだよ!
「………ごめん。ごめんな」
お兄さんはずっと謝って私を外へと連れ出した。中とは違って、息苦しくなかった。
「俺、あっち戻る。この子頼んだ」
「おい、やめとけ! お前も怪我してんだろ。死ぬぞ!?」
「大丈夫。死なないよ………それじゃ、よろしく」
お兄さんは私を知らない人に預け、戻っていく。私が手を伸ばしても届かない。
おにいさん、まって。わたしもいく……おかあさんとおとうさんにあいたいよ。
中に戻る直前、お兄さんはこちらを振り向き、いつもの優しい笑顔を見せてくれた。
私が見た、最後の笑顔だった。

「………ねーちゃーん? ねーちゃーん? あーさーだーよー?」
「………………ん。うわあぁぁぁ!! ちかっ! コウくん、ちかっ!!」
「だって、いつも起きてくる時間なのにさ、起きてこないんだもん。何かしてやろーかなーって考えながら起こしたんだぜっ!」
ドヤ顔をしながら、ピースを向けてきた。私は呆れつつも、起こしてくれたことには変わりない。コウくんにお礼を言い、一緒に部屋を出た。
「姉ちゃん、今日はのんびりだったね。いい夢でも見てたのー?」
「へ? んー……夢は見てたと思うけど、どんなのか忘れちゃった」
「そっか。ま、いっか♪ 朝ごはん食べよー」
「うんっ」
うーん……どんな夢だったっけなぁ……思い出せない。つまり、そこまで重要なことじゃないんだな。うんうん。というか、夢に重要性なんてあるものなのかな。
さて、今日こそは私の武器、見つけなきゃ!



~あとがき~
さあって、ほぼ扱えていなかったサファちゃん! これからのギルド生活どうするんでしょうね!

次回、ラグが打開策考えている間に、サファとリアルがもう少し仲良くなります。
リアルの過去を話したいね。

途中にあった、回想(?)はサファの夢なのか、はたまた、誰かの思い出話なのか………それは今後に関わるはずさ。
………お兄さんって誰なんだろうね。
すでに出ているかもしれないし、新キャラさんかもしれない。それはご想像にお任せします~

ではでは!

閲覧総数1000over!

いつの間にか1000越えしてました。あんまり記事ないし、裏ブログみたいなものだから、ほとんど人来ないと思うので、完全にほぼ私だと思うけどな!
でもまあ、めでたいってことで、記念イラスト。
最初はやっぱり、主人公のサファ。
現在、本編では言われっぱなし、何も知らない新人ちゃんですが、これからの成長に期待っ!!
………してて欲しいな←


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相変わらず白黒イラストです(笑)
いつかこんな感じでかっこよくなれるのやら……?
あ、持ってるやつは適当に描いたんで、本当にこうなるかは不明っすね。





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↑おまけ。サファ、記念イラスト出演後。
ラグ「……………ないわ」
紅火「姉ちゃん怖いよ~……」
サファ「えぇぇ!? こういうのってかっこよく見せるものじゃないですか!」
ラグ「履き違えてる気がする……つか、お前には合わん」
紅火「うんうんっ!」
サファ「二人ともひどくないですかね……」

サファにシリアス顔は似合わなかった。
うん……似合わないな。無理だったかな。今度は楽しげなやつを描こう。うん、そうしよう。
サファ「作者さんまで……っていうか、二回も繰り返さないでくださいよ! それに諦めなくったっていいじゃないですか」
ラグ「それくらいなんか違うんだよ。諦めろ」
サファ「うぅ……」


次の記念イラは2000overでラグかな?
あーでも、もしかしたら、5000overになるかもですね。こっちばっかり絵も描けないんですよ……


ではでは、これからもこちらのブログもよろしくお願いします!
閲覧ありがとうございましたー!

last soul 第15話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~一人前になるための一歩を踏み出した……のか?~


「………………あ」
確かにそうか、と納得。先輩は特にリアクションもなしにケーキとカップを手に席に座った。一応、一人分ではあるけれど、食べ終わったら、次ってなるのだろうか。
「けど、悠長なことも言ってられない。お前に合う武器、探さないとな」
「やっぱり、そうですよね。どんなのがいいんだろう」
「それは人それぞれだと思います。いくつか試してみないと……」
「リアルくんは刀だよね? いつも持ってるし」
「いつもって訳じゃないですけど……まあ、そうです。俺のメインは刀です。サブは銃とか小太刀ですけど」
小太刀ってなんだろ。
「簡単に言うと、小さい刀みたいなもん。そんくらいわかれ、馬鹿」
あうぅ……
先輩に突っ込まれ、ちょっとへこんでいると、ノイズさんが笑いを押さえきれずに漏れていた。リアルくんも少し困り顔で笑っていた。
私、そんなに面白いことしてる?
「ふふっ……えっと、俺っちは一応、銃剣。サファに聞かれる前に言っておくと、銃の先にナイフがついてるのが一般的に銃剣って言われているやつね。俺っちが使ってるのはちょっと違うけど……」
はえ~……特殊な武器だなぁ……
ここまで聞くと、先輩や他の人のが気になる。
「紅火さんは剣と銃の併用ですね。シリアは鞭。二人ともサブは使ってません」
「ロスはメインは長刀でサブは銃と短剣。紅珠はメインは銃。サブは大剣だっけか? サブのスケールでかいけど」
「俺はメインとか決めてない。時と場合による」
先輩だけオールマイティなんですが……
私が驚いていると、リアルくんが付け足してくれた。
「ラグ兄はなんでも出来ちゃうんです。でも、基本的に狙撃手ですよ。スナイパーってやつです」
「こいつの二つ名、『疾風の銃士』だからな♪」
なんですかそれ! なんかカッコいい!
言われた本人はロールケーキおかわりに行っていて、聞いていなかった。分けようって考えはないらしい。
そんな先輩はおいといて、リアルくんが先輩のことについて教えてくれていた。
「二つ名を聞くと、遠距離型のように思いますけど、ラグ兄が得意なのは接近戦なんですよ」
「? 狙撃手なのに? 狙撃ってことは、遠くから狙う人のことじゃ……」
「そうですよ。でもそれは、腕を買われていたからであって、得意ってことでもないらしいです」
「んでも、あいつの場合、千メータ級の狙撃も難なくこなすよ。これで得意でもないって言われるのって嫌味だよな~」
千メータ……千メートルってことだよな。ってことは、一キロ? 一キロ離れている敵を撃てるってこと? ヤバッ!
「だよね~? ま、手練れだとそれくらい普通らしいけど、それでも一握りだと思うよ。現にここのギルドでそんなこと出来るの、ラグだけだよ」
「ですね。俺も頑張らなきゃです」
私にはきっと無理。遠い敵をやっつけるの無理。恐らく、かなりの集中力が必要だろう。私にそんな集中力はあいにくだが、存在しない。
「私に合う武器って一体……」
私の呟きにおかわりから帰ってきた先輩が反応した。
「試していかないとわかんねぇよ、それ。……時間あるし、今日試してみる?」
「………………えっ」
「お、いいんじゃない? せっかくだし、色々やってみたら?」
ノイズさんが笑いながら勧めてきた。何も言ってこないけれど、リアルくんも黙ってうなずいている。
まあ、いつかはやらなきゃいけないし、いつやっても同じか。よし、やろう。
「はい。よろしくお願いします、先輩っ!」
「………おう。じゃあ、今から行くか」
先輩はヒョイッと残っていたロールケーキを掴み、口に放り込んだ。そしてそのまま、部屋を出ていこうと、扉の方へと歩いていく。そして、その後を追っていく、私。
どこ行くんだろ。
「ギルドの外になるんだけど、修行場ってのがある。ようは闘技場だな。そこを使う」
「へえ……そんなところが。そこって他の人は使うんですか?」
「使うよ。けど、許可証が出てない限り、俺らの貸し切り状態」
「今日はその許可証が出ていないんですか?」
「そう。ま、今日は元々俺が使おうかなって思ってたから、取られる前に借りてた」
なるほど。
そしてギルドの外に出てきて、すぐ横に体育館のような建物がある。広さはなかなかあるが、道具等が見当たらない。学校だったら、倉庫があるけれど、ここにはない。まあ、ここで体育するわけじゃないから、当たり前と言えば当たり前か。
先輩は、自分の肩がけバッグを漁って次々と武器を出していた。銃、剣、飛び道具、鞭……それぞれ何種類も出てきた。…………って、多っ! 先輩のバッグは四次元ポケットなの!?
「ん、刀類と槍類がねぇか。……取ってこよ。ちょっと待ってろ」
あ、はい。
なんか銃、と言っても色々種類があるんだな。他のもそうだけれど、なにが違うんだろう。
「触ってもいいけど、怪我しても知らんからな」
………はい、触りません。
先輩が修行場を出ていき、私一人残された。目の前には先輩が出していた武器の数々が並べられている。なんか危なさそうなやつをちょっと触って………いや、怖いな。
「でも、あれだな……私が扱うんだよね。出来るのかなぁ……自信ないよ」
まあ、こんなのに最初から自信ある人なんて早々いないんだろうけれど。
私はなんとなく、近くにあった銃を手に取る。先輩のことだから、安全装置的なものはしっかりしてあるだろう。しかし、その安全装置を外し、引き金を引けば……きっと弾が出る。その弾が出て、人に当たれば簡単に殺せるはずだ。
ずっしりと重い銃を両手でしっかりと支え、観察していく。持っているだけで緊張しているのか、ドキドキと心臓が脈を打つ。ここまで鳴らなくてもいいのに、と思うくらい速く鼓動していた。
……駄目だ。これ以上は持っていられない。
持っていた銃をあった場所に戻し、胸に手を当てる。当てただけでわかるくらい、ドキドキしている。そして、それにあわせて呼吸も浅くなっていた。
「……はあ…はあ………」
なぜだろう。持っているだけなのにああなるものだろうか。……私ってそこまで繊細なのだろうか。それはそれで嬉しいことではあるが、なにがともあれ、私には銃は向いていない、ということだな。
「ただいま。………? どうした?」
「あっ………いえ! なんでもないですっ」
帰ってきた先輩が首をかしげながら聞いてきた。手ぶらで帰ってきたということは、またバッグの中から出てくるのだろう。そんな先輩にとりあえず、否定した。
いや、なんでもあったんだが、言う必要はないだろうか。いや、言ったところで、試さないとわかんないだろ、とか言ってきそう。
「……………」
「先輩?」
「いや、なんでもない。…………始めるか」
おお……このギルドに入って一週間ちょっとで武器を探すことになるとは。
というか、武器以前に私、戦えるのかな……? ま、なんとかなるか!



~あとがき~
ケーキ食べたの、ラグだけじゃん! まあ、元々ラグあてにあったものですけど……

次回、サファの実力はいかに! って感じかな?
いや、わからないけどさ。

ラグの二つ名……いわゆる、通り名ってやつですが、『疾風の銃士』と書いて『しっぷうのガンナー』って読みます。ガンナーとしても優秀だけど、風のようにしなやかに敵を倒していくからって理由。
他のメンバーにもついてますが、それはまた機会があれば、ということで!

今回、皆のメイン、サブ武器を紹介してみました。ラグ以外、きちんと相棒を決めてるんですよ。いや、ラグにも各種の相棒がいるけどさ。
そして、ノイズさんが言っていた銃剣。本当にあるんですけど、ノイズさんが持っているのは、もう少しファンタジー系ですわ。銃として殺傷能力が低いのかもしれない。ま、使う機会ないからいいか。

銃って持つと緊張するもんなのかなーと思いますが、サファは異常に反応してますね。その理由も本編で語りますよ! 多分っ!

ではでは!

last soul 第14話

《この物語には死ネタ、暴力表現等の描写があります。閲覧する際はご注意ください》





~用事と事実~


サファと別れ、街を一人で歩いていた。仕事のときと格好が違うものの、ギルドで見知った人には普通にバレバレのようで、ちょいちょい挨拶されていた。
ラグは、面倒だなと思いつつ、かといって、関係を壊すのも本心ではないため、軽く返答しつつ目的地を目指す。幸いにもそこまで知り合いに会うこともなく、辿り着くことが出来た。
「ふぅ…………ルピナ、いるだろ?」
「あ、ラグくん。こんにちは~♪ なんか久し振りだね。んと、今日は何をお探しですか?」
ルピナ、と呼ばれたツタージャは頭に花飾りを着け、両腕には花束が抱かれていた。優しそうに微笑みかけるルピナに対し、ふいっと目線を外す。そして、不機嫌そうに皮肉を込め、敬語で話を続けた。
「分かってて聞いてますよね、ルピナさん?」
「うふふっ♪ 分かる? じゃあ、少々お待ちくださいね。お客様♪」
「意地悪だな、ほんと」
「ラグくんほどじゃないもん。どうせ、先輩さん達をいじめてるんでしょー? 駄目だよ、そんなことしちゃ」
「なっ!……いや、最近はしてないし」
「またまた~♪ あ、そこ座ってていいよ」
ルピナに勧められ、ラグは近くにあった椅子に座った。その様子を見て、ルピナはクスリと小さく笑った。聞こえていないだろうと思ったが、ラグと目があったため、聞こえていたか、と舌を出した。
「そんなことより、お前は仕事しろっての」
「えー? してるよ。私、お花屋さんだもん」
「そういうことじゃ……あぁ、もういい」
「ふふ♪ やっぱり、私には勝てないみたいだねっ」
「お前と性格が合わないだけ。それに勝とうとか思ってない」
「強がってる♪」
「ねぇよ! ほら、土産欲しいなら、しっかりと役目果たしてもらおうか」
先程、店で買ったケーキが入った箱をちらつかせる。ルピナは過剰に反応を見せ、作っていた花束そっちのけで、ラグに近づいた。
「ラグくぅん! それ!! くれるの!?」
「欲しかったらそれなりの対価があるんじゃない?」
「大丈夫! いつも以上の花束を作るよっ♪ お姉さんのためのでしょ? それなら、私も力を入れちゃうよ」
「………分かってんじゃん」
ニヤリと笑って見せ、再びルピナから視線を外す。ケーキを見せられたためか、ルピナは鼻歌を歌いながら花束作りを再開した。そんなルピナに苦笑を漏らすものの、それくらい嬉しいものなのは、ラグ自身もわかっていた。
「……よし、完成っ! ラグくん、どうぞ♪」
ラグはルピナから手渡された花束を見た。白とピンクの二色で可愛らしく作られた花束に仕上がっている。そして、花束と同時に渡された白い封筒を見て、少し瞳に影が落ちた。
「あ、それは別件」
「………あぁ」
「今回のは……ラグくんが望むものだと思うよ」
「なるほど。それで、今回は誰か来んの?」
「うん。ヘラ様がね」
「ふうん……ついにあの人が動いたか。けど、そこまでの奴か? 俺一人でもどうにでもしてやるけど」
「きっと動くのはラグくんだけだと思う。あの方はあくまで策士よ。本気で動くことはない」
ルピナはにこりと笑う。それを見てラグはふるふると首を振り、気持ちを切り替えた。
「…………それもそうだな。んじゃあ、そろそろ行く。ほれ、例のやつ」
「わーいっ! ケーキだー♪ ラグくん、また遊びに来てね~」
「用がない限り来ねぇよ」
「むっ……意地悪。けど、それがラグくんなんだよな。仕方ないか」
「よくご存知で。……邪魔したな」
ひらりと軽く手を上げ、ルピナの店を後にした。そして、次なる目的地へと向かった。

しばらく歩いてやって来たのは、町外れにある野原。人の気配もなく、ここだけぽっかりと別世界のように感じた。ラグは立ち止まって周囲を見るが、すぐに歩みを再開させる。
「……久し振りだな。ここ」
花束を片手にルピナから受け取った封筒を弄びながら、小さく呟いた。
そして、野原を抜け、崖の上に出る。ふわりと優しい風が吹き抜けていった。そこから見える風景は近代的な街などは見えず、植物の緑と空の青が幻想的な風景を生み出していた。
ラグは、崖の先にある墓石の前にしゃがみ、花束を置いた。しばらくそのまま黙っていたが、その場に座り語りかけていく。
「……最近来れなくてごめんなさい。ちょっと立て込んでたというか、忙しくてさ。けど、俺は元気だから。もちろん、他の皆も」
そこまで言うと、ラグは立ち上がり優しく微笑んだ。
「だから、心配しなくていい。……あと、もう少し待ってて。きっと俺が終わらせてみせるから………それじゃ、また来ます」
軽く頭を下げ、来た道を戻っていった。そしてギルドに向かうため、足を進めた。

ノイズさんと一緒にまたいつもの部屋に戻ってきた。部屋に戻ると、リアルくんが椅子に座り、本を読んでいるのを見つける。仕事から帰ってきたのだろうか。
「リアルくんっ!」
「……………あ、サファさん。ども……ノイズ兄も」
「おう。仕事終わったのか?」
「はい。まあ………一応。今日のは普通の依頼だったので」
ここで言う、普通とはどちらを指すんだろう。
私が首をかしげていたからか、リアルくんが気付いて説明してくれた。
「普通のって、そのままの意味で……表の仕事のことです。サファさんは見ましたか? ここの掲示板」
「それなら、少しだけ見たよ。色々あったのを覚えているけれど、詳しくは見てないな」
「見てくれたならわかると思います。そこに載っている依頼のことです」
何があったっけ……? 人探しとか、届け物とかだっけ。あ、護衛とかもあったかな。
「はい。それであってます」
リアルくんはにこりと笑い、肯定してくれた。先輩とのギャップがあって、なぜかこちらの方が嬉しく感じる……リアルくん、優しい。
「んー……私、裏の組織だから、普通って暗い方の方だとばっかり思っていたけれど、違うんだね」
「そんなのばかりやってたら、病んじゃいます。少なくとも俺はそんなのごめんです」
「そりゃ、そうだよな。誰だっていい気はしないと思うよ。俺っちもやだし。それに日常化してしまったら、取り返しのつかないことになるからな」
取り返しのつかないこと……?
「殺すという行為が日常化してしまったら、戸惑いがなくなる。そりゃ、仕事だし、戸惑いはない方がいいけれど、本当の意味でなくしちゃいけないものなんだ」
ノイズさんの真剣な顔に大変なことを聞いた、という実感が湧いてきた。リアルくんも少しだけ真剣な目付きで、私を見る。
「もし、殺すことに快感を覚えてしまったら? そのことが日常化して、セーブをかけられなくなり、人の血を欲するようになる。……そうやって壊れてく人もいるんです」
「言いたくないけど、この道長いから、そういう奴ら死ぬほど見てきた。壊れた奴らの末路も知ってるつもりだ。サファも覚えときなよ~…………って、サファ? 大丈夫??」
ノイズさんに覗きこまれ、ハッと顔を上げた。二人が先程と違い、心配そうな顔をしていた。心配させるような顔をしていたのか。ヤバイヤバイ……
「あっ…………はい。なんか怖い話だなって」
「ごっ…ごめんなさい! 怖がらせるつもりは全然なかったんです」
「ううんっ! きっと近いうちに知らされていたよ。大丈夫」
先輩から色々聞いてはいたけれど、それはほんの一部に過ぎない。今、ノイズさんやリアルくんが言っていることも事実。けれど、これもきっと一部に過ぎなくて。他にも知らなきゃいけないことは多いはず。
少しずつでもいいから、知っていかないといけないんだな……
「ま、今のサファじゃ心配しなくてもいいか」
「え? 何でですか?」
ノイズさんの言った言葉の意味を理解したのか、リアルくんもくすりと小さく笑った。
「確かにそうかもしれません」
「えっ? えっ? 何の話?」
「だって、今のサファ……なあ?」
「ですね。今のサファさんなら………です」
何の話だろう……全くわからない。
考えていると、ガチャ、と扉の開く音が響く。そこから、欠伸をしながら先輩が入ってきた。先程、外で見た格好とは違い、いつもギルドで見ている格好になっていた。ここに来る前に家に寄ったのだろうか。
「ラグ兄、こんにちは」
「ちはっす。三人揃って何してんだか……暑苦しい」
「どこがだよ。三人集まって話してただけだろ? もしかして、自分だけ入れなかったことを悔やんでんの?」
「ちょっとノイズさんの言っていることがわからないっすね。誰が何だって?」
「………もういいです。ごめんなさい」
ノイズさん、折れるの早い……
あ、そうだ。先輩に今の話を聞いてもらおうかな。心配しなくてもどうのってやつ。
直で冷蔵庫に向かって、ロールケーキを取り出している先輩に今の話を簡潔に……というか、私なりに伝えた。先輩は準備する手を休めることなく、更に無表情で答えを放ってきた。
「そりゃお前……殺す手段持ってねぇじゃん。心配も何もないだろ」



~あとがき~
今回は色々詰めこんでいますね~……大変だ。
新キャラもちょいちょい出てきてますね。

次回、ケーキ食べながら、武器について色々考えます。
プロフに書いてあるけどね(笑)

ラグが受け取った封筒については、近いうちに明らかになると思いますよ~♪ あと、誰のお墓なのかも。
ルピナがお姉さんって言っていた人なので、女の子には違いない……はずだ。オネェとか特殊じゃない限り。
んーと、いわれる前に言っておこう! ルピナとラグはできてないよ! 二人のお相手は別々にいるはずさ……きっと。

別に二人はサファのことをいじめているわけではないです。脅しているわけでもない。が、そういう世界なんだよって言っているだけなんです。だから、責めないでね!

ではでは!